転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ちゃんこ

文字の大きさ
63 / 203
1章 幼少期編 I

51.商1(Side ミネバ副会長)

しおりを挟む
【ミネバ副会長 視点】


ティストーム王国 スリブラン男爵家………
商売上手の先代が税金を多く収めた功績で爵位を得た、新興封地貴族だ。

二代目当主の息子に産まれ、ミネバ光石などと大層な名をつけられたが、私の母は平民の愛人だ。
貴族の血を引いていても平民の庶子は平民である。しかし生活費は定期的に渡されていたので、恵まれた生活を送っていたと思う。おかげで充分な教育も受けられ、商業ギルドの契約関係の仕事に就くこともできた。

商業ギルドの職員には私のような身の上の者が多い。
平民ではあるが『貴族の血を引いている』という意味のない信用が利く業界なのだ。それにもずいぶん助けられている。

アルベール殿下との出会いも父を通して繋がった。

13歳で社交界デビューしたアルベール殿下は、そのパーティー会場で『商会を立ち上げるには何が必要なのだ?』と、豪商の名を欲しいままにしているスリブラン男爵に直質したそうだ。

おそらく父に面倒ごとを押し付けられたのだろうが、王子は商業ギルドにいる私のところにやって来た。

商会を起こしたいと相談されたので、登録条件や契約書の指導をする。
自分の担当課の仕事ではないが、13歳の少年を…王子を無下に追い返すことなどできはしない。
それに、商業ギルドにではなく私に相談したいのだと堂々と臆面もなく言われた。彼の魅力にやられた瞬間だった。
王族という者はみなこうなのだろうか。出来ない事はないような錯覚を覚えさせられる。彼と対話していると掻き立てられるものがある。どうにも逃げられそうになかった。

売るものは人脈を駆使した『併結』マッチング。王子の魅力ひとつが柱の商会だ。

成った契約が増えるたびに『王子の商会』は話題になった。
揶揄する者もいたが、そんなことは王子も私も承知の上だ。
だが、二年経った今はどうだ?『アルベール商会』の看板を掲げた会屋かいおくが建ったぞ。通りの裏側部屋は賃貸にできるほど大きな5階建てだ。

間を置かず製造と販売にも手を広げ、成長はいまだ大きく続いている……嗤っていた奴らの鼻は明かせたはずだ。

そんな折に紹介されたのが、妹姫のシュシューア様だ。

前世の記憶を持っているということだが、それにしては普通の子供だ。
知っていることが多いだけの、普通の子供よりよく喋しゃべるだけの……普通か?

けれども、この子供の記憶は金になる。
金になるのなら利用させてもらう。
この考えは会長にはとても言えん……が、

「わたくしは『金のなる木』です! かねのなるきとは、かじつがきんか…はっぱだったっけ?…ということです。わたくしのきおくを、きんかにしてくださいな!」

自分で言ってのけた。

なんだ、いいのか……いいわけがない。

しかしこれは野放しにしたら危ない。とりあえず歌わせるのをやめさせないと駄々洩れだ。

会長に姫さまを叱る許可は貰った。
だが叱り方がわからない。
少し口調をきつくすると項垂れてしまう。
だから子供は嫌なんだ。
叱る役目は私ではないだろう? 親!……は国王陛下か。

会長は叱っているが、王子職と会長職で忙しい。
ルベール殿下は、行儀だけか。
ベール殿下のは、ただの突っ込みだな。

そういえば会長の従者見習いが叱っていたな。姫さまも彼の言うことは何故か素直に聞いていた。彼にまかせてしまおう……と思ったら、出世して離宮に来なくなった。

ゼルドラ魔導士長は……どちらかと言えば注意される側の人間だな。

私しかいないのか? 嫌な役目だ……




………………………………………
※ 封地貴族…領地を持たない貴族
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

モンド家の、香麗なギフトは『ルゥ』でした。~家族一緒にこの異世界で美味しいスローライフを送ります~

みちのあかり
ファンタジー
10歳で『ルゥ』というギフトを得た僕。 どんなギフトかわからないまま、義理の兄たちとダンジョンに潜ったけど、役立たずと言われ取り残されてしまった。 一人きりで動くこともできない僕を助けてくれたのは一匹のフェンリルだった。僕のギルト『ルゥ』で出来たスープは、フェンリルの古傷を直すほどのとんでもないギフトだった。 その頃、母も僕のせいで離婚をされた。僕のギフトを理解できない義兄たちの報告のせいだった。 これは、母と僕と妹が、そこから幸せになるまでの、大切な人々との出会いのファンタジーです。 カクヨムにもサブタイ違いで載せています。

公爵令嬢やめて15年、噂の森でスローライフしてたら最強になりました!〜レベルカンストなので冒険に出る準備、なんて思ったけどハプニングだらけ〜

咲月ねむと
ファンタジー
息苦しい貴族社会から逃げ出して15年。 元公爵令嬢の私、リーナは「魔物の森」の奥で、相棒のもふもふフェンリルと気ままなスローライフを満喫していた。 そんなある日、ひょんなことから自分のレベルがカンストしていることに気づいてしまう。 ​「せっかくだし、冒険に出てみようかしら?」 ​軽い気持ちで始めた“冒険の準備”は、しかし、初日からハプニングの連続! 金策のために採った薬草は、国宝級の秘薬で鑑定士が気絶。 街でチンピラに絡まれれば、無自覚な威圧で撃退し、 初仕事では天災級の魔法でギルドの備品を物理的に破壊! 気づけばいきなり最高ランクの「Sランク冒険者」に認定され、 ボロボロの城壁を「日曜大工のノリ」で修理したら、神々しすぎる城塞が爆誕してしまった。 ​本人はいたって平和に、堅実に、お金を稼ぎたいだけなのに、規格外の生活魔法は今日も今日とて大暴走! ついには帝国の精鋭部隊に追われる亡国の王子様まで保護してしまい、私の「冒険の準備」は、いつの間にか世界の運命を左右する壮大な旅へと変わってしまって……!? ​これは、最強の力を持ってしまったおっとり元令嬢が、その力に全く気づかないまま、周囲に勘違いと畏怖と伝説を振りまいていく、勘違いスローライフ・コメディ! 本人はいつでも、至って真面目にお掃除とお料理をしたいだけなんです。信じてください!

処理中です...