終わる恋と知っていても

早桃 氷魚(さもも ひお)

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第6話 ワガママ

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首を振って必死に叫ぶと、速水さんは動きを止めてくれたけど。
ちょっと怒った顔で、僕を睨むように見つめてくる。
「詩季、」
「……ごめん、なさいッ」
じわりと涙が滲んでくる。
速水さんを怒らせてしまった。
僕がワガママ言ったから……。
「ごめんなさい……速水さんっ」
「詩季。泣かないで」
眦からこぼれ落ちた涙を、速水さんが指で掬ってくれる。
優しく頭を撫でてくれた。
「ねえ詩季。どうしてバックじゃないとイヤなの?」
速水さんの澄んだ瞳に見つめられる。
もう、これ以上は誤魔化せない。
本当のことを言ったら、速水さんは怒るかもしれない。
僕がガマンすればいいだけの話だから、呆れてしまうかもしれない。
でも黙ったままで速水さんに嫌われるのは、もっとイヤ。
「だって……このまましたら、速水さんの背中、……引っかいちゃうから」
「え?」
「僕……してるとき、ガマンできないから。……速水さんの背中に傷つけちゃったら、速水さんが事務所の人に怒られちゃうでしょ?」
「……」
「速水さんに、迷惑かけたくないから……」
バックだったら、速水さんに縋らなくて済む。
顔が見えないのは寂しいけど、速水さんに迷惑をかけるよりはマシだ。
「だから、バックで……」
「詩季」
速水さんが、固い声で僕を呼ぶ。
やっぱり、怒らせちゃった。
どうしよう……。
怖くなって目を瞑ったら、唇にキスされた。
そのまま深い口づけを交わして、放っておかれた熱がまた温度を上げる。
「詩季、今日はこのまましよ」
「え……」
「引っかいてもいいから。ガマンしないで」
「でも……ぁっ……アアッ」
すぐに速水さんが入ってきて、逃げる間もなく喘がされる。
「ひぁ……んぁっ、……はやみ、さ……ッ!」
「詩季、好きだよ」
「あああぁぁッ!!」
奥を突かれると甲高い嬌声を上げてしまう。
いけないって思うのに、速水さんが動くたびに何も考えられなくなって、夢中で速水さんに縋りついた。
「詩季……詩季、好きっ」
「っ……はやみさ……んッ……ぁっ……すき」
速水さんの首にぎゅうっと抱きついて、キスをねだる。
「すき……はやみさんっ、……すき」
速水さんの熱を感じながらキスをするのは、蕩けるほど気持ちいい。
夢みたいに幸せで、ずっと涙が止まらなかった。



◆ 速水 ◆



せっかく明日はオフなのに、詩季に連絡したら、今日は夜勤だから会えないって返事がきてがっかりした。
まあ、オフになったのは急だったし、仕方ないよな。
「はあ……」
「景ちゃん、どうしたの? ため息なんかついて。あ、何飲む?」
向かいに座った綿矢さんが、ニコニコしながら尋ねてきた。
俺達がよく出演させてもらう歌番組の司会者で、フリーのアナウンサーだ。すごく可愛い顔をしているけど、中身はサバサバしている。
「あ、俺はビールで」
「景ちゃんはビールね。竜樹は?」
「オレもビール!!」
「オッケー」
綿矢さんは、に着いてからずっと、ドリンクや料理を注文したり、小皿に取り分けたり、てきぱきと動いている。
彼女は生粋のお世話好きで、手際がいい。余計な口を挟まずに任せるのが一番だ。
「このお店、おいしいのよ~」
「へえ。楽しみ」
俺は初めて入った鉄板焼きのお店だけど、カウンター席ではなく奥にある半個室の席だから、人目を気にせず気軽に食事ができる。
「景ちゃん、はいサイコロステーキ」
「ありがとう」
小皿に盛られた牛肉の塊をつつきながら、この場に来て良かったのかと今さら思った。
今日は、たっちゃんが綿矢さんとメシの約束をしていたらしい。俺もちょうど上がりだったから、たっちゃんが誘ってくれたんだ。
断ろうと思ったけど、詩季に会えなくて落ち込んでいたから、ノコノコとついてきてしまった。
たっちゃんと綿矢さんは馬が合うのか、端から見ても、すごく仲が良い。
付き合ってるのかな?と思うけど、恋人というよりメシ友って感じなんだよな。
綿矢さんは、翌朝に仕事が入っているので、遅くまでは飲まないと宣言していた。
「それでね、ワタちゃん。どうすればいいと思う!?」
「えっ? 竜樹、まだその話してたの?」
「そうだよ! ワタちゃんってば、はくじょー!」
「それ、竜樹のお友達の話でしょ? そんなの、当人同士で話し合ったりして、解決するしかないんじゃないの?」
「だーかーらー! それができたら、はじめからワタちゃんに相談してないし!」
「そんなこと言われてもねぇ」
綿矢さんは、困った顔でグラスに口を付ける。
そういや、何か話してたっけ?
たっちゃんが一方的に話してる感じだったけど。
「友達が、どうかしたの?」
「景! 景も聞いてよ!」
「うん?」
「オレの友達がね、悪い女にだまされてるのっ!」
「はあ……?」
聞き慣れない言葉に、首を傾げる。
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