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閑話 悩める王太子
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突然、私に抱き締められ固まってしまっているマリアナリヴェリアーナ嬢の背中を優しく撫でながら、
「大丈夫、母上はお優しいから。あれくらいの事で怒らないよ。だから泣かないで?」
と私が言うと、
「本当……に?」
と言いながら、私を見上げてくる。
だがその瞳は、まだ涙で濡れていて、光を取り込みキラキラと光っていた。
それを見た私は、自身の中に溢れ出した囲ってしまいたいを押し殺し、
「本当だよ。ね?母上。怒ってなどいらっしゃいませんよね?」
とマリアナリヴェリアーナ嬢が怖がらない様に笑顔で母上に問えば、
「怒ってなどありませんよ、マリアナリヴェリアーナ公爵令嬢。さぁ、此方へおいでなさいな。そしてもっとよくお顔を見せて頂戴。まぁまぁ!なんて可愛いらしいのかしら?これではマイルス公爵も他所に出したくないと仰りそうですわね。そうではございませんか?エリアーナ様。」
とマリアナリヴェリアーナ嬢の頬にそっと手を置きながら、エリアーナ大叔母上に問いかける母上。
その問いに大叔母上は、
「アンドリュースは毎晩の様に、『マリアは他所にはやらん!』と申しては、妻のカタリーナに叱られておりますわ。」
「あらあら。それは愉快ですこと。」
と笑い合う母上と大叔母上を見ながら、(叔父上はマリアナリヴェリアーナ嬢を他所に出さない?それは嫌だ!マリアナリヴェリアーナ嬢は私が……。)と考えた私は、
「母上!いえ、王妃様。お願いがございます!」
「あら。どうかしまして?リシャール。」
「私、リシャール=ド=ヤンディエルの婚約者として、マリアナリヴェリアーナ公爵令嬢を所望致したく存じます。」
と声高に申し上げた。
私に抱き締められたまま ┄ いや、ただ単に私が離そうとしなかっただけだが ┄ 固まっていたマリアナリヴェリアーナ嬢が困惑した表情で私を見上げている。涙が止まっていたのは、驚きからだろう。
そんな彼女を見ながら、
「ごめんね、マリアナリヴェリアーナ様。でも私は、貴女の事が好きになってしまったのです。どうか私のお姫様になってくれませんか?」
と彼女の手を取り申せば、
「で、殿下……。」
と戸惑いながらも答えてくれるマリアナリヴェリアーナ嬢。
「リシャール。私の事は"リシャール”と呼んで欲しいな。」
「リシャール……様。」
「ありがとう。とても嬉しいよ。貴女の事は、"マリア”とお呼びしても?」
「はい、リシャール様。」
と言ってにっこりと笑うマリアの手の甲に唇を当てる。
「これからよろしくね?マリア。」
「はい!リシャール様。」
こうして私は、初対面で恋に落ちたマリアナリヴェリアーナ公爵令嬢と婚約したのだ。
今思えば早熟過ぎたなと思いはすれど、マリアへの想いはあのお茶会から12年経った今でも変わっていない。
それ故に、異世界人である出来損ないの女に等なんの興味も無いし、寧ろ色々言われ、不愉快でしかない。
あぁ早く討伐に行ってはくれないだろうか。
だが、先日の様子を騎士団長から聞いたところに拠ると、使えたのは勇者と賢者、そして魔法使いの三人のみで、彼等の教師と言っていた僧侶の男性と聖女の愛子は後方支援どころか、ずっと騎士団の後ろに隠れており、何もしなかったという。
そんな彼等がこの国をまもり、再び森の領域の封印をする等出来るわけが無いだろう。
「大丈夫、母上はお優しいから。あれくらいの事で怒らないよ。だから泣かないで?」
と私が言うと、
「本当……に?」
と言いながら、私を見上げてくる。
だがその瞳は、まだ涙で濡れていて、光を取り込みキラキラと光っていた。
それを見た私は、自身の中に溢れ出した囲ってしまいたいを押し殺し、
「本当だよ。ね?母上。怒ってなどいらっしゃいませんよね?」
とマリアナリヴェリアーナ嬢が怖がらない様に笑顔で母上に問えば、
「怒ってなどありませんよ、マリアナリヴェリアーナ公爵令嬢。さぁ、此方へおいでなさいな。そしてもっとよくお顔を見せて頂戴。まぁまぁ!なんて可愛いらしいのかしら?これではマイルス公爵も他所に出したくないと仰りそうですわね。そうではございませんか?エリアーナ様。」
とマリアナリヴェリアーナ嬢の頬にそっと手を置きながら、エリアーナ大叔母上に問いかける母上。
その問いに大叔母上は、
「アンドリュースは毎晩の様に、『マリアは他所にはやらん!』と申しては、妻のカタリーナに叱られておりますわ。」
「あらあら。それは愉快ですこと。」
と笑い合う母上と大叔母上を見ながら、(叔父上はマリアナリヴェリアーナ嬢を他所に出さない?それは嫌だ!マリアナリヴェリアーナ嬢は私が……。)と考えた私は、
「母上!いえ、王妃様。お願いがございます!」
「あら。どうかしまして?リシャール。」
「私、リシャール=ド=ヤンディエルの婚約者として、マリアナリヴェリアーナ公爵令嬢を所望致したく存じます。」
と声高に申し上げた。
私に抱き締められたまま ┄ いや、ただ単に私が離そうとしなかっただけだが ┄ 固まっていたマリアナリヴェリアーナ嬢が困惑した表情で私を見上げている。涙が止まっていたのは、驚きからだろう。
そんな彼女を見ながら、
「ごめんね、マリアナリヴェリアーナ様。でも私は、貴女の事が好きになってしまったのです。どうか私のお姫様になってくれませんか?」
と彼女の手を取り申せば、
「で、殿下……。」
と戸惑いながらも答えてくれるマリアナリヴェリアーナ嬢。
「リシャール。私の事は"リシャール”と呼んで欲しいな。」
「リシャール……様。」
「ありがとう。とても嬉しいよ。貴女の事は、"マリア”とお呼びしても?」
「はい、リシャール様。」
と言ってにっこりと笑うマリアの手の甲に唇を当てる。
「これからよろしくね?マリア。」
「はい!リシャール様。」
こうして私は、初対面で恋に落ちたマリアナリヴェリアーナ公爵令嬢と婚約したのだ。
今思えば早熟過ぎたなと思いはすれど、マリアへの想いはあのお茶会から12年経った今でも変わっていない。
それ故に、異世界人である出来損ないの女に等なんの興味も無いし、寧ろ色々言われ、不愉快でしかない。
あぁ早く討伐に行ってはくれないだろうか。
だが、先日の様子を騎士団長から聞いたところに拠ると、使えたのは勇者と賢者、そして魔法使いの三人のみで、彼等の教師と言っていた僧侶の男性と聖女の愛子は後方支援どころか、ずっと騎士団の後ろに隠れており、何もしなかったという。
そんな彼等がこの国をまもり、再び森の領域の封印をする等出来るわけが無いだろう。
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