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第五章 変わったヲタ
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『準備出来たぞ、のぞむ。いつでも大丈夫だ!』
『俺も準備出来たよ、のぞむ。』
『了解しました、カールソンさん。ルードリッヒさん。……では、冒険者の皆さんは、僕の合図でベアから離れて下さい。そして同時に魔導士の皆さんは、僕のベア迄の直線の両側に障壁を張って下さい。僕が撃った弾の流れ弾が冒険者の皆さんに当たらない様にする為です。出来るだけ頑丈にお願いします。』
『分かりました!此方はいつでも大丈夫です。』
『俺達ものぞむの指示に従う準備は出来てるぜ!』
ルードリッヒさん、カールソンさん、魔導士の皆さん、そして冒険者さん達の同意を得た僕は、ベアをじっと見つめ、その瞬間を待った。
数分後、その時は来た。
(来る!)
『冒険者は離れろ!!魔導士!障壁!』
僕は息を吸い込む為大きな口を開けようとするベアを見据えながら、仲間に指示を出した。
『3..2..1.. shoot!!』
ターン!ターン!
己を捉えている全ての蔦を焼き払おうと息を吸い込むベアの口と、急所であるベアの右胸目掛け、2発の弾丸を発射した。
2発の弾丸は、両側に張られた障壁の中心を真っ直ぐに突き進み、1発はベアの口内に、もう1発は、身の危険を察知したのか、ベアが身体を捩って弾丸を避けようとした為、弾の大部分が急所から少し外れてしまったが、散弾銃特性のおかげで、1部は急所近くに着弾したようだ。
まぁ、そもそも、致命傷を負わせる為の射撃では無いのだから、多少外れても問題は無い。
そんな事を思いながら目の前のベアの様子を見ていた僕は、
『ルードリッヒさん!カールソンさん!今だ!飛べ!!』
その声に反応した2人が大きくジャンプしたその時。
『魔導士!彼等を飛ばすんだ!!』
と指示した。
すると強い風がルードリッヒさん達を乗せ、彼等の身体を空中へ舞い上がらせた。
麻酔が上手く効いているらしく、ベアの動きが緩慢になっている。
『ルードリッヒさん!カールソンさん!とどめを!!』
と言うと、2人は魔導士が繰り出した風の上で、息のあった剣技を繰り広げた。
動きが鈍くなっているにも関わらず、己の生命の危険を察してか、前後の足に絡み付く蔦を引きちぎり、ルードリッヒさん達に向け鋭い爪で攻撃を仕掛けてくる。が、そんなベアの攻撃をさらりと交わしながら、ルードリッヒさんはベアの喉元をかっさばき、カールソンさんはベアの急所である右胸に自慢の剣を突き刺した。
あまりの見事な仕留め方に、僕は思わず拍手を送ってしまった。
2人がベアから離れるのと殆ど同時に、ベアが大量の血飛沫を上げ、ドォーンという地響きを上げながら、前のめりに倒れ、そして動かなくなった。
一瞬の沈黙。からの、「うわぁ~!!」という大歓声が辺りを包んだ。
死闘を繰り広げた満身創痍の冒険者達は、パーティーの如何を問わず抱き合い健闘をたたえ合った。
魔力の枯渇と戦いながらも、必死で冒険者達を支えた魔導士達も同様だ。
僕はといえば、作戦が上手くいった事からの安心感と、疲労と、緊張状態が切れてしまったせいか。その場に1人、崩れる様に座り込んでしまった。
「のぞむ君。お疲れ様でしたわ。やりましたわね。お見事な采配でしたわよ。私達が、この任務を成し遂げられましたのも、のぞむ君が……え?のぞむ君?のぞむ君?」
座り込んだ僕の傍に来て、笑顔で僕の事を褒めてくれ、そして細い腕で僕を抱き締めてくれたミランダさん。
だけど僕は、彼女のその優しい声を聞いた途端、安心感と疲れが一遍に来てしまった様で、そのまま彼女の腕の中で夢の世界へと落ちてしまった。
「まぁ。のぞむ君ったら。お可愛らしくていらっしゃいますこと。本当にお疲れ様、のぞむ君。ぐっすりお眠りなさい。」
と、満足気な笑みを浮かべながら目を瞑った、埃と汗で汚れている僕の寝顔をそっと撫でながら、微笑んでそう言っていたミランダさんの言葉など、僕は知る由もなかったんだ。
『俺も準備出来たよ、のぞむ。』
『了解しました、カールソンさん。ルードリッヒさん。……では、冒険者の皆さんは、僕の合図でベアから離れて下さい。そして同時に魔導士の皆さんは、僕のベア迄の直線の両側に障壁を張って下さい。僕が撃った弾の流れ弾が冒険者の皆さんに当たらない様にする為です。出来るだけ頑丈にお願いします。』
『分かりました!此方はいつでも大丈夫です。』
『俺達ものぞむの指示に従う準備は出来てるぜ!』
ルードリッヒさん、カールソンさん、魔導士の皆さん、そして冒険者さん達の同意を得た僕は、ベアをじっと見つめ、その瞬間を待った。
数分後、その時は来た。
(来る!)
『冒険者は離れろ!!魔導士!障壁!』
僕は息を吸い込む為大きな口を開けようとするベアを見据えながら、仲間に指示を出した。
『3..2..1.. shoot!!』
ターン!ターン!
己を捉えている全ての蔦を焼き払おうと息を吸い込むベアの口と、急所であるベアの右胸目掛け、2発の弾丸を発射した。
2発の弾丸は、両側に張られた障壁の中心を真っ直ぐに突き進み、1発はベアの口内に、もう1発は、身の危険を察知したのか、ベアが身体を捩って弾丸を避けようとした為、弾の大部分が急所から少し外れてしまったが、散弾銃特性のおかげで、1部は急所近くに着弾したようだ。
まぁ、そもそも、致命傷を負わせる為の射撃では無いのだから、多少外れても問題は無い。
そんな事を思いながら目の前のベアの様子を見ていた僕は、
『ルードリッヒさん!カールソンさん!今だ!飛べ!!』
その声に反応した2人が大きくジャンプしたその時。
『魔導士!彼等を飛ばすんだ!!』
と指示した。
すると強い風がルードリッヒさん達を乗せ、彼等の身体を空中へ舞い上がらせた。
麻酔が上手く効いているらしく、ベアの動きが緩慢になっている。
『ルードリッヒさん!カールソンさん!とどめを!!』
と言うと、2人は魔導士が繰り出した風の上で、息のあった剣技を繰り広げた。
動きが鈍くなっているにも関わらず、己の生命の危険を察してか、前後の足に絡み付く蔦を引きちぎり、ルードリッヒさん達に向け鋭い爪で攻撃を仕掛けてくる。が、そんなベアの攻撃をさらりと交わしながら、ルードリッヒさんはベアの喉元をかっさばき、カールソンさんはベアの急所である右胸に自慢の剣を突き刺した。
あまりの見事な仕留め方に、僕は思わず拍手を送ってしまった。
2人がベアから離れるのと殆ど同時に、ベアが大量の血飛沫を上げ、ドォーンという地響きを上げながら、前のめりに倒れ、そして動かなくなった。
一瞬の沈黙。からの、「うわぁ~!!」という大歓声が辺りを包んだ。
死闘を繰り広げた満身創痍の冒険者達は、パーティーの如何を問わず抱き合い健闘をたたえ合った。
魔力の枯渇と戦いながらも、必死で冒険者達を支えた魔導士達も同様だ。
僕はといえば、作戦が上手くいった事からの安心感と、疲労と、緊張状態が切れてしまったせいか。その場に1人、崩れる様に座り込んでしまった。
「のぞむ君。お疲れ様でしたわ。やりましたわね。お見事な采配でしたわよ。私達が、この任務を成し遂げられましたのも、のぞむ君が……え?のぞむ君?のぞむ君?」
座り込んだ僕の傍に来て、笑顔で僕の事を褒めてくれ、そして細い腕で僕を抱き締めてくれたミランダさん。
だけど僕は、彼女のその優しい声を聞いた途端、安心感と疲れが一遍に来てしまった様で、そのまま彼女の腕の中で夢の世界へと落ちてしまった。
「まぁ。のぞむ君ったら。お可愛らしくていらっしゃいますこと。本当にお疲れ様、のぞむ君。ぐっすりお眠りなさい。」
と、満足気な笑みを浮かべながら目を瞑った、埃と汗で汚れている僕の寝顔をそっと撫でながら、微笑んでそう言っていたミランダさんの言葉など、僕は知る由もなかったんだ。
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