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家族編
温泉郷1
しおりを挟む急遽エルダゾルクの端にある温泉郷に移動すると、大きな老舗の温泉宿にお母さんとクレアちゃん、レアットちゃんとルルリエさんが待っていた。
「!!みんないる!!凄い!魔法!?」
「キラキラ坊やが手配してくれたんだよ。お店もあるからあんた達ほど長居はしないが、温泉なんて、親孝行なむすめだよ」
「ユアン様から笛文きたのぉおおおお!!保存したああ!!」
「うん、私も保存した」
(あれ、保存機能あるんだ……)
「クレアちゃん俺のは~~~?」
「ひぃ!!」
クレアちゃん、まだルース君に素直になってないのか。
「良かったな」
後ろからひょいと抱かれて、愛しい人の首に抱きつく。
「リヒト様!ありがとう!すごく嬉しい!!」
私の喜ぶ事をいつも考えてくれる。
それがすごく嬉しい。
じわじわと幸せが溢れてくる様な。
「私は仕事もかねてるわ?つむぎちゃん、ここにくるのに移転を通ったでしょ。あとで診察ね?」
「はい!ルルリエさんも来てくれて嬉しいです!お仕事はほどほどにして、おしゃべりしたいです!」
「そのつもりよ!大いにさぼるわ?任せておいて!」
「さあまずは温泉だよ!娘と温泉なんて贅沢だねぇ!」
「ふふふ、楽しみ!!!」
◇◆◇
「おい、なんだみんな黙って……」
(馬鹿!クロード!!念話で話せ!!バレるだろ!!)
隣の露天風呂からつむぎ達の声がする。
高い竹の柵で全く見えないが、隣り合わせの様で声は聞こえる。温泉の番の可愛い声。まじエロい。
(馬鹿馬鹿しいですが、本気の様です。付き合ってあげて下さい)
飄々としたユアンがクロードに言う。
(マジエロいっス!天国っスかここ!)
(リツてめ、紬の声を聞くな殺すぞ!)
(クレアちゃん、喋らないかな~~~~~~)
(おまえらガキかよ……念話なんて疲れるだけだろ……)
クロードが渋々念話に切り替えた時に女湯から愛しい番の声がした。
「クロム君、あったかいね~」
「ははうえ」
「うんうん、気持ちいいよねぇ」
「ははうえ」
「テトとルルにあとで会いに行こうか」
「ははうえ」
「きっとここのご飯もおいしいよ?一緒にたべようねぇ」
「ははうえ」
「ふふ、なぁに、クロム君」
(コレなんなの~?クロムぶっ壊れたかな~?)
(あ~~、これな。あいつらしょっちゅうやってるぞ。意味わからん)
(母上呼びがよっぽど嬉しいんでしょうね。我らでは出来なかった事をつむぎ嬢がなさっているんですよ)
(ってか何でクロムはあっち側なんすか!あいつ後でとっちめてやるっス!あいつの方が強いけど!!!)
「つむぎちゃん!ちょっと痩せた?医者の私の目は誤魔化せないわよ!?」
「ウエディングドレスの為に、ダイエットしました!!」
「ははうえ、ドレス、きれい」
「つむぎちゃん、体綺麗~~~~~~!ふわふわで気持ちいいぃぃ~!!」
「妃殿下もクレアもいいなぁ、胸、大きくて」
「レアットはこのままが可愛いんだよぉおお!」
(おいリツ、テメェ鼻血出してんじゃねぇよ!!ぶっ殺すぞ!!)
(無理っス!俺もうここに住む!!)
「殿下は喜んでくれた?」
丸メガネの女の声に紬が答える。
「う~ん、リヒト様、私が肩出すの嫌いだからなぁ……今回は完全に自己満だったかも……」
(んなわけねぇだろ!可愛すぎて見せたくないだけだよ!!!)
「そういえばクレアちゃんは結局ルース君の贈った着物、着なかったんだね?」
事情を知らない俺以外が一斉にルースを見る。
糸目すぎて表情が読み取れないが、特に傷ついた様子もない。
「う、うん……婚儀には、侯爵家の御家族の方もいらっしゃったし、やっぱり、怖くて……」
「家格なんて関係ないし、翼のことも関係ないわさ!あんたの気持ちはどうなんだい!」
婆さんの怒鳴り声がして、女湯からの声が途絶える。
「そ、そりゃ、か……かっこいいなって、おも、思うけど……」
ルースが額に手を当てて、ブクブクと湯に沈んでいく様を全員が冷めた目で見る。
「わた、私の片翼は、貴族の中では有名だから……お付き合いだって、ご家族は、反対なさると、おも、思う……」
「糸目小僧だって男だよ。あんた一人ぐらい守るさね」
「こ、この話はおしまい!!!レアットこそ、婚儀の披露宴で伯爵家の殿方に話しかけられてたでしょ!?あれはどうなったの!?」
ガコッと音がして、クロードが露天の岩を手で割った。こいつも分かりやすいな。
「え?うまく逃げたよ?眼鏡とれってうるさいんだもん。私と喋って、私に眼鏡取れって言わないの、クロード様だけかも……?ちょっと、いいよね」
「はぁ!?!?!?」
「馬鹿クロード!!!てめ!声出してんじゃねーよ!!!」
「リヒト様!?聞いてたの!!?」
「馬鹿な小僧どもだねまったく」
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