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第7話 音信不通
しおりを挟むたっちゃんの友達が、だまされてるって?
「それ、竜樹の思い込みでしょ? 勝手に決めつけるのは良くないわよ?」
「なんで!? 夜中でも仕事中でも、連絡してくるんだよ!」
「どんな時でも、会いたいって思ったら連絡するの、普通じゃない?」
「ちょっとは遠慮するだろ! だいたい、すぐに会いに行っちゃうから、相手がつけあがるんだよ!」
「も~、竜樹、声が大きいわよ」
「だって! ……だって、ぜんぶ相手の都合に振り回されてさ……ドタキャンされたって、文句の一つも言わないんだよ」
「竜樹……」
「会えなくなったら、悲しいじゃん……それでもいいって言うけど、良いわけない。ムリしてるよ」
たっちゃんが、悲しそうにうつむいた。
本当に、心を痛めてるのが分かる。
たっちゃんは誰にでも優しいけど、よっぽどその友達が大事なんだろう。
「竜樹が心配する気持ちは分かるけど、他人がどうこう言える問題じゃないわよ」
「ワタちゃん……そんな役に立たないこと聞きたいんじゃないし!」
「まあ、ひどい言い草ね」
「景は? 口出ししないほうが、いいと思う?」
「うーん……よく分かんねーけど、たっちゃんがそんなに心配してるってことは、ちゃんと友達に伝えた方がいいんじゃないのか?」
「……言っても、聞いてくれなかったんだよね」
がっくりと肩を落として、たっちゃんがテーブルにつっぷした。
「オレ、バカだからさ。もっとちゃんとしてたら……」
「たっちゃんは、今のまんまでいいと思うよ」
「景! やさしーね!」
そういうたっちゃんの方が、ずっと優しいと思う。
俺は、友達のためにここまで熱くなれない。
「景ちゃん、食べてる?」
「食べてるよ~」
「竜樹も、ほら」
「……たべる!」
やっと、たっちゃんが笑顔でうなずく。
三人でお酒を飲んでご飯を食べながら、久しぶりに楽しい時間を過ごした。
メールがきたのは、一時間くらい経ってからだった。
「あ……俺、そろそろ帰らなくちゃ」
「ええー! 景、もうかえっちゃうの?」
「ごめんな~」
「私も朝早いから、もう少ししたら帰るよ」
「ワタちゃんも!?」
「竜樹も、早く帰ってゆっくりしなさいよ」
「うーん……」
まだ飲み足りないみたいだったけど、俺は二人に断って先に店を出た。
それから、スマホを取りだして電話を掛ける。
「もしもし~」
『あら? もうお仕事は終わったんですか?』
「ん。さっきね」
『よかったぁ。ねえ、今から来れるでしょ?』
「もう終わりじゃないの?」
『まだですよ。景さんに会いたくて、楽しみにしてたんだから』
「もしかして、待っててくれたの? 悪いことしたなぁ」
『ふふ。じゃあ、早く来てね』
甘い声を響かせながら、電話が切れる。
うきうきしながらスマホをポケットにしまい込み、タクシーを拾って目的地に向かった。
◆ 詩季 ◆
スマホの画面を起動させては、見慣れた待ち受け画面を眺めてすぐにオフにする。
メールも着信も、入っていない。
それを確認する度に、ため息が漏れた。
「速水さん、忙しいのかな……」
最近、速水さんから連絡がこなくなった。
ドラマとかで忙しい時は、ほとんど連絡ないけど……速水さんは仕事のことはあまり話さないから、何も分からないままだ。
最後に連絡が来たのは、二週間くらい前。
せっかく速水さんが「会いたい」って言ってくれたのに、ちょうどその日は夜勤で、速水さんには会えなかった。
それからずっと、メールの一つもない。
だから、不安になる。
僕が断ったから、怒ってるのかな。
そんな風に考えて落ち込んで、速水さんのことを想うだけで涙が出てくることもあった。
速水さんに会いたくて仕方なくて。
何度も連絡しようとして、ためらって、諦める。
「僕からは、電話もメールもしないって決めただろ?」
そう自分に言い聞かせた。
速水さんと付き合う時に、自分で決めたルールだ。
速水さんが会いたいって思ってくれた時に会えたら、それで良い。
僕から「会いたい」なんて言ったら、速水さんに迷惑をかけてしまう。
だから、どんなに会いたくても我慢する。
僕は、速水さんの恋人なわけじゃないから。
「速水さん……」
どうして、連絡くれないの?
そう言えたらいいのに。
言葉の代わりにため息ばかり漏れた。
その日も、次の日も。
一週間経っても、速水さんからの連絡はなかった。
こんなにも長い間、速水さんから連絡がないのは初めてだった。
もしかしたら、もう終わりなのかな……。
そう考えると、すごく怖くなった。
連絡が来ない理由を考え出すと、悪い想像ばかりしてしまう。
その度に、仕事で忙しいんだろうって無理やり思い込んだ。
そうしなければ、不安に押しつぶされそうだったから。
だけど……。
現実を思い知らされるのは、いつだって唐突だ。
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