41 / 76
41話 好きな人の感触
しおりを挟む
莉愛は唇をぶるぶる震わせながらも、なんとか伝えた。
「あなたのことちゃんと尊重して、全く束縛しないでいられるよう、頑張るから。ちゃんと……振り向いてくれるように―――」
「なに言ってんだ、俺を束縛しない君は君じゃないだろ」
蓮は苦笑を浮かべながら、言葉を続ける。
「俺に好かれるためだけに自分を押し殺すなよ、莉愛」
「………………でも」
「昔の俺もけっこう……なんというか、バカだったからさ。だから、君の我儘な部分も全部好きだったんだぞ?そんな風に自分を押し殺さなくたって、別にいいから」
もちろん、途中で度が過ぎたからこそ別れたのだろうけど、些細な嫉妬はちゃんと……可愛く見えたのだ。
そういった小さな我儘も、確かな莉愛の魅力の一つだから。
「……ずるい」
「え?」
「昔からずっとこう。ずるい……あなただけ、平気なままだった」
「……は?」
「私ばかり悩まされるもん。あなたは私よりずっと大人で、顔もよくて性格も優しくて、周りからも好かれて……私だけがどんどん、あなたに釣り合わないって思って、自信を無くしていくもん」
――――莉愛は今、何を言ってるんだ?
釣り合わないって?莉愛が、俺に……?は?どういうこと?
始めて聞いた莉愛の言葉に、蓮はショックを受けてぼうっと彼女を見据えた。
莉愛は、また目じりに涙を溜め始める。
「本当に、ずるい……どうしたらいいの?分からないよ」
「いや、どうしたらって」
「私、あなたのこと束縛したくない。あなたに嫌われたくないから。でも、あなたは別に束縛されても平気だって言うし……どうしたらいいの?私は」
「………………」
「どうしたらいいか、分からないよ……あなただけ格好良くなって、どんどん成長して前に進んで……私だけ、私だけ昔のまま」
「莉愛」
「私、ただあなたの幼馴染なだけで、全然あなたに釣り合っていない……重くて、自分がどうしたらいいかもわからなくて、ただただ感情任せであなたを―――」
莉愛の言葉は、最後まで紡がれなかった。
途中で耐えきれなくなった蓮が、荒々しく彼女を抱き留めたからだ。
莉愛の透き通った青い瞳が見開かれ、蓮は囁くように言う。
「―――そんなバカなこと、思ってたのかよ」
「……え?」
「釣り合ってないとか……本気で言ってるの?莉愛、本当に?」
「え、え……?だ、だってあなたは―――」
「俺の方こそ、君と釣り合ってないと思ったてたのに……」
本当に、仕方ないと言わんばかりに。でも、愛おしすぎてたまらないとばかりに。
蓮は莉愛をずっと抱きしめたまま、彼女の呆然とした顔を見つめた。
「あのさ、莉愛……俺にはよく分からないけど、なんで釣り合ってないと思ってたの?本当に聞きたいんだけど」
「……わ、私は―――」
「顔も可愛いし、性格もいいし………ちょ、ちょっと嫉妬深いけど!!でも、めちゃくちゃ可愛くて……可愛くて、可愛すぎて……」
「あ、あなた、私のこと可愛いとしか思ってないわけ!?」
「う、うるさいな!!恥ずかしすぎて言葉が上手く出ないんだよ!」
蓮は明らかに赤くなった顔で、叫ぶように言った。
「こんなたくさん魅力あるのに!ちゃんと謝ることもできて、一途で、俺だけ見つめてくれて……!どこが釣り合っていないと思うんだ、どこが!!」
「…………ぁ、ぅっ」
「バカだろ、マジで!?ああ、もう恥ずかしすぎて死にたくなってきた……!!とにかく、二度とそんなこと思うなよ!?君、俺にはもったいないくらい素敵だから……!」
自分にもったいないくらい、素敵。
莉愛は少しも、そう思っていなかった。だって今、目の前で恥ずかしがっている蓮があまりにも愛おしく映るのだ。
羞恥心に悶えながらも、自分を慰めるために精一杯頑張る男の子。世界でたった一人しかいない、好きな人。
……今回ばかりは蓮が間違っていると、莉愛は思わざるを得なかった。
こんな素敵な男の子に釣り合っているだなんて、どうしても思えないから。
「………蓮」
「なんだよ、もう……!!」
「……ふふっ。あのね」
だけど、莉愛は少し意地悪をしてみる。
「わたし、寒い」
「………………………は、は!?」
「寒いかも……うん。ほら、もう夜はけっこう冷えるじゃない?だから……寒い」
好きな人が、面と向かって可愛いとか素敵とか、自分にはもったいないくらいとか。
そんなことを言われたら、誰だってこうなるじゃない。莉愛は本気でそう思った。
少しは、責任を取って欲しい。
あなたを、あなただけを見つめている女の子に、そんな言葉を投げるなんて―――無責任すぎるから。
「……抱きしめているのに?」
「……昔はもっと、抱きしめてくれてたもん」
「いや、昔の俺たちは恋人だったから……!」
「でも、私は変わってないよ」
莉愛はもう一度、自分の気持ちをちゃんと伝えた。
「私は昔も今も、あなただけだから」
「………………………………………」
「ほ、本当だよ……?じゃないと、こんなに大人しく抱きしめられたりしないもん。あなただけ、だから……これからもずっと、私な好きな男は日比谷蓮、あなた一人だから―――」
絶対に、他の男に目を向けたりしないよ。
私は永遠に、あなたのものだから。
そんな言葉を発するも前に、唇が塞がれた。
蓮の唇によって。
「………………………………………ん、んん……?」
突然の柔らかい感触に、脳が一瞬で真っ白になる。
視界に映るのは長いまつげだった。昔に、幼い頃から何百回も見てきた蓮の、閉ざされた瞳。
好きな人の香り。抱きしめられた温もり。落ち着きと興奮を同時に運んでくれる感触。
混ざり合って、染み込んで、どんどん目が見開いて行く。心臓が信じられないくらいに大きく鳴り始める。
「……………ふぅ」
「……………ぁ、あ、ぁ………」
「……………っ」
唇を離した後、蓮はすぐにでも逃げ出したい衝動をなんとか抑えて、かろうじて言った。
「あ、ぅっ……ご………ごめん」
「……………………え?」
「い、今のはなし……!!」
とうとう耐えきれなくなった蓮は、光の速度で部屋を出て行ってしまった。
残された莉愛は、ぼうっと自分の唇に指を寄せて。
「~~~~~~~~~~~~~~!?!?!?!?!?!?」
溜めてきた何かを爆発させるように、悶え始めた。
「あなたのことちゃんと尊重して、全く束縛しないでいられるよう、頑張るから。ちゃんと……振り向いてくれるように―――」
「なに言ってんだ、俺を束縛しない君は君じゃないだろ」
蓮は苦笑を浮かべながら、言葉を続ける。
「俺に好かれるためだけに自分を押し殺すなよ、莉愛」
「………………でも」
「昔の俺もけっこう……なんというか、バカだったからさ。だから、君の我儘な部分も全部好きだったんだぞ?そんな風に自分を押し殺さなくたって、別にいいから」
もちろん、途中で度が過ぎたからこそ別れたのだろうけど、些細な嫉妬はちゃんと……可愛く見えたのだ。
そういった小さな我儘も、確かな莉愛の魅力の一つだから。
「……ずるい」
「え?」
「昔からずっとこう。ずるい……あなただけ、平気なままだった」
「……は?」
「私ばかり悩まされるもん。あなたは私よりずっと大人で、顔もよくて性格も優しくて、周りからも好かれて……私だけがどんどん、あなたに釣り合わないって思って、自信を無くしていくもん」
――――莉愛は今、何を言ってるんだ?
釣り合わないって?莉愛が、俺に……?は?どういうこと?
始めて聞いた莉愛の言葉に、蓮はショックを受けてぼうっと彼女を見据えた。
莉愛は、また目じりに涙を溜め始める。
「本当に、ずるい……どうしたらいいの?分からないよ」
「いや、どうしたらって」
「私、あなたのこと束縛したくない。あなたに嫌われたくないから。でも、あなたは別に束縛されても平気だって言うし……どうしたらいいの?私は」
「………………」
「どうしたらいいか、分からないよ……あなただけ格好良くなって、どんどん成長して前に進んで……私だけ、私だけ昔のまま」
「莉愛」
「私、ただあなたの幼馴染なだけで、全然あなたに釣り合っていない……重くて、自分がどうしたらいいかもわからなくて、ただただ感情任せであなたを―――」
莉愛の言葉は、最後まで紡がれなかった。
途中で耐えきれなくなった蓮が、荒々しく彼女を抱き留めたからだ。
莉愛の透き通った青い瞳が見開かれ、蓮は囁くように言う。
「―――そんなバカなこと、思ってたのかよ」
「……え?」
「釣り合ってないとか……本気で言ってるの?莉愛、本当に?」
「え、え……?だ、だってあなたは―――」
「俺の方こそ、君と釣り合ってないと思ったてたのに……」
本当に、仕方ないと言わんばかりに。でも、愛おしすぎてたまらないとばかりに。
蓮は莉愛をずっと抱きしめたまま、彼女の呆然とした顔を見つめた。
「あのさ、莉愛……俺にはよく分からないけど、なんで釣り合ってないと思ってたの?本当に聞きたいんだけど」
「……わ、私は―――」
「顔も可愛いし、性格もいいし………ちょ、ちょっと嫉妬深いけど!!でも、めちゃくちゃ可愛くて……可愛くて、可愛すぎて……」
「あ、あなた、私のこと可愛いとしか思ってないわけ!?」
「う、うるさいな!!恥ずかしすぎて言葉が上手く出ないんだよ!」
蓮は明らかに赤くなった顔で、叫ぶように言った。
「こんなたくさん魅力あるのに!ちゃんと謝ることもできて、一途で、俺だけ見つめてくれて……!どこが釣り合っていないと思うんだ、どこが!!」
「…………ぁ、ぅっ」
「バカだろ、マジで!?ああ、もう恥ずかしすぎて死にたくなってきた……!!とにかく、二度とそんなこと思うなよ!?君、俺にはもったいないくらい素敵だから……!」
自分にもったいないくらい、素敵。
莉愛は少しも、そう思っていなかった。だって今、目の前で恥ずかしがっている蓮があまりにも愛おしく映るのだ。
羞恥心に悶えながらも、自分を慰めるために精一杯頑張る男の子。世界でたった一人しかいない、好きな人。
……今回ばかりは蓮が間違っていると、莉愛は思わざるを得なかった。
こんな素敵な男の子に釣り合っているだなんて、どうしても思えないから。
「………蓮」
「なんだよ、もう……!!」
「……ふふっ。あのね」
だけど、莉愛は少し意地悪をしてみる。
「わたし、寒い」
「………………………は、は!?」
「寒いかも……うん。ほら、もう夜はけっこう冷えるじゃない?だから……寒い」
好きな人が、面と向かって可愛いとか素敵とか、自分にはもったいないくらいとか。
そんなことを言われたら、誰だってこうなるじゃない。莉愛は本気でそう思った。
少しは、責任を取って欲しい。
あなたを、あなただけを見つめている女の子に、そんな言葉を投げるなんて―――無責任すぎるから。
「……抱きしめているのに?」
「……昔はもっと、抱きしめてくれてたもん」
「いや、昔の俺たちは恋人だったから……!」
「でも、私は変わってないよ」
莉愛はもう一度、自分の気持ちをちゃんと伝えた。
「私は昔も今も、あなただけだから」
「………………………………………」
「ほ、本当だよ……?じゃないと、こんなに大人しく抱きしめられたりしないもん。あなただけ、だから……これからもずっと、私な好きな男は日比谷蓮、あなた一人だから―――」
絶対に、他の男に目を向けたりしないよ。
私は永遠に、あなたのものだから。
そんな言葉を発するも前に、唇が塞がれた。
蓮の唇によって。
「………………………………………ん、んん……?」
突然の柔らかい感触に、脳が一瞬で真っ白になる。
視界に映るのは長いまつげだった。昔に、幼い頃から何百回も見てきた蓮の、閉ざされた瞳。
好きな人の香り。抱きしめられた温もり。落ち着きと興奮を同時に運んでくれる感触。
混ざり合って、染み込んで、どんどん目が見開いて行く。心臓が信じられないくらいに大きく鳴り始める。
「……………ふぅ」
「……………ぁ、あ、ぁ………」
「……………っ」
唇を離した後、蓮はすぐにでも逃げ出したい衝動をなんとか抑えて、かろうじて言った。
「あ、ぅっ……ご………ごめん」
「……………………え?」
「い、今のはなし……!!」
とうとう耐えきれなくなった蓮は、光の速度で部屋を出て行ってしまった。
残された莉愛は、ぼうっと自分の唇に指を寄せて。
「~~~~~~~~~~~~~~!?!?!?!?!?!?」
溜めてきた何かを爆発させるように、悶え始めた。
0
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!
竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」
俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。
彼女の名前は下野ルカ。
幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。
俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。
だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている!
堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる