Ωの僕がお偉いさん

安心するねぇ～

　あの後、お医者さんは疲れが出たのだろうと診断を下して暫くは安静にするようにと言われた。
　父様と母様は「主治医の言うことは絶対！」と嬉々として受けいれた。爺の話では僕がここに運び込まれたのは仕方ないにしても、王子宮にいるのはと反対した者もいるらしいけど母様の『懇願』で大丈夫になったらしい。

　……母様の『懇願』？？
幼い頃からの母様の言動を思い出してみよう。

・生まれた子供がΩだったため、生まれなかったことにして養子に出そうと言われた時、それならその母親もいらないでしょうと国に帰ろうとした。(母様は海賊国家ともいえる隣国フールフーガの王女様だったから本当に帰っちゃうと国際問題。)

・自分の運命の番が見つかった時、王妃宮の奥に住まわせられないのなら自分も王妃宮を出ると言った。(当時すでに王妃であり、王妃が王妃宮に存在しない前例は無い事から表舞台に出ないことを条件に王妃宮の奥に住んでいる。)

・僕の5才の誕生祝いがΩだから簡素に済まそうと意見が出た時、フールフーガの艦隊から祝砲が撃たれた。

　僕の記憶の中でも母様とは『懇願』とはお願いとはちょっとかけ離れてるんだけど……。何やったの？
　……誰も目を合わせてくれない。ねぇ本当に母様は何を言ったんですか…。


　　やっぱり実家というのは良いものだねぇ～。
ちょっと腑に落ちない事はあったけど、父様と母様の守りがあるから安心だし、今はお客様扱いだからお付きの皆もゆっくりできるしね。
　あ、今気づいたけど巣でもないし近くにアーノルドも居ないけど大丈夫だ。

　だけど、ちょっと具合悪くなってきた…。酷くではないけどちょっとお腹が張るなぁ…寝よう…そうしよう～。
……一刻ほどで目が覚めた。……うぅｰ、お腹が張ってる……考えてみたら僕って臨月だったよね？でも初産は遅れるっているから違うよね？うん、違うよ。マダだよね？……そうマダだよ。お腹ナデナデして寝よう。

　また一刻ほどで起きた……。僕、なにかフラグたてたかな～？お腹が痛い。…………おトイレ！

　……ふぅ～、さっぱりした。やっぱり間違いみたいだね。お休みなさい。

　ドキドキしてきた……もうすぐなんだよね。この子はどんな子なんだろう。アーノルドに似てる？それとも僕？男の子？女の子？バース性は？Ωはまだ生きにくい世の中だ。一番上の子だし、アーノルドの領地の事もあるからαだったら……そのうちとられちゃう？なら、βがいいのかな？でも僕も『懇願』すればとられないで済む？
　そんな事を考えながら今度こそちゃんと眠った。



　と思うじゃない？今度は半刻ほどで目が覚めた。
しかも鈍痛が腰を襲う。……これはやっぱり…やっぱりなのかな？うーん…夜明けまで後二刻ぐらいか。
　えーと、陣痛は段階があって実際生むまでは数刻はかかるはずだから、夜明けまでは一人で頑張るしかないかぁ……。