悪逆皇帝は来世で幸せになります!

CazuSa

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第5章

225.特別な客人

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 でも私に反論する権利などない。

「わ、わかりましたわ。お知らせくださり、ありがとうございます」
「ええ」

何とか作り笑顔を浮かべるものの、顔が引きつってしまって仕方ない。
もう嫌だわ。
早く婚約破棄したい。

「それではこれで」
「はい。それでは殿下、ごきげんよう」

私の言葉にも無視をして、背を向けて去っていく彼を手を振って笑顔で見送った。
いつもはこんなことしない。
おそらく以前までの彼であればこの見送りに笑顔で返していただろう。

いや、そもそも私に見送りなんてさせなかった。

彼の姿が見えなくなったところでため息を吐く。

結局私の方を一回も見なかったな。

今の彼は、もう優しかったころの彼ではない。
それが彼がどれほど私を見限っているのかを見せつけられているようだった。

別にいいけどね、そんな事。

ああ、でもちょっと安心したわ。
何とかトラブルもなく会話が終わって良かった。

胸を撫でおろし、緊張が一気に解ける。

もしかしたら前世の事を聞き出されるのではないかと危惧していた私は、それだけで安堵してしまう。
少しの寂しさはあるものの、いずれ慣れるだろうし今はこの感傷に浸っているのも悪くないかもしれない。

って、いけない!
今何時だろう。

確認するものがここには何もない。
でも休み時間に入ってから、結構時間が経っているのではないだろうか。

今日は図書館に寄らずに真っ直ぐ時計塔に向かわなくちゃ。
何とか走って時計塔に着いたものの、あまり昼食を取ることもできなかった。
その日の夜ミリアに鋭い視線と嫌味を言われる羽目になった。


    ***


 土曜日は清々しいほどの晴天。
なんてお出かけ日和なんでしょう。

私の心は大荒れだけどね。

今日会う相手が誰なのか、どういった人なのかもわからないのに王宮に行かなければならないなんて最悪だ。
どう割り切っても憂鬱な気分が晴れるわけがない。

そもそも国賓級の客様が来るのに、碌な準備もできていない時点で胃がキリキリする。
一応有りものでどうにかできただけでも褒めて欲しいくらいだ。

普通の令嬢だったら絶対用意できないわよ。

王宮に着くとどこか忙しない雰囲気に違和感を覚える。
やっぱり結構大物が来ているようだ。

王宮がお忍びで来る人物を迎えるぐらいだから、多少構えてはいたけれど。いつも落ち着きはらっている王宮の使用人がどこかそわそわしているところを見ると、向かえている人物が只者ではないのは確かだろう。

さらに憂鬱になりつつ、王宮の使用人に連れられ応接室へと案内される。

しばらく経って、お茶をしながら待っていた私を初老の執事が迎えにきた。
彼に導かれるまま応接室を出て付いて行く。

しかし、歩いている間ちょこちょこ見えるこの白装束の人たちは一体……。

あれ?
もしかして、今日の主賓って。

少し嫌な予感を感じつつ、先導する使用人に付いて行った。

連れられたのは王宮内で最上級の応接間。

そこには現国王一家と先代国王夫婦、そしてベリエル殿下の婚約者であるフィーネ嬢がすでに席について談笑していた。

現在、来年に向けた結婚式に向けて花嫁修業を行っているフィーネ嬢は、すでに王宮で寝泊まりしている。
そのため、早く来ているのはわかるのだが。

もしかして、私が最後なんじゃないの?

そう思うとさらに胃がキリキリした。
どうして私を最後に通したのよ。
これじゃあまるで私がこの場で一番偉いみたいじゃない。

すごく申し訳なくなってそそくさと移動すると、横一列に並んで座っている彼らの一番下座に座る。

フィーネ嬢は婚約式を行った後だからベリエル殿下の隣に座っているけれど、私はまだ婚約式もしていない。
それにいつ婚約破棄されるかわからない状況で、ヴァリタスの隣に座る勇気など持てなかった。

近くに座るシャルロット殿下に嫌味な笑顔を向けられ、少しカチンときたけど我慢して無視をする。

「全員揃ったようですね」

一番奥の上座に座っている国王陛下が告げる言葉で私が一番最後だったことを知る。
どうやら国王陛下のその言葉が合図をだったようで、傍に仕えていた宰相が執事を呼び出し耳打ちする。

耳打ちされた彼はすぐさま応接間を出て行った。

「さて、主賓の方が来るまでもうしばらく待ちましょうか」

周りの人達の服装を見て少し後悔した。
誰も真っ白な衣装なのだ。
それに装飾が少なく、シンプルなもので統一されている。

私も薄い水色のドレスを着てきてはいるが、やはり白ではないことですでにその場には不適切な印象を受けるが、それに加えそこそこ装飾もされているしフリルだって付いている。

どう見たって場違いな恰好なのは間違いない。

「ベルフェリト様ったら、どうしてそんなドレスでいらしたの? 今日のお客様の事を考えればそんな恰好で来ることなんて信じられませんのに」

どこからか飛んできた言葉に、思いきり声のした方へ顔を向ける。
案の定、嬉しそうな笑顔でこちらに嫌味を飛ばすシャルロットがそこにいた。

「申し訳ありません、シャルロット殿下。私のミスでございます」
「あら嫌だわ。謝ってほしいなんて思っていなかったのだけど」

絶対本心は違うだろうと思うような笑顔を向けられ、イラっとした。
けれど彼女のような幼稚な人間に関わっているほど私とて暇ではない。

無視をしてそっぽを向くが、シャルロットはそんな私にお構いなしに話を続けた。
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