転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ちゃんこ

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1章 幼少期編 I

73.全部美味しい

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「姫さま、こんな感じでいかがですか?」

落ち込んでいるうちにナッツクランチチョコが形成されていた。

「わ、可愛いですね。冷やして固まったら1個ずつ食べましょうか。おやつは別ですよ。ホットケーキは今日絶対食べると決めているのです。ベール兄さまが」

お土産にメープルシロップをいただいたと聞いて、ジレジレと待っているのだ。
(ベール兄さまへのお土産はマラーナ珊瑚の装飾が付いたナイフです)

「ははは、じゃぁ準備して殿下がいらしたらメレンゲを立て始めます。それまで食堂にどうぞ」

は~い。

ベーキングパウダーがないので、パンケーキ系は全部メレンゲ製なのだ。

……………………………………………
ホットケーキの作り方
①卵白+甘液でメレンゲを作る。
②卵黄+豆乳+バニラエッセンス+薄力粉を泡だて器で混ぜる。
③メレンゲを潰さないように②をさっくり混ぜる。
④バターを溶かした平鍋で焼きます。
……………………………………………

バターとメープルシロップをたっぷりかけて召し上がれ……ですわ。


◇…◇…◇


「旨ぁーーーーっ! 全部初めての味だ! 全部旨いぞ!」

テーブルに並んでいるのは、バターとメープルシロップをたっぷりかけたホットケーキ。甘液の入っていないカフェオレ。ミニピッチャーに入った甘液。そしてそして、ナッツクランチチョコ、一粒!…だけです。一人一粒です。駄目ですよベール兄さま。

楓の樹液メープルシロップは初めて食べましたが、風味があって美味しいですな。このチョコレートも、石臼を使えばこれ以上美味しくなる……ということでよろしいですかな?」

「はいっ! もっと滑らかな舌触りになるのです。でも、でも、これも美味しいですねぇ~。あぁ、何かいっぺんに味わっちゃって、もったいないです。チギラ料理人はどうでした?」

「皆さんと一緒です。みんな旨かったです。あえて言えば、何も入れないコーヒーで、ホットケーキもチョコレートも食べると旨さが引き立ちますね」

苦×甘のコラボですね。私も大人だったら同じ意見です。今は子供だからどんなに甘×甘×甘もドンと来い!

「……君、このチョコレートは沢山作っておくのが無難だ。アルベール王子殿下に急かされると思われる」

チギラ料理人がハッとしたように身構える。

「……贈り物用ですね。もうちょっと気合入れて綺麗に固めないと」

型……は、まだいいか。後で相談っと。

「ナッツ以外にも干し果物を細かくしたものも美味しいですよ」

とりあえず種類で勝負しましょう。

「それはルベール兄上が持ってちゃうぞ。俺はクッキーの砕いたやつを混ぜてほしい」

おぉ、クランチチョコ正統派。

「そういえば、お弟子さんたちは明日は来ないのですよね。殻剥きまでやっておいてもらった方が良いのではないですか?」

ひとり皮むき。孤独な作業。
豆乳の混合具をポコンするチギラ料理人の背中には哀愁があった。

「そっ、そうですね。そうします」

小走りで食堂を出て行くチギラ料理人。
『お~い、手伝ってくれぇ』…ちょっと声が情けなかった。

「シュシュ、この黒い菓子はいっぱい作れるのか? 楓の樹液は土産でもらったのだけだろ? 次は何作る? コーヒーは? このコーヒーで菓子は作らないのか?」

わかります、わかります。
美味しいものいっぱいで嬉しい悲鳴が出ちゃいますよね。



☆…☆…☆…☆…☆



数日後、新しい文房具を頂いた。

私が羽ペンを使いにくそうにしていたのを見たシブメンは、アルベール兄さまと相談して、簡単に潰れない金属のペン先を作ってくれたのだ(前話参照)
私が握りやすいようにペンの軸は太めで、ペン先が差し込めるように軸の先端内部にゴムが使われている。要は前世でのつけペンだ。これはもう完成された形なのね。とっても書きやすいのです。
植物紙が普及した後の羽ペン不足になるであろうことも考慮されていると聞きました。

「ルベール兄さまが、文房具セットの提案してるかも」

くふふふ……

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