32 / 120
第三章 それぞれの魔獣戦
11
しおりを挟む
僕がルードリッヒさんの身分に驚いていた頃の王宮では
「そなたたちを招いてからおおよそひと月が経った。鍛錬も進んでおると聞いておるが、如何であろう。」
と、この国の王 ソラーノ・マハベルが、勇達に進捗を問うていた。
「俺は完璧ですよ。」
「僕もで~す。」
と言ったのは勇と昴だ。
「私も概ね仕上がりました。」
と賢も言った。だが、
「俺はこの子達の保護者みたいなものだから、保護者として見守るならまだしも、体を張って前線に出るのはちょっと……。」
と昭弘は僧侶という立場にまだ納得していないのと、魔法の習得が殆ど出来てない現状の言い訳をし、
「愛子はぁ、王子様に教えて貰いたいのにぃ。てか、愛子は聖女なんでしょ?だったら聖女は王子様の側で護られてるのが本当なんじゃない?なんで戦わないとならないわけ?マジ理由分かんなぁい。」
と我儘を言うしまつ。
そもそも【聖女】とは戦地において結界を張りながら、戦いで傷ついた者達の治癒や癒しを行なう立場であると何度も説明されているにも関わらず、一向にそれを理解しようとしないばかりか、"聖女様は王子と結婚するんだ。その為にはお城にとどまらないといけない。戦いに行って怪我を負いたくないし、ましてや死ぬなんて絶対に有り得ない”と言い、司祭長やその他の者が、何をどう説明しても、宥め賺しても、愛子がその考えを変える事はなかった。
また洋平に至っては、今この場に現れてもいない。
彼はあの日から、自身に与えられた部屋から出る事さえ出来ず、未だに引きこもりを続けながらも、"侍女を若く可愛い子へ戻して欲しい。そうしないなら俺は戦わない”と言い、あの日見せた失態の原因は、全部騎士達から受けた虐めに拠るものだという持論を主張し続けているのだ。
引きこもりいて食事だけは三食しっかり食べるし、湯浴み嫌いなのは変わらない。勿論暴言を吐く事もだ。
最も、彼に就いているお姉様達は百戦錬磨の熟女達なので、洋平が何をどう言っても吠えても怒鳴っても、馬耳東風を決め込んでいるのみ。
それがかえって洋平の神経を逆撫でしているのだが、彼女達もそれを分かってやっているのだ。
何故なら、現在 洋平に就いている侍女達の中に、以前洋平からセクハラ被害を受けた若い侍女を身内にもつ者がいる。その者は、洋平に対して強い憤りを感じており、あわよくば洋平に復讐をしてやろうと思っているのだ。そして、その者の気持ちを他の熟女侍女達も知っており、彼女と一緒になって洋平に塩対応しているのだった。
また、騎士団長も、洋平が訓練所に来ない事を敢えて放っている。だが、王命により魔獣討伐隊が城を出立するとなった際は、現在の洋平の侍女達が、彼を強引に部屋から引きずり出してくれるであろうと思っているし、戦いの最前線の地に着いたら、洋平を樹木に括りつけ魔獣を誘き寄せる餌にでもしてやろうと思っているからだった。
そんな事を思っていた騎士団長は、勇達に近々魔獣が住む森に行き、D級レベルの魔獣を相手に実戦をする計画がある事を伝えた。
「腕が鳴る。」と勇は意気込み、「どんなのが出てくるか楽しみ~。」と一人はしゃぐ昴。また「日頃の成果を見せつけましょう。」とクールに言う一方で、愛子は「王子様が一緒じゃなきゃ行かなぁい。」とただをこね、昭弘は「生徒達の保護者として行きますが、参戦致しません。」と指導者として最もらしい事を言っているが、ただ戦いたくないだけの臆病者だ。
「実戦は本日より三日後である!勇者殿ご一同におかれましては、その日まで気力 魔力 体力を養っておかれたし。以上。散会!」
という騎士団長の言葉に、勇達は各々の部屋へと帰って行った。
そしてとうとう、魔獣討伐の腕試し日を迎えたのだ。
「そなたたちを招いてからおおよそひと月が経った。鍛錬も進んでおると聞いておるが、如何であろう。」
と、この国の王 ソラーノ・マハベルが、勇達に進捗を問うていた。
「俺は完璧ですよ。」
「僕もで~す。」
と言ったのは勇と昴だ。
「私も概ね仕上がりました。」
と賢も言った。だが、
「俺はこの子達の保護者みたいなものだから、保護者として見守るならまだしも、体を張って前線に出るのはちょっと……。」
と昭弘は僧侶という立場にまだ納得していないのと、魔法の習得が殆ど出来てない現状の言い訳をし、
「愛子はぁ、王子様に教えて貰いたいのにぃ。てか、愛子は聖女なんでしょ?だったら聖女は王子様の側で護られてるのが本当なんじゃない?なんで戦わないとならないわけ?マジ理由分かんなぁい。」
と我儘を言うしまつ。
そもそも【聖女】とは戦地において結界を張りながら、戦いで傷ついた者達の治癒や癒しを行なう立場であると何度も説明されているにも関わらず、一向にそれを理解しようとしないばかりか、"聖女様は王子と結婚するんだ。その為にはお城にとどまらないといけない。戦いに行って怪我を負いたくないし、ましてや死ぬなんて絶対に有り得ない”と言い、司祭長やその他の者が、何をどう説明しても、宥め賺しても、愛子がその考えを変える事はなかった。
また洋平に至っては、今この場に現れてもいない。
彼はあの日から、自身に与えられた部屋から出る事さえ出来ず、未だに引きこもりを続けながらも、"侍女を若く可愛い子へ戻して欲しい。そうしないなら俺は戦わない”と言い、あの日見せた失態の原因は、全部騎士達から受けた虐めに拠るものだという持論を主張し続けているのだ。
引きこもりいて食事だけは三食しっかり食べるし、湯浴み嫌いなのは変わらない。勿論暴言を吐く事もだ。
最も、彼に就いているお姉様達は百戦錬磨の熟女達なので、洋平が何をどう言っても吠えても怒鳴っても、馬耳東風を決め込んでいるのみ。
それがかえって洋平の神経を逆撫でしているのだが、彼女達もそれを分かってやっているのだ。
何故なら、現在 洋平に就いている侍女達の中に、以前洋平からセクハラ被害を受けた若い侍女を身内にもつ者がいる。その者は、洋平に対して強い憤りを感じており、あわよくば洋平に復讐をしてやろうと思っているのだ。そして、その者の気持ちを他の熟女侍女達も知っており、彼女と一緒になって洋平に塩対応しているのだった。
また、騎士団長も、洋平が訓練所に来ない事を敢えて放っている。だが、王命により魔獣討伐隊が城を出立するとなった際は、現在の洋平の侍女達が、彼を強引に部屋から引きずり出してくれるであろうと思っているし、戦いの最前線の地に着いたら、洋平を樹木に括りつけ魔獣を誘き寄せる餌にでもしてやろうと思っているからだった。
そんな事を思っていた騎士団長は、勇達に近々魔獣が住む森に行き、D級レベルの魔獣を相手に実戦をする計画がある事を伝えた。
「腕が鳴る。」と勇は意気込み、「どんなのが出てくるか楽しみ~。」と一人はしゃぐ昴。また「日頃の成果を見せつけましょう。」とクールに言う一方で、愛子は「王子様が一緒じゃなきゃ行かなぁい。」とただをこね、昭弘は「生徒達の保護者として行きますが、参戦致しません。」と指導者として最もらしい事を言っているが、ただ戦いたくないだけの臆病者だ。
「実戦は本日より三日後である!勇者殿ご一同におかれましては、その日まで気力 魔力 体力を養っておかれたし。以上。散会!」
という騎士団長の言葉に、勇達は各々の部屋へと帰って行った。
そしてとうとう、魔獣討伐の腕試し日を迎えたのだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
47
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる