バトロワゲーヲタの異世界無双物語

Saeko

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第五章 変わったヲタ

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完敗だった。

城へ帰る馬車の中。俺は……いや、俺達全員がそう思った。

討伐あの場に居た"渡瀬 望”という人物は、俺達の知っている男では無かった。まるで別人の様だった。
何故なら、俺達が知っている渡瀬は、デブで不細工で、髪もボサボサで、顔には沢山の面皰にきびが花を咲かせていて、いつも俯きおどおどしている奴だった。

でもさっき見た渡瀬は、余計な肉が全く無くなっていた。それどころか細マッチョだったし、顔にあった沢山の面皰も無く、髪もすっきりとカットされてて渡瀬に似合っていた。と言うか、正直男の俺から見ても、イケメンだった。

だが、そんな見た目なんかよりもっと変わっていたのは自信に満ち溢れていたその態度だ。
俺がどう文句を言おうとも、それに真っ向から向き合い、はっきりと正論をぶつけて対抗してきた。
しかも、怪我をした中島を助け、愛子を庇い、寺田の事も救った。その際の手際もる事ながら、魔獣討伐に関しても、作戦も采配も、判断力も行動力も、狙撃の腕も、何もかも完璧で、俺達が付け入る隙は微塵も無かった。ホント、"マジ完敗・・”その一言に尽きた。

「望くんてば、ほんとマジカッコよくなってた~。熊の炎から愛子を守ってくれた時とか、めちゃくちゃ良い匂いしたし~。あれって、何てブランドの香水かな?しかも~、愛子が痛くないようにて、地面に転がる時とか~、ギューって。もぉ~。愛子~マジで望くんの事好きになっちゃった~。」
両手を胸の前で組んで、夢見心地で言う愛子。
そんな彼女をシラケた顔で見ていると、
「少しも敵いませんでした。」
「僕も~。なんか気迫に押されちゃったよね~。」
賢も昴も顔を見合せ、渡瀬のことを回想している。
"気圧された”。この俺でさえも、渡瀬あいつの気迫に気圧された一人だ。
悔しいが、認めるしかないだろう。

「一体……。俺のこの火傷はちゃんと治るのか?」
と、全身火だるまになった寺田は、自分のチリチリになった髪の毛を触りながら、そんな事を言っていた。
渡瀬に助けられたにも関わらず、渡瀬に対する礼や賛辞では無く、相変わらず自分の心配しかしない寺田に呆れてしまう。
でもまぁ、治りはするが、何事もなかったように綺麗さっぱり治る事はないだろうと、騎士団所属のヒーラーが言ってたから、多分、寺田の頭皮の火傷は赤みは引いても、アフロヘアになった髪はそのままだろう。
もしかすると、寺田の髪を治さなかった(治させなかった)のは、元の世界で理不尽に渡瀬に嫌がらせをしていた寺田への、渡瀬からの最大級の復讐なのかもしれないな。まさかとは思うが、あの時、熊が吐き出した炎から、愛子だけ守って、寺田を放置したのも、渡瀬の復讐なのかもしれない。
だが、そんな事を考えていた俺は、次の賢の言葉で、とんでもない事実を知る事になるのだ。
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