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第13話 バレた
しおりを挟む速水さんが、何度も「好きだよ」って囁いてくれたから。
今だけは、許されるような気がしたんだ。
一生、貴方の側にいたい。
叶うはずのない夢を、心から神様に願った。
ねえ速水さん。
もし、僕が貴方の隣に立つのに相応しい人間だったら。
いつかは、速水さんの一番になれたのかな。
+ + +
騒がしい物音がして、目が覚めた。
カーテンの向こうは明るいから、とっくに朝は過ぎてるらしい。
「速水さん……?」
一緒に眠ったはずなのに、ベッドには僕一人だけ。
もう帰っちゃったのかな……。
少し悲しくなったけど、玄関の方から騒がしい声が聞こえてきて、ゆっくりと体を起こした。
「っ……ぅ」
腰に響く痛みに、眉をしかめる。
久しぶりだったせいか、一回しかしなかったのに痛みが酷い。
体もすごくだるくて、起き上がるのも辛いけど。
速水さんが優しく抱いてくれたことを思い出すと、嬉しくて頬が緩む。
ベッドから降りると、また玄関から人の言い争う声が聞こえてきた。
速水さんかな?
でも、誰と話してるんだろ。
気になって、痛む腰を気遣いながら、体を引きずるようにして玄関へ向かう。
「だから! どういうつもりかって、聞いてんだよ!!」
玄関に辿り着く前に聞こえたのは、激しい怒声だった。
「……たっちゃん?」
いつもニコニコしてて、怒ることなんて滅多にないのに。
珍しく、怒りを露わにして速水さんに怒鳴りつけてる。
なんで、たっちゃんが、ここに?
疑問に思ったのは一瞬だけで、すぐにハッと気づく。
たっちゃんにバレたんだ!
僕の相手が、速水さんだってこと。
もっと僕が早く起きていれば、速水さんに気づかれる前に、たっちゃんを追い返せたのに!
たっちゃんは強引だから、速水さんは問い詰められて、僕との関係を話してしまったんだろう。
ずっと隠してたのに……。
後悔しても今さら遅い。
二人は彗星のメンバーなのに、僕の所為で嫌な思いをさせてしまうなんて……本当に馬鹿だ。
今からでも何とか誤魔化せないかと思ったけど、聞こえてくる会話から、たっちゃんに全部バレてるって分かって、冷や汗が出た。
どうしようと一人焦っていると、たっちゃんの声が聞こえてくる。
「シキがどんな気持ちだったか、分かってんのかよ!?」
「……」
「いつも、景の都合に振り回されて! 会いたいって、そんなひと言すら言えなくて、一人で泣く気持ちが、景に分かんのか!?」
「……分かってる」
「分かってねぇだろ! じゃあ、なんでシキはいつも悲しい顔してんの? なんで泣いてんの!?」
「……」
「黙ってないで答えろ! なんでシキだけ傷つかなくちゃいけねぇだよッ!!」
「たっちゃんっ!」
気がついたら、大声で叫んでた。
「シキ?」
「詩季?」
振り返った二人の間に入って、たっちゃんを睨みつける。
たっちゃんの肩を両手でぐっと押すけど、びくともしない。
「帰って!」
「オレは帰んないよ、シキ」
「いいから、帰れってば!」
「ダメだよ。オレは景と話してんの」
「僕の話なら、たっちゃんには関係ないっ!」
「関係あるよ。オレはシキの味方だから」
「そう言うなら、帰ってよ!!」
思いきりたっちゃんの肩を押そうとしても、力が入らなくて逆にふらついてしまう。
「ッ……余計なことしないでよ」
このままじゃ、速水さんに嫌われてしまう。
面倒くさい奴だって……もう二度と、会いに来てくれないかもしれない。
それが怖くてたっちゃんを追い出そうとしたのに。
「っ……なに?」
たっちゃんに、ギュッと抱きしめられる。
「ちょ、何してんの!?」
「こんな痩せて……まともに食事してなかったんだろ?」
たっちゃんの悲しそうな声に、首を振った。
「離せってば!」
必死に抵抗してみるけど、たっちゃんの腕から抜け出せない。
もがいていると、後ろから鋭い声がした。
「竜樹! 詩季が嫌がってるだろ?」
すると、たっちゃんが僕から手を離す。
「詩季っ」
「ぇっ?」
気がつくと、速水さんに引き寄せられ、正面からしっかりと抱きしめられていた。
「それで……シキをこんな目に遭わせて、どう詫びるつもりなんだよ?」
そう言ったたっちゃんは、すごく怒っていた。
「た、たっちゃん? あの、」
「シキは黙ってて」
冷たい声で、そんなことを言われたのも初めてだった。
どうしていいのか分からずに、唇を噛む。
早く追い返そうと思ったけど、言葉が出ない。
速水さんに、あんなのは嘘だって、言いたかったのに。
……もしかしたら、速水さんの本心が聞けるかもしれないって思ってしまったから。
そんな浅ましいことを考えてる自分が嫌で、醜い顔を見られないように俯いた。
「景。シキのこと本気じゃないなら、今すぐ別れろ」
たっちゃんの声に、ビクッと肩が跳ねた。
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