Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

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やって来たアンリ

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 「母上、落ち着きましょう。」

 到着したアンリを見た瞬間、やっぱり手放すのは嫌だ!という思いが強すぎて抱きついて泣いた。しかも「アンリは母様と一緒にいるよね!どこにも行かないよね!」という脅しと共に。
 爺にアンリから離されてソファーに座らされるとそのまま肩を押さえられるという扱いを受けているがまぁいいや。アンリの方から寄ってきてくれて隣に座ってくれる。

「爺からもお手紙がきました。提督から僕に養子のお話があったとか。それで母様はあの手紙だったんですね?」

 そうだよ。安心しなさいアンリ、僕は手放す気は全くありません。一応、お話が来てると教えはしたけどお断りする方向です。

「ええと……母様は提督が仰った“僕の力を発揮する場所”をどうお考えですか?」

 ううぅ……それを言われると辛い。僕としてはアンリはエンジュを補佐して、母様の後でリリーの後見になって、僕の側であちこちに目を配る調整役になって欲しいんだよね。

「……何ですかそのとんでもなく面倒で厄介な役割は。滅茶苦茶じゃないですか。エンジュの補佐というのはエンジュの番を見定めないといけないし、リリーの後見ってことは僕も王族入りになるし、後見するために力も必要になって、その上で母様のお守りですか!?」

 指おってやって欲しいことを伝えるとアンリは “とんでもない”と激しく首を横にふる。1つならともかく面倒なことばかりで果てしなく先の長い役割ばかりだと。

「爺や、何でこんな無茶を母上は言い出したの?前は何も言ってなかったじゃない。」

 さすがにこれは無いよと爺にアンリが聞くといかにも当然といった風に返した。

「言ってなかっただけでノエル様の中では以前から決まってましたよ?リリー様が成人と同時に王族に連なるだろうと覚悟されたあたりからですね。」

「それってリリーの1才のお誕生日前じゃん。」

 アンリは自分の居場所がないといじけて家出した時の事が思い出されて恥ずかしくなった。居場所がないどころか母の中では固定されていたようだ。

「ねぇアンリ、アンリは……どうしたい?」

 不安げに見つめられては答えようがない。いや、答えも何も自分ですら望みがわかってないのだ。

「ノエル様、アンリ様はお話を聞かされたばかりでお考えの整理がついてません。アンリ様にはこの船旅でよく考えていただきましょう。」

 諭すように爺に言われてノエルも頷く。
あらかじめ爺からも手紙を受け取っていなければ船旅の意味もわからずにいただろう。
部屋に戻る為に前を歩く背中を見ながら「常時は優秀なのにどうして時々ポンコツになるかなぁ」と呟いてしまった。そしてその呟きを拾ったカシスはおもいっきり頷いて同意した。

 「滞在中と船旅では私、カシスがアンリ様付きとしてお世話致します。ノエル様もご注意を受けられましたがアンリ様にも海では色々な約束が増えるとご記憶下さい。……すでに提督の船には乗られた事があるので大丈夫ですね?」

 ノエルの部屋に入るとカシスが挨拶に行った。海での約束は前に船でコウから教わっている。今回はノエルが一番の不安要素らしく爺をはじめとしてコウもマオもノエルにかかりきりになるだろうという事だった。
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