【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香

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番外編 クルミ

羽浴場

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◇◆◇

「おひい様、コチラですわ。ここは大鷲族もそのまま使いたかったんでしょうねぇ、綺麗なままで本当に良かった」

 神殿の様なホールの中に、すごく広い温泉。
前にライがうちの国にいた時、母様はライの服装を見てモンゴル風だね!と意味のわからない事を言っていたけれど、この場所だけ牧歌的なイメージではない。

 白い柱がいっぱいあって、壁や柱、天井から色んな強さでお湯が出ている。

 滝の様だったり、シャワーのみたいだったり、霧雨きりさめのようだったり。

「すごい、素敵…………」

「羽を洗う為なのです。こちらに個室がありますから、まずはそこで汗を流しましょうねぇ」

 蝋燭に灯された感じのいい個室で脱がされてカカラに隅々まで磨かれる。

 羽根を乾かすための装置があって、柔らかい風なのにすぐに髪が乾き、カカラによってふんわり片側に流して三つ編みにされた。

 部屋の中なのにたくさんの植物が植えられている。カカラはその中から色んな種類の花を摘んでいき、色とりどりの花を私の髪に留めていく。
せ、センス良すぎない?

「おしゃれいたしましょうねぇ、公爵様も参ります故」

「え!?ここに!?!?お風呂でしょう!?私今裸だよ!?」

「ふふ、この国の浴場は混浴なのですわ?湯のための衣装があるのです。さ、こちらを」

ええええええええええええ!!!!!
コレェェェエ!!??
 
 こ、これ、カルネクアで流行りの水着ってやつじゃない!?

 2つに分かれた衣装。お、おへそのところがない!!フリフリしてる!!!

「さ、おひい様、私も着替えましたし大丈夫ですわ?」

 カカラが着てるのもおへその所は無いけれど、下はロングスカートとかいうやつだ。私のはミニスカート。アイラちゃんのお店にあるからスカート自体は知ってる。着たことは無いけど。

「さぁ、参りましょう?楽しみですわねぇ」

 涼やかな目でニッコリ笑うカカラの圧がすごい。

 足元が滑るからとカカラに手を引かれて恐る恐るホールに戻る。

 天井の一部がゆっくりと開いていき、空の星が見えた。

「おぉーーすげぇなここ」

「ああ、うちの自慢なんだ、はぁ、やっと油落ちた。必要な油分まで取れた…………最悪だ。かっこわリィ」

「多種族にはサッパリ違いが分からんから気にすんな。おぉ、クルミ!なんだその顔腹減ったのか?」

「ひぃっ!!!」

 なん、何で皆んな上半身裸なの!!!!
え。あんなにお腹って割れてるものなの?
みんな細身なのに何なの!?

 兄様達は白いズボン姿。
く、クロム兄様も。

「ところで何で俺は目を塞がれているんだ」
ライはクロム兄様に腕で目を塞がれてる。

「レスター、代われ」

「…………………………」

 レスター兄様が指を鳴らしライの顔の周りだけに色付きの魔球壁を出す。

 ライから離れたクロム兄様がツカツカとこちらに歩いてくるけれど目の奥が全然笑ってない!!!

「カカラ、あるんだろう?すぐに」

「ふふふ、妃殿下の打掛をおもちしておりますわ?おひい様、短かったですわねぇ」

 そう言ってつる籠から出したのはレモン色の打掛。
兄様がすぐに私に巻き付ける様に着せてくる。

な、何!?

「このままではおひい様が可哀想ですわ?」

 だらしなく肩にかけられたレモン色の打掛をささっと直し、クリーム色の帯を巻いて胸の下で大きなリボンになる様に結んでいく。は、早い…………。

 またパチンと音がしてライの顔の周りから魔球壁が消え、顔中に?が浮かんでいるライが見えた。

「クルミ姫!とても綺麗だな!!」

ライがニカっと笑う。

「ライ…………もう少し危機感持った方がいいと思う…………死にに行ってる」

 秋がよく分からないことを言い、レスター兄様がため息を付く。

「クルミ?ここは滑るから、僕が運ぼう」

「おわ!?!?」
ぐぅ……………咄嗟の声を可愛くする魔法、誰か知らないかな!!?

 クロム兄様にお姫様抱っこされてライ達からは少し離れてお湯に入っていく。
兄様の抱っこはフワフワする。
柔らかい赤ん坊を抱く様に私を抱くから。

「兄様?その……私、変でした?」

「ん?違うよ?可愛すぎると羽王子の目に毒でしょ?」

 羽王子………………何というか、容赦ないネーミング………………。
そうだった、兄様は家族以外に全く興味を示さない人だった。

「兄様も、ごめんなさい。心配かけて」

「ん、久しぶりに子どもの頃のヒヤヒヤを思い出したよ。母上も、同じだったから」

「母様が?」
そうかな。母様はいつも離れにいて、出不精なぐらいだ。めっっっっちゃインドア派。

「ははは、そうだね。母上はちゃんと見張ってないとすぐにどこかに行ってしまう方だったよ」

「兄様をおいて?」

「出会った頃はね」

「ふぅん。私はどこにもいかないです。兄様の、そばがいい」

 私を抱き込む腕に力が入る。
鳥族は長湯のためなのかお湯の温度が低いので、お湯が暖かいのか兄様があたたかいのかわからなくなる。

 流れ落ちるお湯を楽しむレスター兄様達の声が聞こえる。

「みんなのところに行きませんか?」

「……………………羽がいるよ?」

 あ、王子まで取れたな。羽って。
「ふふふ、あははは」

 大笑いする私を見てフニャッと笑う。
兄様が本当に嬉しい時にする笑い方。
泣いてるみたいに見える時がある。
幸せすぎて、怖い、みたいな。

「兄様…………だいすきです」

 ぎゅっと抱きつきポツリと言う。
お嫁さんにすると言ってくれた。
魔力が宿った指輪をくれた。

急な変化に嬉しさとびっくりが混同してぼんやりしてしまう。

「ん」

ふふ、お返事が、兄様らしい。












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