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野バラが王宮にきた理由 7
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「お前!いつまで食事をしているのです⁉は、花を食べるなど汚らわしい」
「まあ、肉を食べるのは汚らわしくないと言うの?あなたたち、生き物を殺して死体を食べているのでしょう?」
「な、なんですって⁉」
これ見よがしにバラを食べながら野バラが軽口をたたくと、その女は顔を真っ赤にして怒りをあらわにした。
「だいたいわたしは躾なんて頼んでないし、そんなことされるくらいなら出ていくつもりなんだけど?」
「栄えある公爵家に招かれておいて、なんと恩知らずな!いいですか、頼まれたからにはわたしがあなたの面倒を見させていただきますからね」
女は意地でも野バラを叩きなおすと決意してるのか鼻息荒く伝える。
「わたしは公爵家侍女長のサブリナ・リリス、これよりあなたはわたしが預かり貴族界にでても大丈夫なように教育を施します」
(貴族界に出る気なんかさらさらないんだけど)
本当に、いったいイルミネは何を言ったのだろうと野バラは溜息をついた。
ぞろぞろとやってきた公爵家の本家御一行は荷物を次々と運び込んだ。イルミネは自分の研究のために大量の物資を依頼していたようでほくほくとした顔でいたが、サブリナを見るとぱっと顔を輝かせた。
「サブリナ!来てくれてありがとう」
「ぼっちゃんたってのご依頼ですもの、このサブリナ身を粉にしてお勤めする所存ですわ」
イルミネの前では野バラを罵ったことなどなにもなかったかのように、サブリナは「ほほほ」と朗らかな笑顔で答えていた。イルミネはすっかり信じ切っているようで、
「さすが、サブリナだったら野バラの面倒を良くみてくれると思ってたんだ。彼女は希少な部族でね、一緒に陛下へご挨拶をしたいし王宮の研究室にも行きたいんだよね」
「おまかせください、誰もが惚れ惚れするような素晴らしいご令嬢に、このわたしが仕立ててみせます」
「やっぱり君なら安心できるね!よろしく頼むよ」
(わたしはそんな話を欠片も聞いたことがないんだけど?)
腕組みをして不愉快げにその様子を見つめていると、気づいたイルミネはまるで悪気なさそうにサブリナを連れて野バラの元にやってきた。
「野バラ、彼女はサブリナと言って君のマナー教育をお願いしたから。これで王宮にも行けるようになるよ」
「はじめまして、野バラ様」
当然のように初対面の振りをするサブリナを野バラは鼻で笑ってやった。しかしさすが公爵家の侍女長ともなれば本家の人間の前でボロは出さないのか表情を変えようとはしなかった。まあ目に力が入っているのは見て取れたのだが。
(やっぱりぼっちゃんはぼっちゃんね、こちらのことなど何も考えずに自分のやりたいことを決めるし)
野バラは二人を無視してどうしようかと指を頬にあてた。
(これ以上窮屈な思いをする必要もないのだけど……わたしの人生がこんなことになったやつら全員に仕返ししてもいいんじゃないかしら。最高の三食昼寝付き、ただ小うるさい奴と勉強が増えるくらいか、うーん)
「ちょっとあなた、ぼっちゃんを無視するなど」
「まあいいでしょう」
「は?」
「あなたの教育を、受けてあげる、わ。知識はあって無駄なことはないものね」
あまりの言いように唖然とするサブリナを、イルミネはまあまあとなだめる。
「野バラ、これから君を導いてくれる人を呼んだんだから……」
「はいはい」
肩をすくめた野バラはすいと踵を返して自室に戻るために歩き出した。サブリナはその様子を忌々しそうに睨みつけていた。
「まあ、肉を食べるのは汚らわしくないと言うの?あなたたち、生き物を殺して死体を食べているのでしょう?」
「な、なんですって⁉」
これ見よがしにバラを食べながら野バラが軽口をたたくと、その女は顔を真っ赤にして怒りをあらわにした。
「だいたいわたしは躾なんて頼んでないし、そんなことされるくらいなら出ていくつもりなんだけど?」
「栄えある公爵家に招かれておいて、なんと恩知らずな!いいですか、頼まれたからにはわたしがあなたの面倒を見させていただきますからね」
女は意地でも野バラを叩きなおすと決意してるのか鼻息荒く伝える。
「わたしは公爵家侍女長のサブリナ・リリス、これよりあなたはわたしが預かり貴族界にでても大丈夫なように教育を施します」
(貴族界に出る気なんかさらさらないんだけど)
本当に、いったいイルミネは何を言ったのだろうと野バラは溜息をついた。
ぞろぞろとやってきた公爵家の本家御一行は荷物を次々と運び込んだ。イルミネは自分の研究のために大量の物資を依頼していたようでほくほくとした顔でいたが、サブリナを見るとぱっと顔を輝かせた。
「サブリナ!来てくれてありがとう」
「ぼっちゃんたってのご依頼ですもの、このサブリナ身を粉にしてお勤めする所存ですわ」
イルミネの前では野バラを罵ったことなどなにもなかったかのように、サブリナは「ほほほ」と朗らかな笑顔で答えていた。イルミネはすっかり信じ切っているようで、
「さすが、サブリナだったら野バラの面倒を良くみてくれると思ってたんだ。彼女は希少な部族でね、一緒に陛下へご挨拶をしたいし王宮の研究室にも行きたいんだよね」
「おまかせください、誰もが惚れ惚れするような素晴らしいご令嬢に、このわたしが仕立ててみせます」
「やっぱり君なら安心できるね!よろしく頼むよ」
(わたしはそんな話を欠片も聞いたことがないんだけど?)
腕組みをして不愉快げにその様子を見つめていると、気づいたイルミネはまるで悪気なさそうにサブリナを連れて野バラの元にやってきた。
「野バラ、彼女はサブリナと言って君のマナー教育をお願いしたから。これで王宮にも行けるようになるよ」
「はじめまして、野バラ様」
当然のように初対面の振りをするサブリナを野バラは鼻で笑ってやった。しかしさすが公爵家の侍女長ともなれば本家の人間の前でボロは出さないのか表情を変えようとはしなかった。まあ目に力が入っているのは見て取れたのだが。
(やっぱりぼっちゃんはぼっちゃんね、こちらのことなど何も考えずに自分のやりたいことを決めるし)
野バラは二人を無視してどうしようかと指を頬にあてた。
(これ以上窮屈な思いをする必要もないのだけど……わたしの人生がこんなことになったやつら全員に仕返ししてもいいんじゃないかしら。最高の三食昼寝付き、ただ小うるさい奴と勉強が増えるくらいか、うーん)
「ちょっとあなた、ぼっちゃんを無視するなど」
「まあいいでしょう」
「は?」
「あなたの教育を、受けてあげる、わ。知識はあって無駄なことはないものね」
あまりの言いように唖然とするサブリナを、イルミネはまあまあとなだめる。
「野バラ、これから君を導いてくれる人を呼んだんだから……」
「はいはい」
肩をすくめた野バラはすいと踵を返して自室に戻るために歩き出した。サブリナはその様子を忌々しそうに睨みつけていた。
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