文字の大きさ
大
中
小
141 / 142
第三章 龍族編
涼風ごはん
「なんか……やけに喉が渇く…………」
水をガブガブ飲んで、ものたりなくてちょうど私の部屋に来た月宗様の持つ籠いっぱいの桃をジュースに変えてもらう。
「それくらいにしておけ」
三杯目を飲み干したあたりで、月宗様の膝に抱き上げられてバードキスの嵐がおくられる。強制的に止められて、余計に喉が渇く気がする。
「まだ飲みたいのに……」
ジト目で彼を見ると柔らかく笑う。
大好きすぎて胸が苦しいな……いやなんか物理的に胸が痛いな!?
胸を押さえてうずくまると、部屋の隅で涼風と積み木で遊んでいたヨダカ君がこちらをじっとみた後叫ぶ。
「レレさん!やはりです!僕は退出するのですぐ来てください!」
「はいはーーーい!!」
全てを承知したようなレレさんが私の着物の合わせをぐいとはだけさせる。
「な、何……」
「涼風!出番!!」
膝にクッションを置かれ、首根っこを掴まれた涼風が押し込まれる。
くんくんと鼻を鳴らす涼風がパクりと吸い付いた。
「は!?」
「あ、おっぱい……?カラスの子は授乳は必要ないんじゃ…………?」
こくんこくんと美味しそうに夢中で飲む涼風を落とさないように抱き止めて、唖然とする月宗様に問う。
「哺乳類じゃねぇよ俺達は……」
「でも…………楽になってきた…………」
胸の痛みが引いてくる。
夢中でおっぱいをのむ涼風が可愛い。
「エロすぎだろ……」
「どこが?」
「俺のなのに…………」
「赤ちゃんのだよ?」
「俺の……」
二回言ったな。
人間とのハーフである涼風は普通の八咫烏とは色々と違うのかもしれない。
手探りでやるしかなさそう。
「いい子だね、涼風」
目を閉じたまま短い手足で伸びをして、そのまま寝てしまった涼風を抱きしめて呟く。
涼風がどんなでも、またここに来てくれたことが嬉しい。
「授乳って……疲れるんだね……」
「血液だからな」
「そう…………か……眠い……」
耳元でおやすみ、と心地よい低い声がしたような気がした。
◇◆◇
満腹を覚えた涼風は、すぐにトイレもできるようになった。
人間と八咫烏のハイブリッドな涼風を、おじ様達がちゃんと見ていてくれる。
「す、涼風様!今日はくまさんではいけません!」
ズルズルとくまさん着ぐるみを持つ涼風を類君が嗜める。
(類君はおかん気質だったようで、涼風のトイレトレーニングは彼の功績が大きい)
「ふふ、涼風、今日は父神様にお会いするから……あれ?涼風の父上はもう月宗様だよねぇ?」
「ちゅきむね」
「父上ね~~~~」
レレさんが笑いながら涼風に教える。
「ちゅきむね」
「ふふ、ならいいかな?でも袴なら、月宗様とお揃いだよ?」
お揃いが響いたのか、レレさんの着せつけに素直に応じ始めた。
「涼風!ポシェットはしていいからね~~~!」
皆が涼風様、と呼び名を改めたらほっぺを膨らませて怒るという事件が起こった。
じいやだけは元から涼風坊ちゃんだったことを心の底から自画自賛していて、信じられないぐらいジジ馬鹿になっている。
ぷいとそっぽを向いて返事をしないので、皆それぞれ元の呼び名に戻したのだけれど、光久さんだけはまだ攻防戦をつづけている。(ちょっと楽しい)
「お雛様の衣装みたい……素敵……」
涼風が生まれ私の心も体も安定したからと、やっと婚姻の儀を執り行う事になったのだ。
巫女風に結われた髪に、白と銀のリボンをつけてもらう。
十二単の長い裾を引きずって、神社の外廊下を渡る。
八咫烏が神前に祀られる神社の境内は、今日だけ一般客の立ち入りを禁じている。
私と月宗様の結婚式。
こんな日がくるなんて信じられない。
境内に彼の姿を見つける。
紋付袴を着た八咫烏のご宗主様。
黒の似合う、凛とした私の旦那様は涼風を肩車して遊んでいる。
「月宗様!涼風!」
二人がこちらを向く。
笑った顔がよく似ていて、それがすごく嬉しい。
感想 498
あなたにおすすめの小説
お菓子の妖精に転生した私、氷の大公爵様に拾われて毎日甘やかされています 〜ポケットの中の専属パティシエは、やがて公爵様の婚約者になりました〜
星乃和花元パティシエ見習いの私は、異世界でお菓子の妖精「シュクリ」に転生した。
森で行き倒れかけていたところを拾ってくれたのは、氷の魔人と恐れられる大公爵ノアゼット様。
お礼に作った特製プリンが、彼の偏食と魔力不調を治してしまい、私はそのまま専属パティシエとして大切にされることに。
胸ポケットに入れて持ち歩かれたり、砂糖星を狙われたり、王宮で菓子勝負をしたり、人間の姿に戻ったり。
甘いお菓子が、冷たい公爵様の心を少しずつ溶かしていく。
小さな妖精パティシエと、彼女だけに甘すぎる大公爵様の、癒やし系スイーツラブコメ。
・ー予定:毎日20:20更新(本編28話+番外編3話)ー・
【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
こころ ゆい※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました!
※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)
狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。
突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。
だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。
そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。
共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?
自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。
※作品の無断転載、AI学習など一切を固くお断りいたします。(Do not reupload / use my writing for any purposes, including for AI)
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…
ましろ見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。
王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。
それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。
貧しかった少女は番に愛されそして……え?
夫が運命の番と出会いました
重田いの幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
拾ってないのに、最上位が毎日“帰る”んですがーー飼い主じゃありません!ただの受付係です!
星乃和花王都ギルド受付係リナは、今日も平和に働く予定だった。
……のに。
「お腹すいた」
そう言って現れたのは、最上位の英雄レオン。
強いのに生活力ゼロ、距離感ゼロ、甘え方だけは一流。
手当てすれば「危ない」と囲い込み、
看病すれば抱きしめて離さず、
ついには――
「君が、俺の帰る場所」
拾ってない。飼ってない。
ただ世話を焼いただけなのに、英雄が毎日“帰ってくる”ようになりました。
無自覚世話焼き受付嬢 × 甘えた天然英雄の
距離感バグ甘々ラブコメ、開幕!
⭐︎完結済ー本編8話+後日談9話⭐︎