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野バラが王宮にきた理由 6
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文句は言いつつも各家を回って家探しをしたイルミネはほくほく顔で荷物をかついで帰ることになった。屋敷に帰ると、「しばらく研究のためにこもるよ!あ、君のことは僕の実家によろしく頼んでおいたから!」という不穏な言葉を残し、彼はいそいそと部屋にこもった。
「実家によろしくって言っていたけど……なにをよろしく頼んだのかしら」
不愉快な様子を隠すことなく顔をゆがめる野バラにスアラは苦笑しつつも心配そうな顔になった。
「確かにあのお方の御実家は……そういえば野バラ様はどういったお家かご存じですか?」
「そう言えば聞いてないわ、身分が高いとは言っていたけど」
「まったく研究に夢中で忘れておられますね。あの方の御実家は公爵家でいらっしゃいまして」
「公爵……この前王族の次に身分が高い貴族だって聞いたけど」
嫌なことを聞いたと言わんばかりに苦い声をだし、野バラは溜息をついた。
「公爵家っていうのは、みんなイルミネみたいな感じなの?」
「いえ、それがその」
「ああ、わたしを同じ人間とは思わない人たちかもしれないのね」
「イルミネ様はあまりご家族の気性を理解されていないのです」
スアラは申し訳なさそうにつぶやくが、野バラは先が思いやられた。
(最悪奥の手使って逃げ出せるとは思うけど……ていうか今からでも逃げ出すべき?)
そう考えるが、この快適な生活は野バラをとりこにしていた。お菓子も花も、ベッドも風呂も、勉強もマッサージも、ここをでていったら何もかも手に入らない。
耐えがたいとでもいうようにううーんとうなって腕組みをしゆらゆらと体を揺らす。
「とりあえず、何があってもいいようにスアラが近くにいてくれることを条件にしなきゃ。これはイルミネに許可を得ないとね」
「そうですね、わたしも野バラ様から離れるのは心配ですから」
そしてこの時の判断は間違っていなかったことが、本家から派遣されたという人々の登場によってわかることになるのだった。
ある日、野バラがいつものように東屋でお茶を飲みながら庭でとれた花を食べていると、正門のほうから何やら騒がしい声が聞こえてきた。なにかあったのかとしばらくそちらのほうを見ていると、速足でやってくる騎士のような人々と偉そうな侍女が1人、スアラがそれを追いかけているようだった。
「侍女長、このように突然いらっしゃっては野バラ様も驚きに」
「なにが野バラ様ですか、喰花族などどんな者たちかわかったものではないでしょう。ぼっちゃんのお遊びに付き合う必要はありません!」
強烈な声音でスアラを叱責して東屋までやってきた彼らは、野バラの姿をみて驚いたように息を飲んだ。
今日の野バラは緑髪をゆるく編んでとりどりの花をかざり、クリーム色のドレスを身にまとっている。誰もが見たことのないその髪色とまるで王女のような気品が漂う彼女に戸惑ったようだ。
野バラは挨拶をすることもなくそちらを見やって、フォークでバラをさしてしゃくしゃくと食べる。それをまた唖然と見ていた女は、はっと我に返った。
「ぼっちゃんから要請があって小娘を拾ったから躾てくれと頼まれ参ってみれば、このような異物を公爵家の別荘地に招き入れたとは……!」
(めんどうなのきたなぁ)
真っ赤な形相で怒りをあらわにする女に、野バラはとりあえず食事はすまそうと言葉を発することなく食べ続けるのだった。
「実家によろしくって言っていたけど……なにをよろしく頼んだのかしら」
不愉快な様子を隠すことなく顔をゆがめる野バラにスアラは苦笑しつつも心配そうな顔になった。
「確かにあのお方の御実家は……そういえば野バラ様はどういったお家かご存じですか?」
「そう言えば聞いてないわ、身分が高いとは言っていたけど」
「まったく研究に夢中で忘れておられますね。あの方の御実家は公爵家でいらっしゃいまして」
「公爵……この前王族の次に身分が高い貴族だって聞いたけど」
嫌なことを聞いたと言わんばかりに苦い声をだし、野バラは溜息をついた。
「公爵家っていうのは、みんなイルミネみたいな感じなの?」
「いえ、それがその」
「ああ、わたしを同じ人間とは思わない人たちかもしれないのね」
「イルミネ様はあまりご家族の気性を理解されていないのです」
スアラは申し訳なさそうにつぶやくが、野バラは先が思いやられた。
(最悪奥の手使って逃げ出せるとは思うけど……ていうか今からでも逃げ出すべき?)
そう考えるが、この快適な生活は野バラをとりこにしていた。お菓子も花も、ベッドも風呂も、勉強もマッサージも、ここをでていったら何もかも手に入らない。
耐えがたいとでもいうようにううーんとうなって腕組みをしゆらゆらと体を揺らす。
「とりあえず、何があってもいいようにスアラが近くにいてくれることを条件にしなきゃ。これはイルミネに許可を得ないとね」
「そうですね、わたしも野バラ様から離れるのは心配ですから」
そしてこの時の判断は間違っていなかったことが、本家から派遣されたという人々の登場によってわかることになるのだった。
ある日、野バラがいつものように東屋でお茶を飲みながら庭でとれた花を食べていると、正門のほうから何やら騒がしい声が聞こえてきた。なにかあったのかとしばらくそちらのほうを見ていると、速足でやってくる騎士のような人々と偉そうな侍女が1人、スアラがそれを追いかけているようだった。
「侍女長、このように突然いらっしゃっては野バラ様も驚きに」
「なにが野バラ様ですか、喰花族などどんな者たちかわかったものではないでしょう。ぼっちゃんのお遊びに付き合う必要はありません!」
強烈な声音でスアラを叱責して東屋までやってきた彼らは、野バラの姿をみて驚いたように息を飲んだ。
今日の野バラは緑髪をゆるく編んでとりどりの花をかざり、クリーム色のドレスを身にまとっている。誰もが見たことのないその髪色とまるで王女のような気品が漂う彼女に戸惑ったようだ。
野バラは挨拶をすることもなくそちらを見やって、フォークでバラをさしてしゃくしゃくと食べる。それをまた唖然と見ていた女は、はっと我に返った。
「ぼっちゃんから要請があって小娘を拾ったから躾てくれと頼まれ参ってみれば、このような異物を公爵家の別荘地に招き入れたとは……!」
(めんどうなのきたなぁ)
真っ赤な形相で怒りをあらわにする女に、野バラはとりあえず食事はすまそうと言葉を発することなく食べ続けるのだった。
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