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第八章 王との謁見(相応しいのは誰だ?直接対決編)

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そう思って、のぞむくんは……って、彼がいた場所を見たの。
そしたら、さっきのおっきな男の人が、のぞむくんをおんぶしてどっかへ行っちゃうところだったの。だから愛子、のぞむくんを追っかけようとしたのに、綺麗すぎて怖い笑顔の貴族の人に止められて、
「ねぇ。何処へ行くつもり?さっきからミランダがきみのご同胞を治しているんだよ?お礼くらい言うべきなんじゃないのかな?」
って言うの。

だから仕方なくミランダにお礼しようとしたのに、
それわたくしではなく、のぞむ君に仰って下さいまし。この方々をお治ししておりますのは、のぞむ君が私にそう願われたからですの。そうでなければ、元の世界でのぞむ君を虐げておられた貴女がたを、私が助けるわけがございませんわ。」
「え?そ、そんな事、な、何で知って…「るのか?でございますか?その様な事は当たり前ですわ。のぞむ君の身体中に出来ていた古い打ち身や打撲の痕を治したのは、このわたくしですもの。」え?打ち身や打撲?」
「えぇ、そうですわ。貴女方は、寄ってたかって無抵抗なのぞむ君を痛めつけたのでございましょう?違いまして?」
と言って、ミランダは昴くんの足を治した後、すっとその場に立ち上がると、凛とした表情で、
「それですのに、のぞむ君は貴女方の治癒を望まれたのです。何が勇者ですか!何が賢者ですの?弱い者虐めをなさってこられた方々に、勇者や賢者を名乗って欲しくはございませんわ!勇者とは……真の勇者とは、のぞむ君の様な方が名乗るべきなのです!」
そう言ったの。

「ただ単に、強ければ良い、賢ければ良いのではないのです。それだけでは民を護る事など出来ません!真の勇者は…真の賢者は、強く優しい心根の持ち主でなければなりません!のぞむ君の様な方がなるべきなのです!魔力の有る無しは問題ではございませんわ。違いまして?国王陛下。」
そう言ったミランダは、王様の方を真っ直ぐ見たの。

すると王様は、
「そうであるな。誠、ミランダの言うとおりである。」
て言い出したの。
って事は、勇者は勇じゃなくてのぞむくんになるの?
やったぁ!勇者はのぞむくんで、愛子は聖女様。最強じゃん。
なんてワクワクしてたのに、
「この勝負。勇者対決はのぞむ殿が、そして聖女対決はミランダが勝者とする!」
って。
はぁ?何言っちゃってんの?王様ってばどうしちゃったわけ?

「ちょっと王様!そんなの…「有り難きお言葉。ありがとう存じます。陛下。」はぁ?」
って愛子の言葉に被せて、ミランダがお礼言ってるし。
もぉわけ分かんないんだけど?
とか思ってたら、
「君の負けだよ?」
ってミランダのお兄ちゃんがまた、綺麗な笑顔でそう言ってきたの。
「え?愛子……負けたの?」
「そうだね。だって君は、聖女としての役割りを放棄しだろ?」
「……放棄……。」
「そう……放棄だ。君は何もしなかった。いや違うな。本当は聖女の力なんて
無かった。違うかな?」
と言ってミランダのお兄ちゃんはニヤリと笑ったの。

「ち、違うもん!愛子はちゃんと聖女の力「があったのなら、それを使うべきだった。陛下の前で見せるべきだった。でも君はそれをしなかった。だから陛下は、君の負けだと、君を聖女とは認めない。そう仰ったんだよ。」…………。」

愛子は……負けたの?
聖女様にはなれなかったの?

この人が言ったとおり、みんなの中から、小さく小さくなって、愛子って存在が消えちゃうの?

「いやぁぁぁぁ!」


叫び声をあげ、その場で気絶した愛子は、聖女不適合の烙印を押されてしまった。そして、王宮の中に与えられた部屋から出ることは無かった。

~聖女 愛子side 終~
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