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第五章 変わったヲタ
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「そう言えば……。戦いの場の上空に無数の鳥が飛んでいましたが、勇と昴は気付いていましたか?」
と、昴と話し込んでいた賢が口を開いた。
「鳥?そんなのいたなんて、全然気が付かなかった~。」
と言う昴に俺も同意すると、
「そうですか。まぁ、俺も渡瀬に言われて知ったのですが、実際ずっと俺達の頭上を飛んでいたんです。で、渡瀬が言うには、その鳥は魔法で作った道具で、動画を録画する機能が付いているのだそうです。」
「え?動画を?」
と聞き返す愛子に、
「えぇ、そうです。音声は拾えない様ですが、画像の録画が出来るそうで、俺達が元いた世界にあるドローンの様な物だと……。」
と答えた賢は、続けてこう言った。
「渡瀬曰く、『鳥型魔道具で撮られた画像は、冒険者達の戦いぶりを後からギルド長が見る為に使用するのですが、きっと、相田君達"勇者御一行様”の戦いぶりも録画していると思いますよ。』と……。」
「俺達の戦いぶりもか?」
「はい、そうです。きっと撮られてるんだと思います。渡瀬達が戦っている間、戦いをずっと見ているだけだった俺達の頭上でも、ずっと鳥型魔道具は飛んでいましたから。」
ずっと何も出来ずに突っ立っていた俺達の様子を撮られていたってか。
勇者なのに……しかも自分が間違った攻撃をしたせいで、敵に塩を贈る形で攻撃された事、そして、その攻撃から逃げられなかった仲間を一人も助けられずにいた情けない俺の様子も全部……。
だが、自分が不甲斐なくて落ち込んでいた俺の耳に、とんでもない発言が飛び込んで来た。それは、
「ねぇねぇ賢く~ん。その動画って~。愛子も見られるのかなぁ。なんならスマホにその動画送って欲しい……って…愛子のスマホ……死んでたんだ~。」
という愛子の能天気な言葉だけでは無く、
「スマホと言えは、渡瀬の奴、スマホで俺の顔を撮影したぞ。どうしてスマホが使える?と聞いたら、『充電したからですよ。』と涼しい顔で言い返してきやがった。全く本当にムカつく奴だ。今度会ったら、絶対問い詰めてやる!」
と言う寺田の言葉もだ。
「スマホを充電したですか?渡瀬がそう言ったと?」
と、寺田に問う賢に
「あぁ。確かにそう言ってた。」
と寺田が頷き乍ら答えている。
「スマホ~、望くんてば、どうやって充電したのかなぁ~。愛子のもして欲しいんだけどぉ~。」
と右手の人差し指を顎に当て、首を傾げて言う愛子に、
「彼奴の事だ。どうせちまちま使って、電池を保たせたんだろ。何も不思議な事は無いさ。」
と馬車の中でふんぞり返り乍ら寺田はそう言っているが、それは無いなと俺は思った。
何故なら、俺達がこの世界に来て早3ヶ月余りが経っている。
それだけの期間の中で、どんなに気をつけていたって、自然にバッテリーは減っていくものだ。
それに、いくら元の世界でフル充電してあったのだとしても、更に、こっちでは常に電源を落としていたとしても、それでも充電が3ヶ月保つなんて事はないと思う。
だが寺田が言うとおり、渡瀬が普通にスマホを使っていたとしたら……。
俺達は……いや王や城の神官達は、とんでもない奴を追放してしまったのかもしれない。
もしかしたら、真の勇者は渡瀬だったのかもしれない……。
馬車の中では、相変わらず愛子が能天気な事を言い、寺田は自分の髪をしきりと触ってはぶつぶつ言っている。が、俺はそんな2人の発言を右から左へ受け流し乍ら、これから城へ帰ってからの王からの話しを想像し、一人不安と戦っていた。
~勇者御一行(主に 勇)side 終~
と、昴と話し込んでいた賢が口を開いた。
「鳥?そんなのいたなんて、全然気が付かなかった~。」
と言う昴に俺も同意すると、
「そうですか。まぁ、俺も渡瀬に言われて知ったのですが、実際ずっと俺達の頭上を飛んでいたんです。で、渡瀬が言うには、その鳥は魔法で作った道具で、動画を録画する機能が付いているのだそうです。」
「え?動画を?」
と聞き返す愛子に、
「えぇ、そうです。音声は拾えない様ですが、画像の録画が出来るそうで、俺達が元いた世界にあるドローンの様な物だと……。」
と答えた賢は、続けてこう言った。
「渡瀬曰く、『鳥型魔道具で撮られた画像は、冒険者達の戦いぶりを後からギルド長が見る為に使用するのですが、きっと、相田君達"勇者御一行様”の戦いぶりも録画していると思いますよ。』と……。」
「俺達の戦いぶりもか?」
「はい、そうです。きっと撮られてるんだと思います。渡瀬達が戦っている間、戦いをずっと見ているだけだった俺達の頭上でも、ずっと鳥型魔道具は飛んでいましたから。」
ずっと何も出来ずに突っ立っていた俺達の様子を撮られていたってか。
勇者なのに……しかも自分が間違った攻撃をしたせいで、敵に塩を贈る形で攻撃された事、そして、その攻撃から逃げられなかった仲間を一人も助けられずにいた情けない俺の様子も全部……。
だが、自分が不甲斐なくて落ち込んでいた俺の耳に、とんでもない発言が飛び込んで来た。それは、
「ねぇねぇ賢く~ん。その動画って~。愛子も見られるのかなぁ。なんならスマホにその動画送って欲しい……って…愛子のスマホ……死んでたんだ~。」
という愛子の能天気な言葉だけでは無く、
「スマホと言えは、渡瀬の奴、スマホで俺の顔を撮影したぞ。どうしてスマホが使える?と聞いたら、『充電したからですよ。』と涼しい顔で言い返してきやがった。全く本当にムカつく奴だ。今度会ったら、絶対問い詰めてやる!」
と言う寺田の言葉もだ。
「スマホを充電したですか?渡瀬がそう言ったと?」
と、寺田に問う賢に
「あぁ。確かにそう言ってた。」
と寺田が頷き乍ら答えている。
「スマホ~、望くんてば、どうやって充電したのかなぁ~。愛子のもして欲しいんだけどぉ~。」
と右手の人差し指を顎に当て、首を傾げて言う愛子に、
「彼奴の事だ。どうせちまちま使って、電池を保たせたんだろ。何も不思議な事は無いさ。」
と馬車の中でふんぞり返り乍ら寺田はそう言っているが、それは無いなと俺は思った。
何故なら、俺達がこの世界に来て早3ヶ月余りが経っている。
それだけの期間の中で、どんなに気をつけていたって、自然にバッテリーは減っていくものだ。
それに、いくら元の世界でフル充電してあったのだとしても、更に、こっちでは常に電源を落としていたとしても、それでも充電が3ヶ月保つなんて事はないと思う。
だが寺田が言うとおり、渡瀬が普通にスマホを使っていたとしたら……。
俺達は……いや王や城の神官達は、とんでもない奴を追放してしまったのかもしれない。
もしかしたら、真の勇者は渡瀬だったのかもしれない……。
馬車の中では、相変わらず愛子が能天気な事を言い、寺田は自分の髪をしきりと触ってはぶつぶつ言っている。が、俺はそんな2人の発言を右から左へ受け流し乍ら、これから城へ帰ってからの王からの話しを想像し、一人不安と戦っていた。
~勇者御一行(主に 勇)side 終~
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