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「レピア、今日はどうだった?」
薬屋から美人なお姉さんルーミアの声が聞こえた。
「あんまり採れませんでした。今、アビーさんのところに食堂で使うハーブを持っていったところです。」
レピアはカゴの中を見せた。
「そう、残念。また、ナンゴビ草見つけたら取ってきてね。今足りなくって。」
「はーい、明日も行こうと思っているので見つけたら持ってきますね!」
レピアはルーミアに向かいニッコリと笑う。
そのまま早足で街を抜けた。
「あの子初めて見たわ。どこの子?」
薬屋の中にルーミアの幼馴染が訪ねてきていた。
「あぁ、レピアって言ってね。ほら、町外れにある家に住んでるのよ。数ヶ月前に越してきたみたい。」
「へぇ、こんな街に来るなんて珍しいわね。」
「お姉さんと一緒よ。他に家族はいないようだし、訳ありみたい。」
ルーミアはレピアと知り合ってそれほど経っていないが、女二人で生きていくのは大変だと心配していた。
「そうなんだ。」
「そうなの。だからあなたもレピアを見守ってあげてね。」
そうやって街の皆はレピアを見守っていた。
レピアが何をした少女なのかを知らずに…
「おかえりなさいませ、レピア様」
レピアが家に入るとノアが深々と頭を下げた。
「ノア、もういい加減に今の状況に慣れて!あなたは私の姉よ、敬称も敬語もお辞儀も全ておかしいでしょう?」
レピアはもう数ヶ月ノアに言い続けている。
「そういう訳には参りません。あなたは唯一の聖女様なのですから。」
「元でしょう…もう私には何の力もないわ。」
レピアの表情が曇る。
「あなたのせいではありません!あのアールが全て悪いのに、どうしてレピア様が苦しまなければならないのですか?」
ノアから強い殺気がでたが、レピアに睨まれ怒りを抑えた。
「申し訳ありません…」
「何度も言うけど、アールを悪く言わないで。私が全て悪いのよ…力を失ったのも私が愚かだったから。皆に申し訳ないわ。」
レピアの感情を殺したような表情にノアは青ざめた。
アールを失いレピアは感情を失った。
人形のように何も映さない瞳。
やっとここまで戻ってくださったのに、私は…ノアは付けていたエプロンをギュッと握った。
「レピア様…お茶でも入れましょう。さあ、座っていてください。」
ノアは椅子を引き、レピアを呼んだ。
「ええ、ありがとう。ノア…」
そう言って微笑むレピアを見てノアは胸が苦しくなった。
いつになったら前のように笑ってくださるのかしら?
早く早くアールの事は忘れて元のレピア様に戻ってください。
ノアは毎日そう祈っていた。
こんな街にいるからレピア様はアールを忘れられない事もわかっている。
そうわかっているが、感情を失ったレピアの唯一の望みであり、ノアも強くは言えなかった。
お茶を入れにキッチンに立つノアはダンと机を叩く。
「レピア様を裏切ったくせに、死んでからもレピア様を苦しめるなんてどこまで最低な男なの…」
ボソリとノアは呟いた。
アールとレピア様の仲慎ましい様子を思い出し余計にイラつきを増していた。
フゥと深呼吸し、怒りを鎮めた。
私がアールに対して怒りを向ける事をレピア様はすごく悲しむから。
「レピア様、お茶をお持ちしました。今日はレピア様のお好きなマーティラン花のお茶ですよ。」
座っているレピアの前にお茶が出される。
マーティラン花のお茶は香りが良くあまり取れないとても高級なものだった。
平民ならまず口にする事ができない。
「いい香りね。ありがとう。」
そう言って微笑むも感情など見えない。
レピアは香りを堪能してティーカップに口をつけた。
レピア様の調子がもう少し良くなれば、神殿に戻ってもらおうとノアは思っている。
ずっと神殿で育てられたお姫様のレピア。
このお茶の価値すら知らないだろう。
平民としてずっと生きていくなんて不可能だとノアは思っている。
今だってレピアの周りには多くの護衛が付いている。
国にとっても重要人物なのだ。
こんなところでいつまでのいるお方じゃない。
静かにマーティラン花のお茶を飲むレピアを見ながらノアは早くアールの事を忘れてくれるように祈った。
薬屋から美人なお姉さんルーミアの声が聞こえた。
「あんまり採れませんでした。今、アビーさんのところに食堂で使うハーブを持っていったところです。」
レピアはカゴの中を見せた。
「そう、残念。また、ナンゴビ草見つけたら取ってきてね。今足りなくって。」
「はーい、明日も行こうと思っているので見つけたら持ってきますね!」
レピアはルーミアに向かいニッコリと笑う。
そのまま早足で街を抜けた。
「あの子初めて見たわ。どこの子?」
薬屋の中にルーミアの幼馴染が訪ねてきていた。
「あぁ、レピアって言ってね。ほら、町外れにある家に住んでるのよ。数ヶ月前に越してきたみたい。」
「へぇ、こんな街に来るなんて珍しいわね。」
「お姉さんと一緒よ。他に家族はいないようだし、訳ありみたい。」
ルーミアはレピアと知り合ってそれほど経っていないが、女二人で生きていくのは大変だと心配していた。
「そうなんだ。」
「そうなの。だからあなたもレピアを見守ってあげてね。」
そうやって街の皆はレピアを見守っていた。
レピアが何をした少女なのかを知らずに…
「おかえりなさいませ、レピア様」
レピアが家に入るとノアが深々と頭を下げた。
「ノア、もういい加減に今の状況に慣れて!あなたは私の姉よ、敬称も敬語もお辞儀も全ておかしいでしょう?」
レピアはもう数ヶ月ノアに言い続けている。
「そういう訳には参りません。あなたは唯一の聖女様なのですから。」
「元でしょう…もう私には何の力もないわ。」
レピアの表情が曇る。
「あなたのせいではありません!あのアールが全て悪いのに、どうしてレピア様が苦しまなければならないのですか?」
ノアから強い殺気がでたが、レピアに睨まれ怒りを抑えた。
「申し訳ありません…」
「何度も言うけど、アールを悪く言わないで。私が全て悪いのよ…力を失ったのも私が愚かだったから。皆に申し訳ないわ。」
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アールを失いレピアは感情を失った。
人形のように何も映さない瞳。
やっとここまで戻ってくださったのに、私は…ノアは付けていたエプロンをギュッと握った。
「レピア様…お茶でも入れましょう。さあ、座っていてください。」
ノアは椅子を引き、レピアを呼んだ。
「ええ、ありがとう。ノア…」
そう言って微笑むレピアを見てノアは胸が苦しくなった。
いつになったら前のように笑ってくださるのかしら?
早く早くアールの事は忘れて元のレピア様に戻ってください。
ノアは毎日そう祈っていた。
こんな街にいるからレピア様はアールを忘れられない事もわかっている。
そうわかっているが、感情を失ったレピアの唯一の望みであり、ノアも強くは言えなかった。
お茶を入れにキッチンに立つノアはダンと机を叩く。
「レピア様を裏切ったくせに、死んでからもレピア様を苦しめるなんてどこまで最低な男なの…」
ボソリとノアは呟いた。
アールとレピア様の仲慎ましい様子を思い出し余計にイラつきを増していた。
フゥと深呼吸し、怒りを鎮めた。
私がアールに対して怒りを向ける事をレピア様はすごく悲しむから。
「レピア様、お茶をお持ちしました。今日はレピア様のお好きなマーティラン花のお茶ですよ。」
座っているレピアの前にお茶が出される。
マーティラン花のお茶は香りが良くあまり取れないとても高級なものだった。
平民ならまず口にする事ができない。
「いい香りね。ありがとう。」
そう言って微笑むも感情など見えない。
レピアは香りを堪能してティーカップに口をつけた。
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このお茶の価値すら知らないだろう。
平民としてずっと生きていくなんて不可能だとノアは思っている。
今だってレピアの周りには多くの護衛が付いている。
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