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あなたが寝てる間に1
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無事に手術が終わり、ハルカちゃんと共に一度警察で事情聴取に出頭することになった。
ハルカちゃんも現場に居合わせたってことでアヤメさんも付き添いで警察についてくるって。
アヤメさん運転の車で警察まで行く道中、アヤメさんはしきりにテルとの事を謝ってくれた。
もう、私の中ではけじめのついた話だし、今まで有難うって声をかけるとアヤメさんすごく悔しそうだった。残念ながらあの手の女は世の中にたくさんいるけど、まさか弟が引っかかるなんてありえないと怒る。なんかアヤメさん、本能的にあいちゃんの気質を察知したって言ってた。野生の勘って。
そんな時、ハルカちゃんが爆弾発言をかましてくれた。
「でも、ユキちゃんもういい感じの人いるもんね。あのお兄さんだったらお似合いだった」
そのひと言にアヤメさんが食いついた。
「おお、ユキちゃんもやるねぇ。だれだれ?」
私が赤面しているとハルカちゃんがあっさりばらしてしまう。
「お姉ちゃん、病院にいたじゃん。マサキさんっていう人だよ」
すると、へえ、とアヤメさん考え込んだ。
「マサキがねぇ。ほーー。そっか。やっとあいつにも春が来たんだねぇ。うんうん」
なんかひとりで納得してるけどなんなんだろう、すごく気になる。
「ユキちゃん、マサキはね、すごいイイ奴なの。護るったら絶対に護ってくれる」
しみじみと昔を思い出しながら話す。その表情がなんか慈愛のオーラが出ている。
「今回の事も、知り合って間もない私の為にすごく尽力してくれたし、すごく実感してます」
「知り合って間もなしで、か。そりゃよっぽど……。あいつ仲間意識がすごく強くて頼りになるやつなんだけど、自分のことは二の次にするところがあるから、気にしてやってね」
☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・
警察につくと、窓口に説明する。警察署って中々入る機会がなくて、すごく怖い印象があったんだけど窓口の若い警官は、淡々と事務的に指示をする。なんか、印象としては静まり返った市役所って感じ。タライ回し感が半端ないデス。
「まぁ警察も一種のお役所だからねぇ」とアヤメさん。なんかすごく堂々としてる気がする。
事情聴取は色々と聞かれたが、スチールの机にスタンドライトを顔に当てられて乱暴な聴取をされるとかっていうドラマのようなこともなく、普通の会議室の机だった。パイプイスに座りハルカちゃんとは別れて一人づつ話を聞かれた後すぐに開放してくれた。事実関係が整合性があるのと、ご近所の聞き取り調査であいちゃんの話が虚偽であることが発覚したことで一応の確認程度の聴取だったそうだ。
「御足労頂きました」と最後ねぎらいの言葉までかけていただき、初警察体験は終了した。
普通に暮らしていたら警察署なんてなかなか来ることもないしなと感慨深かった。
窓口に置いてあった交通遺児のための募金という箱に少し募金しとく。
警察の玄関に向かっていると、半狂乱のおばさんが窓口の人に詰め寄っていた。
「娘がそんな大それたことするわけないでしょ?嵌められたのよ!!娘を早く釈放なさい!!妊娠してるのよ!!お腹の子に何かあったらどう責任とるおつもり?」
なんか、この声聞いた事ある。あの迷惑電話のおばさんの声だ。
「あ。あのバカ女の母親だ」
ハルカちゃん、こういう時には心の中で思っててください。
幸い窓口の人に怒鳴り倒す自分の声でハルカちゃんのつぶやきは聞こえなかったみたいだけど。
詰め寄る痩せぎすのおばさん、髪を振り乱して娘の為に暴れている。
傍には呆然と見ているひ弱そうなおじさんがポツンと立っている。影が薄くて見落としそうになっていた。
「お母さん、もうやめないか。あいは他人様を傷つけてしまった。罪を償わないといけないんだよ」
おじさんの声にもおばさんはヒートアップして金切り声をあげる。
「何言ってるの!!あいがそんなことするはずないじゃない!!陥れられたのよ。娘が犯罪者だなんて冗談じゃないわ!!!親戚に顔向けが出来ないじゃないの」
「あいを犯罪者に追い詰めたのは私たち親かもしれない。甘やかすばかりで我儘を許してきた。まず、あいに自分の犯した罪から逃げ出さないように説き、罪の償いをさせるのが私たち親の役目だ」
影の薄いおじさんの静かな言葉に、金切り声のおばさんは堰を切ったように泣き叫んで床にへたり込む。
「行こう」
その光景に釘付けになっていたハルカちゃんと私をアヤメさんが引っ張って警察を後にした。
ハルカちゃんも現場に居合わせたってことでアヤメさんも付き添いで警察についてくるって。
アヤメさん運転の車で警察まで行く道中、アヤメさんはしきりにテルとの事を謝ってくれた。
もう、私の中ではけじめのついた話だし、今まで有難うって声をかけるとアヤメさんすごく悔しそうだった。残念ながらあの手の女は世の中にたくさんいるけど、まさか弟が引っかかるなんてありえないと怒る。なんかアヤメさん、本能的にあいちゃんの気質を察知したって言ってた。野生の勘って。
そんな時、ハルカちゃんが爆弾発言をかましてくれた。
「でも、ユキちゃんもういい感じの人いるもんね。あのお兄さんだったらお似合いだった」
そのひと言にアヤメさんが食いついた。
「おお、ユキちゃんもやるねぇ。だれだれ?」
私が赤面しているとハルカちゃんがあっさりばらしてしまう。
「お姉ちゃん、病院にいたじゃん。マサキさんっていう人だよ」
すると、へえ、とアヤメさん考え込んだ。
「マサキがねぇ。ほーー。そっか。やっとあいつにも春が来たんだねぇ。うんうん」
なんかひとりで納得してるけどなんなんだろう、すごく気になる。
「ユキちゃん、マサキはね、すごいイイ奴なの。護るったら絶対に護ってくれる」
しみじみと昔を思い出しながら話す。その表情がなんか慈愛のオーラが出ている。
「今回の事も、知り合って間もない私の為にすごく尽力してくれたし、すごく実感してます」
「知り合って間もなしで、か。そりゃよっぽど……。あいつ仲間意識がすごく強くて頼りになるやつなんだけど、自分のことは二の次にするところがあるから、気にしてやってね」
☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・
警察につくと、窓口に説明する。警察署って中々入る機会がなくて、すごく怖い印象があったんだけど窓口の若い警官は、淡々と事務的に指示をする。なんか、印象としては静まり返った市役所って感じ。タライ回し感が半端ないデス。
「まぁ警察も一種のお役所だからねぇ」とアヤメさん。なんかすごく堂々としてる気がする。
事情聴取は色々と聞かれたが、スチールの机にスタンドライトを顔に当てられて乱暴な聴取をされるとかっていうドラマのようなこともなく、普通の会議室の机だった。パイプイスに座りハルカちゃんとは別れて一人づつ話を聞かれた後すぐに開放してくれた。事実関係が整合性があるのと、ご近所の聞き取り調査であいちゃんの話が虚偽であることが発覚したことで一応の確認程度の聴取だったそうだ。
「御足労頂きました」と最後ねぎらいの言葉までかけていただき、初警察体験は終了した。
普通に暮らしていたら警察署なんてなかなか来ることもないしなと感慨深かった。
窓口に置いてあった交通遺児のための募金という箱に少し募金しとく。
警察の玄関に向かっていると、半狂乱のおばさんが窓口の人に詰め寄っていた。
「娘がそんな大それたことするわけないでしょ?嵌められたのよ!!娘を早く釈放なさい!!妊娠してるのよ!!お腹の子に何かあったらどう責任とるおつもり?」
なんか、この声聞いた事ある。あの迷惑電話のおばさんの声だ。
「あ。あのバカ女の母親だ」
ハルカちゃん、こういう時には心の中で思っててください。
幸い窓口の人に怒鳴り倒す自分の声でハルカちゃんのつぶやきは聞こえなかったみたいだけど。
詰め寄る痩せぎすのおばさん、髪を振り乱して娘の為に暴れている。
傍には呆然と見ているひ弱そうなおじさんがポツンと立っている。影が薄くて見落としそうになっていた。
「お母さん、もうやめないか。あいは他人様を傷つけてしまった。罪を償わないといけないんだよ」
おじさんの声にもおばさんはヒートアップして金切り声をあげる。
「何言ってるの!!あいがそんなことするはずないじゃない!!陥れられたのよ。娘が犯罪者だなんて冗談じゃないわ!!!親戚に顔向けが出来ないじゃないの」
「あいを犯罪者に追い詰めたのは私たち親かもしれない。甘やかすばかりで我儘を許してきた。まず、あいに自分の犯した罪から逃げ出さないように説き、罪の償いをさせるのが私たち親の役目だ」
影の薄いおじさんの静かな言葉に、金切り声のおばさんは堰を切ったように泣き叫んで床にへたり込む。
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