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2. 目付きの悪い娘と妖精王

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 自衛のために私も革鎧を着用して剣を差し護衛の強面の冒険者さんたちに囲まれ、ぞろぞろと隊列を組んで歩いていると私まで目付きが悪くなり
 町の人からの評判が悪くなった為、護衛の冒険者さんを女性に変えて貰ったが彼女たちのほうが男性冒険者さんよりも粗暴で
 目が合った町の人にキレて怒鳴ったり殴ったりするし、気に入らない事があると他人の物だろうが公共物だろうが踏み潰したり蹴ったりしてストレスを発散していた
 気が付いて見ると私がひとりで町を歩いていても誰も話しかけないし、変な人やストーカーたちさえ素早く立ち去るようになった。

 そんなこんなで寂しくて家の中から外をぼんやり眺めて、指輪をくれたイマジナリーフレンドの女の子の事を懐かしくて思い出していると誰かが訪ねて来た
 ドアを開けるが誰も居ないのでキョロキョロと捜していたら、下の方から声がしてスカートを引っ張られる
 びっくりして足元を見ると小さな女の子が立って私を見上げていた

 その子が白い封筒を差し出し、それを受け取ると女の子が鋭い目付きで早く読むように促す

「あなたが指輪の姫さまでしょ、妖精王さまからの招待状です」

 慌ててペーパーナイフで封を切り中身を見る

「そのまま使いの者につき従い素直に出頭して妖精王の謁見を受けて表彰されろ、命令に反抗すれば然るべき軍勢を差し向けて成敗致す。 妖精王オリバー」

 これは逮捕状かな?

「乱暴な文面でごめんなさいね、妖精や精霊はバカで雑だから上手く手紙を書けないの、軍勢なんて居ないから冒険者が3人くらい来て嫌味を言うくらいだよ、だから嫌だったら招待状も断ってね」

 私が戸惑っているのを見て、女の子が寄って来て手紙を覗き込み、奇天烈な招待状の文面を見て同情してくれる

「だけど、妖精王はすごくお洒落でイケメンだよ」

 イケメン好きの私はいつもの悪い癖が出て、ついうっかりこの怪しい招待状に応じ行くと言ってしまった
 お使いの女の子に中に入ってもらいお茶とお菓子で接待しながら、あらためて自分の姿を見直すと小汚い冒険者の格好をしたままだった

 急いで可愛いスカートと少しましな細かい花柄のチュニックに着替えたが、途中で女の子から「勝負下着にしてね」と言われ
 箪笥の奥から勝負下着を出して何故に妖精王が下着まで見るのか、疑問に思いながらも勢いで派手なレースのついたスケスケ下着を身に着けてしまった。

 外に出るとカボチャを踏み潰したような不細工な馬車が待っていた、フルフェイスの兜をかぶり金属鎧を着た御者がガシャガシャと降りてきて
 馬車の扉を開け足台を置いて手を差し伸べうやうやしくお辞儀までして私の乗降を助けてくれる
 女の子はひとりでウサギみたいに軽くピョンと跳ねて馬車にのってしまった

 馬車が動き出したがスピード感が無いと思い窓を覗くと垂直に上昇中だった、ガタンと音がするといきなり馬の頭から煙が出て、シュッポシュッポと前に進み始め私は加速度でシートに押し付けられてしまう
 そのままスピードを上げピーと汽笛を鳴らし真っ暗なトンネルに入った、その国境の長いトンネルを抜けるとそこは雪国だった。(川端康成?雪国)

 目的地に着いたのか馬車が下降し気持ちが悪くなる、やっと着地したので外を見ると
 髪の長い女がたくさん歩く北の酒場通りだった(細川たかし?)窓は夜霧に濡れて都すでに遠のく(小林旭の北帰行?)
 かなり北に連れて来られたらしく寂しくて寒くて気分が滅入る
 いつの間にか御者は赤の上下に長靴を履き大きな袋を持ち、馬は角を生やして鹿のマネをしながらシャンシャンと賑やかに鈴を鳴らして進む
 御者が「ホーホー」と言って馬を停め、やっと馬車は目的地に着いた。

(続く)
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