転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ちゃんこ

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1章 幼少期編 I

47.醤油仕込み

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ジャガ料理が落ち着いて余裕ができたと思ったのに……
増築要因がたんと増えたおかげで、チギラ料理人は賄い作りでてんてこ舞いになってしまった。

とても手が回らないので、パンだけはランド職人長が街で購入してくるのだが、大食いしそうな男たちの腹を満たすには……と腕を組んで考えていたチギラ料理人に、私はそっとアドバイスをした。

「大皿に料理を盛って、自分で取るようにすると、楽ですよ」

バイキング方式である。
前世の夢のような食事スタイルである。大好きだった。人の3倍は食べた記憶がある。

取り皿はパンだ! 具は勝手に乗せろ! 飲み物はポットから勝手に注げ!
まぁ、それでも忙しそうだったけど。

私と付添人も、食堂にてご相伴にあずからせていただいております。
代わりと言っては何ですが、丸かじりできる果物を城からくすねてまいりました。
どうぞ、ご賞味くださいませ。



☆…☆…☆…☆…☆



増築の一方、片手間に建てられた醤油小屋が完成した。

醤油造りの長い道のりが始まります。
チギラ料理人よろしいですか? 忙しくても待ちませんよ。

まずは一番重要な「麹菌」から着手します。

醤油造りに使われる麹菌とは、稲穂に付いている黒い粒カビのことを言います。

……………………………………………………
麹菌の増やし方
①玄米を水につけて吸水させ、蒸します。
②70度くらいに冷めたら草木灰を混ぜる。
③35度くらいになったら麹菌を混ぜ、布でくるんで保温する。
④発酵が進むと熱を持ち始めるので、定期的にかき混ぜて放熱します。
(内容物:40度以下に保つ)
⑤1週間ほどで麹菌は緑色の胞子を出すようになります。こうやって麹菌が増えてゆくのです。
⑥微妙に乾燥させてカビ玉を作って完成です。
……………………………………………………

しかし、この野生菌カビはアフラトキシンという『毒物を作り出す種フラバス』があるのを忘れてはいけません。

①『毒を作らない種オリゼー』を地道に探す?
②薬草課で改良してもらう?
③シブメンに鑑定してもらう?

「……③で、薬草課で増やしてもらおう」

シブメンには個人的に即OKをもらえた。
だが、薬草課がカビを増やすなんてこと、請け負ってくれるだろうか。
シブメン個人はよくても、王国魔導士長としては……う~ん、こういう時はアルベール兄さまに泣きつこう。

「アルベール兄さま! おねがいします。薬草課にさし入れを作りますので、カビのばいようを依頼してくださいませ。あ~ん、そこをなんとか、なんとか~」

足にしがみついて懇願した。
私の得意技だ。
そして粘り勝ちした。
何とかなった……ふぅ。

…………………………………………………
麹菌の増やし方〈テイク2〉
①薬草課で培養して増やしてもらう。終了。
…………………………………………………

よかったですね、チギラ料理人。あなたの仕事が減りましたよ。
さぁ、今のうちに作り置きを仕込むのです! 薬草課の差し入れも忘れずにね。


………そして


厨房の増築も終わりそうな頃、忘れていたカビちゃんがやってきた。
粉末状の立派な姿で……気が利きすぎる薬草課でありました。これは更なる差入れを考えねばいけませんね。

………………………………………………
醤油の作り方
★煮沸消毒した布と容器を準備しておく。
【大豆】
①大豆をよく洗い、水に1日漬ける。
②漬けておいた水ごと煮る(指で摘まんで潰れるくらいまで)
③網にあけて水気を切りつつ冷ます。
【小麦】
①小麦をふっくらしてくるまで炒る。
②ミキサーで3割砕く。
③砕いた小麦に麹菌をまんべんなく混ぜる。
【発酵】
①大豆と小麦を混ぜたものを布で包み、容器に入れる。
(内容物:30度以下 室温:30度を維持)
②6時間ほどすると発酵が進み熱を持ち始めるので、保温から放熱に切り替える。
(内容物:30度以下 室温:32度を維持)
③18時間後、かき混ぜて酸素を麹に取り込みます。
(内容物:28~30度 室温:32度を維持)
④平容器に小分けにして、2cmほどの厚さに広げる。
(ここからは28度を維持する)
⑤21時間後、かき混ぜて酸素を麹に取り込みます。
(ここからは26度を維持する)
⑥16時間後、容器に移し替え、塩水を混ぜる。
⑦なるべく空気に触れないように密封し、冷所で保管。
(~3週間)
⑧3ヶ月おきに、かき混ぜて酸素を取り込み、再び密封。
(~1年)
⑨漉す。湯煎して殺菌。完成。
………………………………………………

…………以上。
異世界で醤油に飢えないように覚えた……無理です。半分以上覚えていない怪しい記憶です。
がんばれチギラ料理人! 造るのは君だ! すべては君の根気にかかっている!



一度シブメンに、発酵を促進する魔法はないのかと尋ねたら『禁忌とされています』とキッパリと言われた。
……確かに、悪用されたら恐ろしいことになりそう。
後に、腐敗する大豆を見た私とチギラ料理人は、納得しすぎるくらい納得したのだった。臭すぎた。



醤油が出来るのが早いか。

ヒロインが来るのが早いか。

乞うご期待!

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