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40話 浮気判定が厳しすぎる
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「ここ、か……」
ギルドの支部長が用意してくれた馬車から降りて、俺たち3人は首都の城門を見上げた。
さすがは帝国。大陸でもっとも強い国だというゲームの設定を反映するように、城門の前は人でごった返していた。
出入国を管理する警備兵たちは、綿密に調査を行っている。その姿を見て、俺たちは互いの顔を見合わせた。
「で、カイ。どうする気?まさかここまで来て何も考えなかった……とかじゃないよね?」
「ははっ、俺を何だと思ってるんだよ、クロエ!計画なんてあるわけないじゃん」
「……私、このパーティー抜けてもいい?」
「分かった、分かった!冗談だって……!はあ、もう」
一応、俺とニアは体内の魔力を最大限見えないようにしていて、ニアは赤い目を見せないために目隠しをしていた。
警備兵くらいのレベルだと、さすがにバレないとは思うが……まあ、バレても別にいいっか。
「行こうか。ニア、クロエ」
「え?ちょっ……!」
二人の手を引きながら警備兵の前に立つと、男たちが不審な目を向けてくる。眉根がひそめられて、明らかに俺たちを訝るようだったが―――
パチン、と指を鳴らすと。
「え…………ぁ……」
「ぁあ……え、え?」
目の前にいた二人の男は一気に魂が抜けたような声を上げ、次第に呆然とした顔になる。
俺は満面の笑みを湛えながら、男たちに言った。
「すみません~~辺鄙な村出身なので出入国許可証がないんです!でも、とっても大事な要件があるので、今回だけ見逃してくれませんか?」
「あ、ああ………!!
「ど、どうぞどうぞ!!!お入りください!!」
何故だか、男たちは冷や汗を掻きながら焦ったように何度も頷く。俺は口をポカンと開いているクロエに肩をすくめて見せた後、ニアの手を取って城門を通った。
次第に広がるのは、ゲームの中でしか見てなかった景色。
前世に例えるなら、18世紀のフランスって言えばいいだろうか。石造の高い建物が連なっていて、人々の声が絶えない国の中心地。
ここが、首都オデール。そして、帝国の闇がもっとも深く根付いている悪の巣窟。
「……計画ないんじゃなかったの?」
感想に浸っていると、クロエが呆れた顔で俺を見てくる。
俺は再び肩をすくめてから、ニアの手を取った。
「ゲームで大事なのは臨機応変だから」
「ああ~~分かった、偉い偉い。本当、悪魔の力って詐欺だよね……」
「その悪魔と一緒に行動しているんだぞ~?もっと自慢に思ってもいいのに」
「ふふっ、調子のいいこと言って」
クロエはクスクスと笑いながらも、何度も見たはずの首都の街並みをジッと見据える。
いつの間にか、クロエとはかなり打ち解けるようになったのだ。年齢もそこまで離れていないし、馬車の中でニアが寝ている間に色々話をしたのが上手く働いたと思う。
そして、ニアは。
「…………ふん」
相変わらず頬をパンパンに膨らませて、俺と繋いでいる手を握りつぶさんとばかりに力を入れてきた。
もはや定番といってもいいその痛みに腕をひねりながら、俺たちはとりあえず人が少ない裏道に向かった。
目的は二つだった。一つは一拍をするための宿の確保。そしてもう一つは―――ある人物の動態を探るため。
確か、シナリオ通りだとあの人は城で引っ込んでいるはず。
だけど、俺がクロエを生かすために色々とシナリオを壊してしまったから、念のための確認をしたかったのである。
「あのさ、カイ。質問があるんだけど」
そして、その情報屋に向かっている途中で、クロエはふと思いついたように聞いてくる。
「うん、なに?」
「今から会いに行くそのリエルって人、男の人だよね?」
「うん?いやいや、そんなわけないじゃん。リエルって名前ついている男なんて普通にありえな――――ど、どうしたんですか?なんか、目が怖いんだけど……?」
「…………………うん?普通だよ?」
いやいや、普通じゃないだろ。明らかに普通じゃないだろ、それ。
なんで死んだ目になってるんだよ……!?今のどこでメンタルやられる要素があった!?
「………………………………………………………………………カイ」
「に、ニアまでどうしたの……?なんか、目が光ってるけど……?目隠しで隠しきれてないんだけど……?」
「私、なにも聞いてない。私たち、女の人に会いに行くの?」
「そ、そうだね……ニアは馬車の中でずっと寝てたから聞いてないっか。かいつまんで説明すると、俺たちは後見人を探しに行ってるんだ。リエルはけっこう有名な事業家でね?お金もあるし情報収集にも長けているし、俺たちにとっていい仲間になってくれるはず―――」
「ふうん、女の人なんだ」
…………なんだ、この雰囲気は。
季節的には春のはずなのに、冬場よりもっと体が冷えて、背筋がゾッとする感覚。
両サイドからとんでもなく睨まれているせいで、俺は何も言い出せなかった。ニアは俺と繋いでいる手に、段々と力を加えてくる。
そして、二人は淡々とした口調で殺伐な話を広げ出いた。
「クロエ」
「うん、ニア」
「クロエは浮気、許せる?」
「……うん、許せるよ?当たり前じゃん」
「私も許せる。でも、カイの手はこのままにしておいてもいいかな?」
「あ~~それは無理かも。一回ポキッとしといて」
「ちょっと待って!!なんでこれが浮気になるんだよ!俺別になんも言ってな―――くぁあああああっ!?!?」
路地裏に凄絶な悲鳴が響いた後。
俺は自分の手に終始ヒールをかけて涙を流しながら、とぼとぼと情報屋に向かった。
その間、俺の服の端はずっとニアとクロエにつままれていた。
ギルドの支部長が用意してくれた馬車から降りて、俺たち3人は首都の城門を見上げた。
さすがは帝国。大陸でもっとも強い国だというゲームの設定を反映するように、城門の前は人でごった返していた。
出入国を管理する警備兵たちは、綿密に調査を行っている。その姿を見て、俺たちは互いの顔を見合わせた。
「で、カイ。どうする気?まさかここまで来て何も考えなかった……とかじゃないよね?」
「ははっ、俺を何だと思ってるんだよ、クロエ!計画なんてあるわけないじゃん」
「……私、このパーティー抜けてもいい?」
「分かった、分かった!冗談だって……!はあ、もう」
一応、俺とニアは体内の魔力を最大限見えないようにしていて、ニアは赤い目を見せないために目隠しをしていた。
警備兵くらいのレベルだと、さすがにバレないとは思うが……まあ、バレても別にいいっか。
「行こうか。ニア、クロエ」
「え?ちょっ……!」
二人の手を引きながら警備兵の前に立つと、男たちが不審な目を向けてくる。眉根がひそめられて、明らかに俺たちを訝るようだったが―――
パチン、と指を鳴らすと。
「え…………ぁ……」
「ぁあ……え、え?」
目の前にいた二人の男は一気に魂が抜けたような声を上げ、次第に呆然とした顔になる。
俺は満面の笑みを湛えながら、男たちに言った。
「すみません~~辺鄙な村出身なので出入国許可証がないんです!でも、とっても大事な要件があるので、今回だけ見逃してくれませんか?」
「あ、ああ………!!
「ど、どうぞどうぞ!!!お入りください!!」
何故だか、男たちは冷や汗を掻きながら焦ったように何度も頷く。俺は口をポカンと開いているクロエに肩をすくめて見せた後、ニアの手を取って城門を通った。
次第に広がるのは、ゲームの中でしか見てなかった景色。
前世に例えるなら、18世紀のフランスって言えばいいだろうか。石造の高い建物が連なっていて、人々の声が絶えない国の中心地。
ここが、首都オデール。そして、帝国の闇がもっとも深く根付いている悪の巣窟。
「……計画ないんじゃなかったの?」
感想に浸っていると、クロエが呆れた顔で俺を見てくる。
俺は再び肩をすくめてから、ニアの手を取った。
「ゲームで大事なのは臨機応変だから」
「ああ~~分かった、偉い偉い。本当、悪魔の力って詐欺だよね……」
「その悪魔と一緒に行動しているんだぞ~?もっと自慢に思ってもいいのに」
「ふふっ、調子のいいこと言って」
クロエはクスクスと笑いながらも、何度も見たはずの首都の街並みをジッと見据える。
いつの間にか、クロエとはかなり打ち解けるようになったのだ。年齢もそこまで離れていないし、馬車の中でニアが寝ている間に色々話をしたのが上手く働いたと思う。
そして、ニアは。
「…………ふん」
相変わらず頬をパンパンに膨らませて、俺と繋いでいる手を握りつぶさんとばかりに力を入れてきた。
もはや定番といってもいいその痛みに腕をひねりながら、俺たちはとりあえず人が少ない裏道に向かった。
目的は二つだった。一つは一拍をするための宿の確保。そしてもう一つは―――ある人物の動態を探るため。
確か、シナリオ通りだとあの人は城で引っ込んでいるはず。
だけど、俺がクロエを生かすために色々とシナリオを壊してしまったから、念のための確認をしたかったのである。
「あのさ、カイ。質問があるんだけど」
そして、その情報屋に向かっている途中で、クロエはふと思いついたように聞いてくる。
「うん、なに?」
「今から会いに行くそのリエルって人、男の人だよね?」
「うん?いやいや、そんなわけないじゃん。リエルって名前ついている男なんて普通にありえな――――ど、どうしたんですか?なんか、目が怖いんだけど……?」
「…………………うん?普通だよ?」
いやいや、普通じゃないだろ。明らかに普通じゃないだろ、それ。
なんで死んだ目になってるんだよ……!?今のどこでメンタルやられる要素があった!?
「………………………………………………………………………カイ」
「に、ニアまでどうしたの……?なんか、目が光ってるけど……?目隠しで隠しきれてないんだけど……?」
「私、なにも聞いてない。私たち、女の人に会いに行くの?」
「そ、そうだね……ニアは馬車の中でずっと寝てたから聞いてないっか。かいつまんで説明すると、俺たちは後見人を探しに行ってるんだ。リエルはけっこう有名な事業家でね?お金もあるし情報収集にも長けているし、俺たちにとっていい仲間になってくれるはず―――」
「ふうん、女の人なんだ」
…………なんだ、この雰囲気は。
季節的には春のはずなのに、冬場よりもっと体が冷えて、背筋がゾッとする感覚。
両サイドからとんでもなく睨まれているせいで、俺は何も言い出せなかった。ニアは俺と繋いでいる手に、段々と力を加えてくる。
そして、二人は淡々とした口調で殺伐な話を広げ出いた。
「クロエ」
「うん、ニア」
「クロエは浮気、許せる?」
「……うん、許せるよ?当たり前じゃん」
「私も許せる。でも、カイの手はこのままにしておいてもいいかな?」
「あ~~それは無理かも。一回ポキッとしといて」
「ちょっと待って!!なんでこれが浮気になるんだよ!俺別になんも言ってな―――くぁあああああっ!?!?」
路地裏に凄絶な悲鳴が響いた後。
俺は自分の手に終始ヒールをかけて涙を流しながら、とぼとぼと情報屋に向かった。
その間、俺の服の端はずっとニアとクロエにつままれていた。
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