346 / 708
マオ、黙って
しおりを挟む
事態は悪化していく。
母様がコウに「口を塞いだら可哀想よ?」と注意したため自由になったマオはコウに食って掛かった。
「なんでいきなり口塞ぐんだよ!」
「いや~、さすがにダメでしょ。」
「口塞ぐ方がダメじゃん。俺もノエルもネコじゃん。皆知ってるよ」
「大声で言うことでもないだろ。」
「普通の声だった!」
……そういう意味じゃない!これ以上ここでギャーギャー喚かれたらたまらないので追い出そうとしたのだが……母様が。
「ああ!そういう意味合いなのね?ネコちゃんって。でもそれならあなたもノエルと同じΩの子?」
「いいえ~。王妃様~、俺はβなんだ。でも提督の船で雑用だったから。」
「まぁ、お兄様の船で?」
とたんに“スゥー”っと細めた目で母様がコウを見る。なんか回りの温度が下がったかのように思えて背筋がゾクッとした。
ここで慌てたコウが口を挟んだ。
「誤解なさらないで下さい。このマオは赤ん坊の頃外国の桟橋で拾って以来、船で育ったんです。子供なので出来ることは少なく雑用という位置付けになりましたが、健全な仕事のみでした。」
おー、コウが焦ってるの珍しいな~じゃなくて。なんで母様がちょっと怒ってる?雑用係が……あ、そうだった。長い航海する船、特にフールフーガは海賊時代の流れから雑用係りは船員達の性欲処理係りの役目もあったんだった。そうか、母様はフールフーガ出身だからその辺りの意味も知っていて幼く見えるマオが雑用と知って怒ったのか。
「母様、母様、マオはいつもはデジレ様のお世話係りなんだよ。」
マオは成人してるというより、こっちの方が良い答えの筈だ。案の定、「あらそうなの?」と空気が和みマオを見た。
「そうです。いつもはデジレ様のお世話係りしていて、後やってるのはコウの専属だけ。」
………あぁせっかく和んだのに。
ニッコリ笑ってコウを見る母様の手を引いてちょっと移動した。もうあんな広間の真ん中で出来る話題じゃない。マオも来るの!ローストビーフとチキンの丸焼きは置いてきなさい!
後ろをついてくるコウの声はいつもと違ってハリがない。
「……王妃、改めて誤解のないようにお願いします。」
「何が?誤解って何さぁー。俺がコウの専属ってホントのことじゃん。」
ああ、どんどん悪い方へ……。
「あ、あのね母様、コウは本当にマオが好きで他の人にとられたくなくて専属にしたんだって。」
「ンフフー。俺ってば愛されてるから!」
「まぁ、そうなの?」
「エヘヘ、コウは優しいしαだから強いし体力もあるし、最高~。」
僕がコウはマオを好きだと言うとマオもコウが良いと話しにのってきた。よしっ、これで好きあってるもの同士なので専属で良いという事で丸く納めよう!はい、もうこの話はおしまい!
「だから今日も美味しいご飯いっぱい食べて体力つけないと!コウ、3回くらいじゃおさまんないし。」
…………。沈黙が辛い。終わらせたかったのに。
「あ、あっちにケーキ来た~。ちょっと行ってくる!」
…………1人だけ離脱とか。爆弾置いて離脱とか。
「…………ノエル?」
「は、母様…あの、マオは~、マオは……考え無しに喋るのね。自分の興味に沿って考えちゃうの。だから……その……。」
僕も逃げたい。爺、助けて。
母様がコウに「口を塞いだら可哀想よ?」と注意したため自由になったマオはコウに食って掛かった。
「なんでいきなり口塞ぐんだよ!」
「いや~、さすがにダメでしょ。」
「口塞ぐ方がダメじゃん。俺もノエルもネコじゃん。皆知ってるよ」
「大声で言うことでもないだろ。」
「普通の声だった!」
……そういう意味じゃない!これ以上ここでギャーギャー喚かれたらたまらないので追い出そうとしたのだが……母様が。
「ああ!そういう意味合いなのね?ネコちゃんって。でもそれならあなたもノエルと同じΩの子?」
「いいえ~。王妃様~、俺はβなんだ。でも提督の船で雑用だったから。」
「まぁ、お兄様の船で?」
とたんに“スゥー”っと細めた目で母様がコウを見る。なんか回りの温度が下がったかのように思えて背筋がゾクッとした。
ここで慌てたコウが口を挟んだ。
「誤解なさらないで下さい。このマオは赤ん坊の頃外国の桟橋で拾って以来、船で育ったんです。子供なので出来ることは少なく雑用という位置付けになりましたが、健全な仕事のみでした。」
おー、コウが焦ってるの珍しいな~じゃなくて。なんで母様がちょっと怒ってる?雑用係が……あ、そうだった。長い航海する船、特にフールフーガは海賊時代の流れから雑用係りは船員達の性欲処理係りの役目もあったんだった。そうか、母様はフールフーガ出身だからその辺りの意味も知っていて幼く見えるマオが雑用と知って怒ったのか。
「母様、母様、マオはいつもはデジレ様のお世話係りなんだよ。」
マオは成人してるというより、こっちの方が良い答えの筈だ。案の定、「あらそうなの?」と空気が和みマオを見た。
「そうです。いつもはデジレ様のお世話係りしていて、後やってるのはコウの専属だけ。」
………あぁせっかく和んだのに。
ニッコリ笑ってコウを見る母様の手を引いてちょっと移動した。もうあんな広間の真ん中で出来る話題じゃない。マオも来るの!ローストビーフとチキンの丸焼きは置いてきなさい!
後ろをついてくるコウの声はいつもと違ってハリがない。
「……王妃、改めて誤解のないようにお願いします。」
「何が?誤解って何さぁー。俺がコウの専属ってホントのことじゃん。」
ああ、どんどん悪い方へ……。
「あ、あのね母様、コウは本当にマオが好きで他の人にとられたくなくて専属にしたんだって。」
「ンフフー。俺ってば愛されてるから!」
「まぁ、そうなの?」
「エヘヘ、コウは優しいしαだから強いし体力もあるし、最高~。」
僕がコウはマオを好きだと言うとマオもコウが良いと話しにのってきた。よしっ、これで好きあってるもの同士なので専属で良いという事で丸く納めよう!はい、もうこの話はおしまい!
「だから今日も美味しいご飯いっぱい食べて体力つけないと!コウ、3回くらいじゃおさまんないし。」
…………。沈黙が辛い。終わらせたかったのに。
「あ、あっちにケーキ来た~。ちょっと行ってくる!」
…………1人だけ離脱とか。爆弾置いて離脱とか。
「…………ノエル?」
「は、母様…あの、マオは~、マオは……考え無しに喋るのね。自分の興味に沿って考えちゃうの。だから……その……。」
僕も逃げたい。爺、助けて。
71
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる