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第4章
181.久しぶり
休み前にナタリーに相談しているということは、そこそこ精神的に来ていることは確かだ。
しかし、それだけではまだ精神的に距離のあるヴァリタスに相談するまでには至っていない。
「ちょっと刺激が足りないのかもね」
彼女はなんといっても恋愛小説愛好家。
おそらく彼女たちのいじめの内容が、悪役令嬢を模したものだということなどとっくに気づいているだろう。
それならば、もう少し彼女が心を痛める衝撃的ないじめをしなければ彼に相談などしないのではないだろうか。
もう少し。
もう少し、彼女の心を追い詰めてしまうような、そんな刺激的で決定的ないじめをしなければ。
教室の入り口に佇み中の様子をぼんやりと眺める。
まだ誰も来ていない教室は、しんと静まりかえっている。
休み明けというのもあってか、教室は隅々まで掃除され使用した形跡まで跡形もないほど綺麗だった。
ずっと誰も訪れたことのない場所のように。
この静けさも相まってか、まるで初めて入る教室のような感じがした。
いつもの席に座り、ぼうっと視線の先を眺めながら先ほどの続きを考える。
いくら計画が変わっても、彼女を虐めることになっても私は彼女たちとは今までと同じように接しなければならない。
たとえ表面上の付き合いになってしまっても。
この計画を完成させれば、晴れて私は自由の身だ。
そのために、彼女たちと縁を切る算段まで考慮して考えた。
それなら、できるだけ悪女を演じるのが良いだろう。
今までは、どうしても誰かを傷つけることに躊躇っていたが、もう、そうもいってられない。
縁を切るというのは、それ相応の理由が必要だ。
相手を想う気持ちがあっては、どこまでも細くなっても繋がったままになってしまう。
だから、その人と二度と顔を合わせたくないと思うほどの強烈な理由が必要なのだ。
いじめとは、それほどの理由になる。
つまり、彼女をいじめれば婚約破棄もできるし、他の人と縁を切るのにも利用できる、私にとっては非常に有力な手なのだ。
なら、この計画を躊躇う理由などない。
たとえ人を傷つけることに痛みを覚えたとしても、それは私の心の問題だ。
そんなことに、躊躇する時期は当の昔に過ぎてしまった。
それに、私よりも傷つくのは彼女たちのはずなのだ。
私が傷つく理由など、どこにもない。
「おはよう、エスティ。ずいぶんと早くきたのね」
「ナタリー……」
考えがまとまったところで、丁度よくナタリーが登校してきた。
まだ人がそこまで来ているわけではないし、彼女も十分早い登校だろう。
約一カ月ぶりに見る、彼女の顔がどこか懐かしく思えてならない。
「ごめんなさいね。休み中に2人でどこか遊びに行きたかったのだけど」
「いいのよ。お父様が許すはずもないもの」
ナタリーからは、何度か手紙をもらっていた。
その中には、遊びの誘いもあったものの父が許してくれることはなかった。
あろうことか、屋敷に招くことも禁止されてしまい、結局誰にも会う事はできなかった。
もしかしたら、旅先の魔物の事で怒っていたのかもしれない。
それに加え、宮殿を1人で出歩いたのもいけなかったのだろう。
「ねぇ、前々から思っていたのだけど、ベルフェリト卿って貴方に厳しずぎやしない?」
あれ?
お父様が私の事を嫌いなの、彼女に言っていなかったかしら?
「前世が田舎の娘なんですもの。外でボロを出すのではないかと心配で、私を外に出したくなのだと思うわ」
「……。でも、前世が田舎娘なんて私も同じじゃない。それに、外でボロを出すのが怖くて外出させないのは分かるけど、屋敷に呼ぶぐらいなら普通許さない?」
痛いところを突いてくるわね。
お父様が公爵家でありながら我が娘を他人に会わせたくないという非常識な行動を起こしている点について、理由付けをするとなれば前世が田舎娘だという嘘が一番打倒なものである。
しかし、それは彼女も同じ。
というより、彼女は嘘ではなく本当に田舎娘なのだ。
それなら、お父様が懸念する事態になるはずがないと考えるのは当然のこと。
「そうね、どうしてかしら。私もお父様の考えていることの全てを知っているわけではないから」
何とか誤魔化してみるものの、これもいつまでもつかわからない。
最近、なんだか彼女の瞳から疑いの色が見えるときがあるのよね。
今もそう。
私の言った言葉をあまり信じていないような瞳をしている。
「ねぇ、エスティ。貴方の前世について、少し話をしたいことがあるのだけど……」
やはり、もうそろそろ限界かもしれない。
ただでさえ、17になってもほとんど思い出せないなんていう無理のある設定なのだ。
彼女が私の前世に疑いを持つのは当然のこと。
逆に今まで誤魔化してこれた事の方が、おかしなことだったのかもしれない。
「それは――――」
「おはようございます! エスティ様、ナタリー様!」
私が口を開いた瞬間だった。
いつの間にか隣に立っていた彼女が明るい声を響かせる。
「おはよう、セイラ様。久しぶりね、元気みたいで安心したわ」
「はい、ナタリー様!」
なんだか上機嫌な彼女の明るい笑顔に、ナタリーも真剣な眼差しをすこし緩め困ったように笑っている。
相変わらず彼女の笑顔は可愛らしく、人を明るくするような力があった。
しかし、それだけではまだ精神的に距離のあるヴァリタスに相談するまでには至っていない。
「ちょっと刺激が足りないのかもね」
彼女はなんといっても恋愛小説愛好家。
おそらく彼女たちのいじめの内容が、悪役令嬢を模したものだということなどとっくに気づいているだろう。
それならば、もう少し彼女が心を痛める衝撃的ないじめをしなければ彼に相談などしないのではないだろうか。
もう少し。
もう少し、彼女の心を追い詰めてしまうような、そんな刺激的で決定的ないじめをしなければ。
教室の入り口に佇み中の様子をぼんやりと眺める。
まだ誰も来ていない教室は、しんと静まりかえっている。
休み明けというのもあってか、教室は隅々まで掃除され使用した形跡まで跡形もないほど綺麗だった。
ずっと誰も訪れたことのない場所のように。
この静けさも相まってか、まるで初めて入る教室のような感じがした。
いつもの席に座り、ぼうっと視線の先を眺めながら先ほどの続きを考える。
いくら計画が変わっても、彼女を虐めることになっても私は彼女たちとは今までと同じように接しなければならない。
たとえ表面上の付き合いになってしまっても。
この計画を完成させれば、晴れて私は自由の身だ。
そのために、彼女たちと縁を切る算段まで考慮して考えた。
それなら、できるだけ悪女を演じるのが良いだろう。
今までは、どうしても誰かを傷つけることに躊躇っていたが、もう、そうもいってられない。
縁を切るというのは、それ相応の理由が必要だ。
相手を想う気持ちがあっては、どこまでも細くなっても繋がったままになってしまう。
だから、その人と二度と顔を合わせたくないと思うほどの強烈な理由が必要なのだ。
いじめとは、それほどの理由になる。
つまり、彼女をいじめれば婚約破棄もできるし、他の人と縁を切るのにも利用できる、私にとっては非常に有力な手なのだ。
なら、この計画を躊躇う理由などない。
たとえ人を傷つけることに痛みを覚えたとしても、それは私の心の問題だ。
そんなことに、躊躇する時期は当の昔に過ぎてしまった。
それに、私よりも傷つくのは彼女たちのはずなのだ。
私が傷つく理由など、どこにもない。
「おはよう、エスティ。ずいぶんと早くきたのね」
「ナタリー……」
考えがまとまったところで、丁度よくナタリーが登校してきた。
まだ人がそこまで来ているわけではないし、彼女も十分早い登校だろう。
約一カ月ぶりに見る、彼女の顔がどこか懐かしく思えてならない。
「ごめんなさいね。休み中に2人でどこか遊びに行きたかったのだけど」
「いいのよ。お父様が許すはずもないもの」
ナタリーからは、何度か手紙をもらっていた。
その中には、遊びの誘いもあったものの父が許してくれることはなかった。
あろうことか、屋敷に招くことも禁止されてしまい、結局誰にも会う事はできなかった。
もしかしたら、旅先の魔物の事で怒っていたのかもしれない。
それに加え、宮殿を1人で出歩いたのもいけなかったのだろう。
「ねぇ、前々から思っていたのだけど、ベルフェリト卿って貴方に厳しずぎやしない?」
あれ?
お父様が私の事を嫌いなの、彼女に言っていなかったかしら?
「前世が田舎の娘なんですもの。外でボロを出すのではないかと心配で、私を外に出したくなのだと思うわ」
「……。でも、前世が田舎娘なんて私も同じじゃない。それに、外でボロを出すのが怖くて外出させないのは分かるけど、屋敷に呼ぶぐらいなら普通許さない?」
痛いところを突いてくるわね。
お父様が公爵家でありながら我が娘を他人に会わせたくないという非常識な行動を起こしている点について、理由付けをするとなれば前世が田舎娘だという嘘が一番打倒なものである。
しかし、それは彼女も同じ。
というより、彼女は嘘ではなく本当に田舎娘なのだ。
それなら、お父様が懸念する事態になるはずがないと考えるのは当然のこと。
「そうね、どうしてかしら。私もお父様の考えていることの全てを知っているわけではないから」
何とか誤魔化してみるものの、これもいつまでもつかわからない。
最近、なんだか彼女の瞳から疑いの色が見えるときがあるのよね。
今もそう。
私の言った言葉をあまり信じていないような瞳をしている。
「ねぇ、エスティ。貴方の前世について、少し話をしたいことがあるのだけど……」
やはり、もうそろそろ限界かもしれない。
ただでさえ、17になってもほとんど思い出せないなんていう無理のある設定なのだ。
彼女が私の前世に疑いを持つのは当然のこと。
逆に今まで誤魔化してこれた事の方が、おかしなことだったのかもしれない。
「それは――――」
「おはようございます! エスティ様、ナタリー様!」
私が口を開いた瞬間だった。
いつの間にか隣に立っていた彼女が明るい声を響かせる。
「おはよう、セイラ様。久しぶりね、元気みたいで安心したわ」
「はい、ナタリー様!」
なんだか上機嫌な彼女の明るい笑顔に、ナタリーも真剣な眼差しをすこし緩め困ったように笑っている。
相変わらず彼女の笑顔は可愛らしく、人を明るくするような力があった。
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