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第三章 それぞれの魔獣戦

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ルードリッヒさんに意志を伝えた翌日から、僕の一日は急変した。
先ずハイネさんの家で食べる物の内容が変わった。
「ルードリッヒ様から話があったんだよ。のぞむの食事を変えてくれってね。」
と言いながら僕の前に出された朝食は、パンと野菜がどっさり入ったスープ、皮を取った鳥のむね肉の香草焼きだった。
いつもは肉料理にはもっと油が使われていたり、スープの具もあっさりしたものが多かったのが、油分をカットし野菜を多くするメニューが組まれた様だ。
「どれも美味しそうですが……。僕の為だけ・・に朝からこんな……。」
と申し訳なく思っていると、
「のぞむの為だけにこれを作るわけ無いだろ?ちゃんと客にも出すんだよ。安心しな。」
あたしゃそんなにお人好しじゃないのさと言ってくれるハイネさん。
ハイネさんはいつも僕の不安や悩みを聞いてくれ、励ましてくれたり、笑い飛ばしてくれたりして、僕の心を軽くしてくれるんだ。彼女には本当に感謝しか無い。

「さ、これを持っておいき。」
ケイドル爺さんの店に行く僕に、弁当を持たせてくれたハイネさん。
どうやら弁当これもルードリッヒさんからの指示らしい。
昼ご飯はいつもケイドル爺さんが作ってくれるガッツリ系飯だったけど、どうやら爺さんの男飯は食べられなくなる様だ。
ちょっと残念に思っていたら、
「ルードリッヒ様から預かったこれに入れて行くといいよ。」
と言ってハイネさんは、牛系の魔獣の革で作られた(僕の鑑定スキルがそう言っている)鞄を渡してきた。
渡された鞄は、僕が以前買った鞄と同じ様な物だったが、どうやら違うみたいだ。
「これはね。異空間鞄といって、この中に入れた物は異空間と呼ばれるところに入るらしいんだ。あたしみたいな平民にはよく分からないが、ルードリッヒ様が仰るには、この中に入れた物は腐りもしないらしい。それからなんでもかんでも入れられるらしいんだよ。だからのぞむに持たせて欲しいんだとさ。」
そう言われた僕は、試しにハイネさんが作ってくれた弁当を鞄の中に入れてみる。
すると……
籠に入った弁当を鞄の中に入れたにも関わらず、見た目には何も入っていない様に見える。また、鞄を触ってみても、あるはずの弁当を入れた籠の感触が何処にも無い。
「不思議だろう?」
と言うハイネさんの言葉に、ウンウンと首を縦に振る僕。

「きっとルードリッヒ様は、のぞむの為に必要だと思ってこの鞄をくれたんだろうから、有難く受け取るんだよ?そして大切にお使い。いいかい?」
そうだね。きっとルードリッヒさんは、僕を魔獣を倒す仲間してくれると言ってくれた事に対して、必要な物を必要な事をしてくれてるんだ。
だから僕は、彼の気持ちに応える必要がある。いや、応えなくちゃならない。僕はそう強く思った。

「分かったよ、ハイネさん。お弁当、ありがとう。行ってきます!」
と言って家を出ようとした僕に、
「ちょいとお待ち!ルードリッヒ様から伝言だよ。『のぞむはこれから毎日、ケイドル爺さんの店迄走って行って、走って帰ってくる事。』だそうだよ。」
え?マジ?
僕はそれを聞いて絶句した。
運動神経もなく、ましてや走るなんて……短距離も長距離も、どっちも苦手なのに……。
「ルードリッヒさんは鬼か?……ま、バレなきゃいいか。」
と小さく呟き店の裏口から出て、大通りに出ようとすると、そこに大男が立ち塞がっていた。

驚いて立ち止まってしまった僕に、
きみが"のぞむ”君かな?」
と聞いてきた大男。
僕は怖くて声も出せず、ただコクコクと頷いてから後悔した。何故なら、得体の知らない大男に対して素直に頷いてしまったからだ。

明らかに怯えていただろう僕に大男は言った。
「俺の名前は、カールソン。ルードリッヒ王……ルードリッヒから頼まれてきみを見張り……迎えに来たんだ。決して怪しい者では無いから安心してくれ。」
と。怪しい者じゃないって……そんな言葉、誰が信じられるって言うんだよ。

僕が彼に向ける疑いの目に、はぁ……と一つため息を落としたカールソン大男は、
「信じられないと言うのならこれを見ろ。」
と言って、上着の内ポケットから一つの黒い石(多分、魔石)を取り出すと掌に乗せ、僕の目の前に差し出してきたんだ。
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