152 / 203
2章 幼少期編 II
34.建設現場見学ツアー8
しおりを挟むそうこうしているうちに、昼食の用意が出来たと侍女が呼びに来た。
待ってました。お腹がペコペコです。しかも、お遊戯後のお弁当。なんて運動会チック!
親がいなかった前世の私は、運動会のお昼は教室で仕出し弁当を食べていたのです。一緒に食べてくれた先生は面白い話をしてくれて笑わせてくれたけど、本当は淋しかった。
平成のいつからか、お弁当は家族とは食べずに教室で食べるようになったと聞いた。時代かなぁと思った。共働きとかいろいろあるもの。
近所の小学校では、親がお酒を飲みだして急遽中止になったということもあった。花見と子供の運動会を混同するような、しょーもない勘違いをするのも時代だったのかもしれない。
前世の事はさておき、私たちのような高貴な身分(むふん♪)になると、外食は二つのパターンに分かれる。
ひとつはレストラン。うん、当たり前すぎるね。
で、もうひとつはレストランがない場合なのだけど、これがねぇ~、料理人を同行させて現地で料理をさせるのが普通らしいのだ。どんなセレブよ。セレブだけど。
しかも、ちょっとだけ期待していたバーベキュー的なものでもないのだ。先程のティータイムでもわかるように、きちんとした食器を使って、きちんと順番通りに食事が運ばれ、きちんとマナーを守って食事をする……どうですか? つまらないでしょう?
だから私は「お弁当」を持っていくと主張した。
アルベール兄さまに即座に却下された。
お弁当=携帯食なのだからして、感覚の違いは仕方なかったけど、私はごねまくった。
『軍の遠征でもないのに、なぜ携帯食を持参しなくてはいけないのか』
『絶対美味しいから、騙されたと思って食べてみてください!』
アルベール兄さまとガチンコ勝負した。
お弁当のために私は一歩も引かなかった。途中からベール兄さまも私に加勢してガチンコじゃなくなったけど、うぐぐぐ…ふたりがかりでも優勢にはならない。敵は手強かった。
けれども、そこにたまたま現れたルエ団長が、アルベール兄さまを口説き落として決着した。なんて説得したのかは知らない。お弁当の許可をもらったのが嬉しくて、聞くのを忘れたままになっている。たぶん一生忘れたままだ。
そしていつの間にやら、お弁当はリクエストがOKということになっていたのは、ルエ団長のゴリ押しだったみたいだ。
ふふん、大歓迎ですよ。アルベール兄さまを説得してくれたお礼もあるし、希望に添うお弁当に致しましょう……あれ?…ということは、ルエ団長も空中街道の現場見学に行くのですか? ベール兄さまもお弁当を食べるために行くと正直に言っていますね。嫌がるシブメンをルエ団長が引っ張って来てもうひとり増えました。
キラ~ン、これはあれの出番ですね。
ランド職人長、漆塗りのお重を出してくださいな!
漆器は、まぁ、漆の樹液さえ手に入ればなんとかなった。
塗って、研いで、塗って、研いで……
色は赤と黒でシンプルに。装飾は金粉と色粉で女の子らしい花模様を入れてくれた。じゃなくて、最近これが花文字でシュシューアと描かれていることが判明した。最初から知っていたふりをしているが、たぶんバレてる……花文字なんて作ったの誰よ。読めないよこんなの。
そういうわけで、漆塗りの基本を習得したランド職人長は、木工職人に丸投げして引き継がせた。
植物紙の時と同じですね。木工職人の中から漆職人が枝分かれして増えていくと、私は思います。いずれ美術品のようになって世に出てくれたら嬉しいな。
お弁当の方はというと、おにぎりのリクエストにはっきりと好みが出た。
チャーハンおにぎりは、ルエ団長。
焼き味噌は、シブメン。
じゃこおにぎりは、ベール兄さま。
ツナマヨは、アルベール兄さま。
焼きたらこは、私。
焼き味噌、ツナマヨ、焼きたらこは海苔を巻いてある。
黒々とした海苔に最初は思いっきり引かれましたが、巻き寿司にしたら簡単に魅了されてくれた。酢飯単体が何気に人気があるのだ。
しかし何の相談もしなかったのに、リクエストがおにぎりで統一されたのは不思議だ。
まぁ、最初にルエ団長が「チャーハンおにぎり」と主張したからだと思うけど。
……………………………………………
焼き味噌の作り方。
①薬味などを刻んでごま油で炒めます。
(ネギ系・ショウガ・ピーマン)お好みで。
②①に火が通ったら大葉をパラっと混ぜる。
③味噌+白ワイン+甘液を加えて、弱火で混ぜ混ぜして完成です。
……………………………………………
う~ん、みりんが欲しいです。日本酒造れる転生者カモン!
従者や護衛などの随行者たちの分は、自身で用意するのが常になっているそうです。ほら、例の携帯食(カチカチパンと干し肉)ね。
そこに主や上司からの下げ渡しがあったらラッキーなのですって。
※北の飢饉対策に用意した乾パンとカンショーモは、まだ本備蓄には入っていません。
それでね、アルベール兄さまがチギラ料理人に、私たち用の他に30人分のお弁当を用意するようにって言っていたのです。
んもぅ~、ニクイ王子さまなのです。好き好き。そんな気の利いた王子さまに微力ながらも加勢いたしましょう。
『おにぎりの型』を作りました! まな板に三角の穴が空いているやつ。チギラ料理人は目を潤ませて喜んでくれました。お手伝いのランド職人長一行もホッとしていました。
それでそれで、おかずには私のドリームをぎゅうぎゅうに詰めてもらった。
若鳥のから揚げ(若い玉鳥は高級食材なのだ)
エビフライ&タルタルソース。
太くてタコさんには出来なかったウィンナー炒め。
少し甘めの巻きたまご焼き。
野菜の出汁煮物。
彩の葉物と赤役はうさリンゴ……完璧!
はっ、ミートボールを忘れてた!
………続く
149
あなたにおすすめの小説
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
農家の四男に転生したルイ。
そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。
農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。
十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。
家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。
ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる!
見切り発車。不定期更新。
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~
雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。
突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。
多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。
死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。
「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」
んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!!
でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!!
これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。
な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる