Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

文字の大きさ
181 / 708

トータ

しおりを挟む
 翌朝僕はトータの部屋に来ていた。今までの疲れのせいかトータは熱を出して寝込んでしまった。報告を受けてすぐに看病のために侍女さんの2人をつけてお医者さんにも来てもらった。結果は風邪ではないというので赤ちゃんも同じ部屋にいる。

「トータ具合はどう?」

「うん、ありがとう…ごめんなさい。」

 明らかに熱がある顔で謝ってくるトータに「ごめんなさいはいらないよ」と返した。

「お医者さんは疲れからの熱だから休んでれば治るって言うからとにかく休まないとね?あとご飯。一緒に食べようと思って持ってきたよ。」

 今日の朝ご飯はトータのお腹の事も考えて消化に良いメニューだ。お粥、白身魚の煮つけ、鳥のゼリーよせ、青菜の和え物、根菜のボイルだ。

「ねぇトータ、ずっと気になっていた事あるんだけど聞いて良い?」

「なに?いいよ?」

「あのね、聞いたかもしれないんだけどトータの赤ちゃんのお名前なんだけど……。」

 ああ~とご飯を食べながらさらりと言ったのは衝撃の一言だった。

「名前まだ無いの。」

 はい?イヤ、産まれてからけっこう経つよね!?
今まで“うちの子”とか“この子”とかで名前聞いてないなって思ってたけどそもそもまだ名無しの状態だったとは……。

「うん。だからさ、ノエル様つけてもらえたらと思って……。お願いできるかな~?」

 え!!そんな大事な役目を僕に頼むの?!

「……トータは自分でつけないの?」

「うーん…ボク…わからないんだよね。一応今まで考えたけど、ボクにつけられたあだ名とか店の他の子の名前しか思いつかない。覚えやすくて……この子もΩだから可愛がってもらえる名前が良いな。」

 そうか……。どうしよう……可愛い…覚えやすい名前ねぇ…。花の名前はどうだろうか。スミレ、サクラ、カエデ……うん、カエデってどうだろう?

「カエデ……カエデ。可愛い!うん!ありがとう。この子の名前はカエデ。」

 名前が決まって嬉しそうにベビーベッドの中のカエデのほっぺを撫でながら繰り返した。気に入ってくれたようで良かった。

 あのねトータ、幸せの時間を邪魔して悪いのだけれど一つトータに知らせないといけない事があります。

「父様と母様がシモンのお披露目の時に来るんだけど、その時トータに会いたいって…。」

 あ、固まってる。歩いて側に行って…反応無い。カエデをのぞき込むと見慣れた僕の顔を見て笑う。可愛い~。指を差し出すと掴んでくる…僕からもミルクの匂いがするからだろうね、お口を開けて“もうそろそろミルクくれてもいいよ”って仕草。うちの子はカエデの良い友達になれるかな?すぐに成長速度が変わってしまうけどそれでもそれまでは仲良しでいてほしいな~。
しおりを挟む
感想 199

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

処理中です...