【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香

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番外編 クルミ

答え

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 ライが帰国してから一月がたった。
毎日届けさせるライの地方の新聞に齧り付く日々。

 さっき届いたばかりの新聞を見て息を呑む。
心臓がバクバクとうるさく、手足から血の気がざあっと引いていくのがわかった。

 今日も秋の代理で学園から離れまで私を送ってくれたサラが、そんな私を困った顔をしながらも、どこか苛立ったような目で見る。ヤノそっくりな涼やかな目が私を見据える。

 オロオロとして泣き始めた私にサラが言う。

「クルミはさ、いつも答えばっかり欲しがるだろ」

「?」

「どうしたらいいの!?って」

「それは……だって……」

「べつにさ、出来ない事をせめてるわけじゃないよ。なんていうかさぁ、————答えなんて無いのに、って、思う」

「ない?」

 無いわけない。兄様達や父様はいつも正解をしっているもの

 怪訝な顔をする私を見てサラが続ける。

「殿下方だって答えをってわけじゃないよ。どうしたいか、どう動きたいかをの!なんであんたはいつも考える事を放棄するの!!!」

「放棄…………?」

「自分に自信がないのは構わないけど、人の考えに乗っかろうとするからスペックが足りないってまた自分で凹むんじゃんか!!!まずは自分に何ができるかを考えろ!!!」

「私は……ほんとに、何も……」

「本当に?本当に何にも出来ない?歩くのが困難な人だっている。あんたは歩けてる。飛べない種族だって沢山いる。あんたは飛ぶのは速いじゃん」

「だ、だって、……そんな事できたって……」

「出来る事をすればいい、あんたはどうしたいの!!!命令されなきゃ動けないわけ!!?馬鹿!!!」

 ドンっと槍のを地面について怒鳴り声を上げるサラを涙目でみやると、ニカっと笑って私をこずく。

「やれる事だけ、出来ることだけ考える。分かった?」

「みんなみたいにできないのに!!私だってサラみたいに強ければ!」

「強かったら軍部にいたから何もできないよ」

「それは……そうかも、だけど」

「よく考えな」
サラはそう言って帰って行った。前を向いたままヒラヒラと手を振るのが見える。

 縁側に座ってもう一度新聞に目を落とす。

 何度見ても同じ。

————コーネルの旧王朝の崩壊、王族の処刑日が決まった、と。

 ライ、今あなたはどうしてる?
せっかくお友達になれたのに。

 初めてできた、異性の友達。
私と似た悩みをもって、なのに強い人。
好きだと言ってもらえてうれしかった。
気持ちに応えることはできないけれど、それでも。

 こんな私を好きになってもらえて、認めてもらえた様で救われた。

「私に……出来る、事…………」

 サラが言ってたこと。

「そばに行くことは、できる」

 ポツリと言う。
行って何が出来ると言うわけではない、でも、それでも。

 しんとした離れの庭。テトが庭の奥でジッと私を見てる。

 テトと私だけ。目があって、テト、と小さく呟くと私の元にかけてくる。

 いつもの様なスリスリはなく、私の数メートル先で止まりジッと私を見る。言ってみな、とでも言うように。

「てと、お願い……力をかして」

 泣きながら天馬にお願いする王族なんてきっと私だけに違いない。情けないけど涙が止まらない。
恐怖と、不安と、自信のなさと。


 テトはそんな私をジッと見て、ブルンっと鼻を鳴らしたかと思ったら、縁側に干してあった鞍を風の魔法で器用に浮かせた。

————乗れと、いってくれてる。


 コーネルは遠い。移転装置の端まで行ってもそこから馬車で何日もかかる。
テトなら、もっと速いはず。
テトのフルスピードなんてすごく怖い。
けれどやれる事はこれしかない。
しまってあった兄様の指輪を細い鎖に通し首にかけ、テトに頷いてみせる。

「いこう、テト」

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