【完結】闇落ちした聖女候補は神様に溺愛される

みやちゃん

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第3章

種明かし

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「ヴォルティス様!しっかりしてください!」
何度声をかけても目覚めないヴォルティス様を前に焦りながら叫ぶ。
「リーナ?夢か?名を呼んでもらうという望みが叶ったのだな。」
神様はゆっくりと目を開けて笑う。
真っ白な空間にヴォルティス様は倒れており、私が抱きかかえていた。

「夢じゃありません。本物ですよ!」
温もりを伝えたくて抱きしめる。神様では反応しなかったので、本人が呼んでほしいという名前呼びをしてみたのだ。
成功だった様だ。

「結ばれてから初めて名前を呼んでくれたな‥愛している。次は愛称と口づけだな。」
ヴォルティス様は私に気づいてギュッと抱きしめ返してきた。そのまま手を伸ばし私の頭を抑え口づけをした。唇を合わせるだけの口づけから段々と深いものに変わっていく。

息もかなり苦しくて恥ずかしいが、頭を抑えているヴォルティス様の手が震えているのを感じると止める事はできなかった。

あまりの酸欠で苦しくなり、ヴォルティス様を離し息を吸った。

「ヴォルティス、初めての相手には優しくだろ?」
ルキアがクスクス笑いながら注意する。

ルキアの横にはマークバルダ様とノルアが気まずそうに立っている。
今の様子を見られていたのに気づいて恥ずかしさが込み上げてくる。

ヴォルティス様はルキアを認識すると私を胸の中に押し隠し、ルキアを睨みつけている。
ルキアは大丈夫って言ってたけど、ヴォルティス様の左腕を吹っ飛ばしたのだ、私だって完全には信用はできない。

「どこだ、ここは?」
ヴォルティス様は低い声でルキアに問いかける。

ルキアはフゥとため息をついた。
「すっかり警戒されたようだ。ここは私が創り出した空間だよ。お前たちを招待したんだ。」

「‥なぜ?」
ヴォルティス様は私を抱きしめたまま、さらに力が入る。

「そうだな、私も子がかわいいと思ったからかな?手がかかるほど愛おしいものだ。」
ルキアはニカッと笑う。

「ヴォルティス様、ルキアは敵ではないと思います。今回の件はヴォルティス様の為に行った芝居だそうですよ。」
私もルキアに助け舟を出す。ヴォルティス様は完全にルキアを警戒している。スムーズに話に進まない可能性が高いと思った。

「芝居?」
ヴォルティス様は首をかしげる。

ルキアはわざとらしく「そうそう」と言いながらうなずいている。
「本当に大変だった。おまえは真面目すぎるんだよ。」

「真面目?」

「そう、真面目すぎ。私の言葉に囚われて自分を追い詰めて自分に呪いをかけるなんて愚かとしか言いようがないな。」
愚かといいながらヴォルティス様を見つめるルキアの眼差しは優しい。
ルキアはヴォルティス様の事を本当に助けたいと思っていたのだとわかる。

「呪い?自分でかけた?」
ヴォルティス様はルキアの言葉を復唱する。
意味がわからないのだろう。

「そう、呪いだ。その呪縛からお前を解き放つ為にはお前は私に反抗しなければならなかった。私を主としてみている以上、私の言葉に囚われてしまうからな。」

ルキアはフゥとため息をつく。

「まぁ、お前ばかりを責めるわけにはいかないがな。」
ルキアは苦笑いをする。

ヴォルティス様はまだ理解していない様子でルキアを見つめている。

「覚えているか?お前は永遠の孤独がどれだけ辛いのかわからないだろう。それはお前への罰だという言葉。」

「それは‥」
ヴォルティス様は苦しそうに顔を歪めた。

「そう、私がお前にいった言葉だ。あの時、お前は私の許可なく人を創って世界を滅亡しかけた。そして、私に尻拭いをさせ、挙句に地の底深くに落とした罪悪感でいっぱいだったのだろう?私のその言葉を無意識に命令だととった。」

「‥‥」

「わかるか?お前は自分で自分を孤独にさせた。聖女を持つ事ができなかったのはお前が自分を許せなかったから‥自分は罰を受けて苦しむべきだと思っていたから。」

ヴォルティス様はルキアの言いたい事を理解したのだろう。ハッとした顔をして「まさか、そんな事が‥」と小さく呟いた。

「お前がその呪いから解放されるには私の命令に逆らう必要があった。だが、お前に私の命令に逆らえと言ったところで無理だろう?」

ルキアはヴォルティス様からマークバルダ様の方に向きを変えた。
「主従関係はあっても全部命令を聞く必要はない。マークバルダなどいつもヴォルティスに反発していたよな?」
笑いながらルキアはマークバルダ様に言う。

「反発などしてません!お止めしただけです。」
マークバルダ様もムキになって反論する。

「そう、主が間違えば主の為に正そうとする、それも主従の信頼関係の上に成り立つ。だが、ヴォルティスにはそうできない。私に負い目があるからな。」

ルキアはヴォルティス様に近づき、頭をクシュクシュと撫でる。

「本当に手がかかる子だ。」

「そうなら何故あの時そんな事を言ったの?言わなければヴォルティス様は苦しまなくてもよかったのに。」
私もボソリとつぶやく。
ヴォルティス様が自分に呪いをかけるくらいに苦しんだんだ。ちょっとくらい文句を言ってもいいだろう。

「リーナ!」
ヴォルティス様に止められる。
ルキアに向かい面と向かって文句を言う者などいなかったのもあり、ヴォルティスは動揺した。

「まぁ、私も軽率だった。だがな、言い訳するとあの時のヴォルティスは本当にやばかったんだ‥」
リーナに文句を言われルキアは困ったような顔をした。

ルキアはリーナの発言に不愉快さを出さない。それどころか自分の非を認めている。今までのルキアならそんな事は許していないはずだ。
リーナと主従関係にあるためか、それとも名付けによる深い絆のためか‥
前者であってほしいと願うヴォルティスだった。

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