Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

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海ぞ……船員の話によると。

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 デジレ様は『南の海に土産物を獲りに行く』という言葉をそのまま受け取り大粒の真珠か珊瑚、はたまた珍しい色鮮やかな鳥か?いや、躾は大変だがピューマなども優美で良いだろう…等とご機嫌だった。
 だが出港して半日ほどたったか時、不意に立ち寄った一般船員用の食堂で狙いは海賊の隠れ家の島だと知ってしまった。

 静かに怒り不機嫌を顕にして提督に断念させようとしたデジレ様だったが実在の島を見た途端『無血開城させるように』との厳命を下した。
 確かにそのつもりで組んでいた船団だったが提督をはじめとした上層部の人間は敵方の上層部は一掃してしまうつもりだった。その方が後日の憂いというものが無いからだ。
 しかしデジレ様は一向に『無血開城』を譲らず、「私の孫娘に穢れた地を踏ませるつもりか?」という言葉で提督を頷かせた。

 3年という長い間スパイとして潜り込んでいた者は当日の事をこう振り返る。
『夜が開けると海は戦艦で埋めら見張りは既に居らず戦意というものは湧く筈も無く短い人生を振り返る者ばかりだった』と。

 そりゃそうだろう。フールフーガの鬼神の旗艦が旧新揃って現れ大砲を向けられていれば戦意喪失も当たり前だ。

 そして潜り込んでいたスパイ達が連絡を受け、密かにだが素早く『上層部を差し出せば捕虜にもせず島からの追放で済む』と噂が流された。下っ端は命も助かるし上手くいけば自分の財産くらいは持ち出せるとふんでたちまちの内に上層部の家族から捕縛し差し出していった。

 初めは上層部の家族は命を奪われるのか、貞操を奪われるのかと慟哭する者もいたがこれからの自分達の扱いを聞かされ希望を見出す者までいたらしい。なぜなら希望者はフールフーガの土地にと選択肢があったからだ。捕虜でも奴隷でも無く移住者…この島で暮らしてはいても海賊でない者にとってこの選択肢は魅力的だったろう。こういう人間の協力により海賊本拠地の門扉は開けられ隠れ場的な場所も探され海賊は1日のうちに全てが取り押さえられた。

 この様子にデジレ様は大変ご満悦になりその日の夜には酒が配られた。デジレ様はその翌日には自身で島を見回り次々に指示を出した。
 何の指示かって?決まってるじゃないか。孫娘に相応しい島にするため、如何わしい店は更地に怪しげな場所は潰し海賊の本拠地の館も取り潰し新しい建物、庭園、花畑へと変えるためだ。実際、艦隊が引き上げる時にはフールフーガ本国から島を綺麗にするための船団が到着し戦い専門の自分達は追い出された。

 フールフーガ本国へ向かう旗艦では始終上機嫌のデジレ様と提督が睦み合っているらしい。
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