未だに大好きな元カノ幼馴染が、俺と結婚する未来を見ているらしい

黒野マル

文字の大きさ
44 / 76

44話  蓮が先に告白を……??

しおりを挟む
『んん……ん……』
『……莉愛、眠たければ寝てもいいからね?』
『やだ。あなたが運転してくれているのに、寝るわけにはいかないじゃない……頑張ってくれてるんだし』
『へぇ~~やっぱ俺の奥さん最高!』
『ふふっ、でしょでしょ~?もっと褒め称えて~!』


……ああ、そっか。

また、夢か。最近だと見て嬉しくなっちゃう夢の風景を前にして、莉愛は見つめる。

車の後ろ席には、二人の娘たちが肩を寄せ合いながら仲良く眠っていて……助手席には未来の自分と、運転席に未来の蓮が座っていた。

そっか、車に乗ってるんだ……ぼんやりとそのことを思いついた時、未来の自分が言う。


『ふぁあ……でも、さすがに遠いね。お母さんたちの家』
『まあ、仕方ないんじゃない?仕事も早めに引退して、後は別荘でゆっくり過ごしたいと言ってたし』
『だよね~~あはっ。私、また昔のこと思いついた』
『うん?昔?』
『ほら、高校一年の時からずっと一緒に住んでたじゃない。あなたと私で』
『ああ、だね。おかげでめっちゃ喧嘩したよね~~』
『なに~?なんですか、蓮さん?私と一緒にいたのに不満でもあったんですか~?』


うわっ、未来の私ってあんな顔するんだ。純粋に怖い……。


『……ははっ、そ、そんなことあるはずないじゃないですか~!やだな~莉愛さんも』
『ぶぅ……とにかく、あなたと住み始めて1ヵ月……?2ヶ月くらい経ってた時かな?その時に急に、ご両親たちが一気に押しかけてきたことあったじゃない?』


思い当たりがあったのか、未来の蓮は頷きながら相槌を打つ。


『ああ、そうだったね。確かテスト間近だった気がするけど』
『そう。で、その時にお母ちゃんになにを言われたのか、結局聞けなかったなって』
『うん?どういうこと?』
『……蓮、ママと二人きりで色々と話してたでしょ?』


未来の私は若干頬を膨らませて、尋問するように蓮に言っている。

そして、未来の蓮はぷふっと噴き出してから、急に笑い声をあげた。


『あはっ、あははっ!!そうだったね~~確かに、茜さんには色々と言われてたかも~』
『何を言われたの?あれから蓮の態度が一気に変わってたじゃない。告白もそっちが先にしてくるし』
『うん?普通に内緒』
『えぇ!?なんで内緒!?』
『教えたらつまらないだろ~~?あっ、しーっ!!子供たち寝てるから!』
『ぐぬぬ……!!ぐぬぬぬぬぬぬ……!』


悔しがるような私の声を最後に。

私の意識はプツンと、そこで途絶えてしまった。






「…………………………え?」


そして、目が覚めた私は夢の内容を思い返しながら、ぽかんと口を開ける。

サラッと流されたけど、とんでもない言葉を聞いたような……そうだ、告白だ。


「……蓮が、私に先に告白を……?」


……………………………………………………本当に?

れ、蓮が……!?あの蓮が!?いや、なんで!?おかしいでしょ!?

どちらかというと、一方的にしがみついているのは私の方なのに……!それに、私が蓮に先に告白してたのに!?

なのに、先に告白ってどういうこと?まさか、よりを戻すための……!?


「あ、ぁ………っ~~~~~~!?!?!?!?」


蓮が、告白をしてくれる。

昔のようにまっすぐな目で私を捉えて、恋人になってくださいと言ってくれる。

それをほんの少し想像しただけでも、莉愛の心臓は爆破しそうになる。

足をバタバタさせて何度声なき悲鳴を上げても、いっぱいになった気持ちが縮ってはくれない。


「いや、でも……ああ、もう分からない。夢の内容、今まで全部当たってたし……!」


かろうじて理性を働かせ、冷静になろうとしても無駄だった。

だって、今まで夢で言及された事実が全部、当たっていたから。いつしか、莉愛も夢の内容を疑う気持ちが薄まってきたのだ。

そんなはずがないと思いつつも、これが本当に自分の未来だったら。

どれだけ幸せなことだろうと、莉愛は思う。素敵すぎる。

蓮と一緒に結婚して、子供も二人産んで、一生蓮と添い遂げて……少し思うだけでも、息が詰まるくらいに幸せになる。


「完全に変な女じゃん……ふふっ。ああ……でも」


……うん。夢に溺れすぎるのはよくないよね。

でも、あの夢をちゃんと現実にできるように頑張らないと。蓮を振り向かせて、私も一生懸命成長しないと。

莉愛は両手で頬を軽く叩いてから、ベッドから立ち上がった。

午前の7時。今日は週末だから、今の時間だと蓮はまだ起きていないはず。

手洗いと洗面だけして、莉愛は素早くキッチンに向かった。


「私も、頑張らないと」


いつも蓮にご飯を作らせるわけにはいかない。蓮のお嫁さんになるためにも……料理はちゃんと、上達しなきゃ。

そう思って、莉愛が冷蔵庫を開けた時―――


「莉愛?」
「あっ」


思っていたよりずっと早く起きていた蓮が、後ろ髪を掻きながら莉愛を見つめていた。

少し無防備な蓮の姿を捉えて、莉愛の顔がほころぶ。


「……おはよう、蓮」
「……いや、なんでエプロン?」
「朝ごはん作るために決まってるじゃない。ほら、早く顔洗ってきて。私が朝ごはん作ってあげるから」
「い、いやいや。君、料理できないだろ?俺が作った方が―――」
「好きだから」
「…………………うん?」
「す、好きだから………………好き、だから………やだ。譲りたく、ない………」


時が止まったかのようなショックを受けた蓮は、そのまま呆けてしまう。

一方、咄嗟に好きって言葉が出てきた莉愛は身をよじりながら恥ずかしがっていた。

もちろん、その言葉に嘘はなかった。好きだから。

好きな人に、美味しいものを食べさせてあげたいから。だからこそ莉愛も、昨日の夜遅くまでに料理動画を見ていたのだ。


「………っ」
「ふふっ、顔真っ赤」
「う、うるさいな!!はあ……もういい!分かった。顔洗ってくる……朝っぱらからなんなんだ、一体……」


赤く染まった顔をそっぽ向けながら、蓮は洗面所へと向かう。

早く顔を洗って、気持ちを少しでも紛らせないと―――そう思っていた瞬間。

急にかちゃっ、と鍵を開ける音が鳴り響き、二人の目が同時に丸くなった。

そして、当たり前のようにドアが開かれ―――


「あっ、蓮~~!久しぶりぃ~~!」
「えっ、茜さん!?!?」


莉愛の実の母親、七瀬茜が姿を現わした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。 綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。 だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。 中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。 とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。 高嶺の花。 そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。 だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。 しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。 それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。 他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。 存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。 両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。 拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。 そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。 それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。 イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。 付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。

処理中です...