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1章 幼少期編 I
51.商1(Side ミネバ副会長)
しおりを挟む【ミネバ副会長 視点】
ティストーム王国 スリブラン男爵家………
商売上手の先代が税金を多く収めた功績で爵位を得た、新興封地貴族だ。
二代目当主の息子に産まれ、ミネバなどと大層な名をつけられたが、私の母は平民の愛人だ。
貴族の血を引いていても平民の庶子は平民である。しかし生活費は定期的に渡されていたので、恵まれた生活を送っていたと思う。おかげで充分な教育も受けられ、商業ギルドの契約関係の仕事に就くこともできた。
商業ギルドの職員には私のような身の上の者が多い。
平民ではあるが『貴族の血を引いている』という意味のない信用が利く業界なのだ。それにもずいぶん助けられている。
アルベール殿下との出会いも父を通して繋がった。
13歳で社交界デビューしたアルベール殿下は、そのパーティー会場で『商会を立ち上げるには何が必要なのだ?』と、豪商の名を欲しいままにしているスリブラン男爵に直質したそうだ。
おそらく父に面倒ごとを押し付けられたのだろうが、王子は商業ギルドにいる私のところにやって来た。
商会を起こしたいと相談されたので、登録条件や契約書の指導をする。
自分の担当課の仕事ではないが、13歳の少年を…王子を無下に追い返すことなどできはしない。それに、商業ギルドにではなく私に相談したいのだと堂々と臆面もなく言われた。彼の魅力にやられた瞬間だった。
王族という者はみなこうなのだろうか。出来ない事はないような錯覚を覚えさせられる。彼と対話していると掻き立てられるものがある。どうにも逃げられそうになかった。
売るものは人脈を駆使した『併結』。王子の魅力ひとつが柱の商会だ。
成った契約が増えるたびに『王子の商会』は話題になった。
揶揄する者もいたが、そんなことは王子も私も承知の上だ。
だが、二年経った今はどうだ?『アルベール商会』の看板を掲げた会屋が建ったぞ。通りの裏側部屋は賃貸にできるほど大きな5階建てだ。
間を置かず製造と販売にも手を広げ、成長はいまだ続いている……嗤っていた奴らの鼻は明かせたはずだ。
そんな折に紹介されたのが、妹姫のシュシューア様だ。
前世の記憶を持っているということだが、それにしては普通の子供だ。
知っていることが多いだけの、普通の子供よりよく喋しゃべるだけの……普通か?
けれども、この子供の記憶は金になる。
金になるのなら利用させてもらう。
この考えは会長にはとても言えん……が。
「わたくしは『金のなる木』です! かねのなるきとは、かじつがきんか…はっぱだったっけ?…ということです。わたくしのきおくを、きんかにしてくださいな!」
自分で言ってのけた。
なんだ、いいのか……いいわけがない。
しかしこれは野放しにしたら危ない。とりあえず歌わせるのをやめさせないと駄々洩れだ。
会長に姫さまを叱る許可は貰った。
だが叱り方がわからない。
少し口調をきつくするとショボンとしてしまう。
だから子供は嫌なんだ。
叱る役目は私ではないだろう? 親!……は国王陛下か。
会長は叱っているが、王子職と会長職で忙しい。
ルベール殿下は、行儀だけか。
ベール殿下のは、ただの突っ込みだな。
そういえば会長の従者見習いが叱っていたな。姫さまも彼の言うことは何故か素直に聞いていた。彼にまかせてしまおう……と思ったら出世して離宮に来なくなった。
ゼルドラ魔導士長は……どちらかと言えば注意される側の人間だな。
私しかいないのか? 嫌な役目だ……
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