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第三章 逆行~中学 高校~
第十三話 何故だ
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旭陽と連れ立って歩く姫菜子の姿を遠くで見つめる祥太郎は、イライラとしながら綺麗に刈られた植え込みを蹴り上げた。
(何故だ!何故俺ではダメでソイツは大丈夫なんだよ!男がダメなんじゃなかったのか?姫菜子!)
祥太郎は姫菜子の視界にも入れさせて貰えないままこの日を迎えた。
亮太郎の成人を祝うパーティに姫菜子も来ると聞いた時は、やっと自分も姫菜子と話せると思った。
亮太郎の傍にいれば、挨拶に来る姫菜子と話が出来ると思っていたからだ。
だが現実は、祥太郎のそんな淡い期待を見事に打ち砕いた。
予め手が回っていたのか?慎也は姫菜子をがっちりとガードしていたし、祥太郎は父親が呼んだ取り引き先の重役達の子供達と、簡易見合いのような状態に陥っており、姫菜子に接触する隙すらなかった。
祥太郎は回転寿司宜しく、入れ代わり立ち代わり目の前に立つ令嬢に愛想笑いを浮かべ、令嬢達が話す中身がすっからかんの自慢話や、自身の親がどれだけ素晴らしい立場にいて、その娘である事が幸せだとつらつらと語るのを、さも興味深そうな態度で頷きながら聞くという地獄の時間を過ごしていたのだ。
そんな祥太郎の目線は亮太郎の前で愉しげに話す姫菜子から外れることは無く、顔で笑って心は怒りで燃えていた。
そんな祥太郎の表情が突然固まった。
「どうかしたのかな?祥太郎君。」
目の前の頭頂部の頭皮が丸見えで小柄で内臓脂肪で膨れ上がった腹を揺すりながら、表情が変わった祥太郎を見上げる某企業の重役が尋ねているが、当の祥太郎はそれに気づかない。
何故なら姫菜子の様子がおかしいのに気付いたからだ。
小さな身体をガタガタと震わせている姫菜子の様子が、背が高く相手と自身との間に何人も人がいたとしても見ることが出来る祥太郎。
姫菜子が心配で傍に行こうとするも、禿げデブがそれを阻止する。
「一体どうされたというのかな?」
「あ。い、いえ。ちょっと身内に話をしたい事が出来まして」
なんとか言い訳をしてその場を離れようとするも、
「祥太郎さん。あちらに美味しそうなスイーツがありますの。一緒に頂きませんこと?」
と父親に似てチビで子豚の様に丸々とした娘が、いつの時代の言葉だよ?最近流行りの異世界モノ小説の見過ぎじゃね?と思える様な言葉遣いで祥太郎の右腕にに撓垂れ掛かる。
子豚の重みで身体が右に片寄りそうになるのを堪える祥太郎は、禿げデブ重役の
「そうだな。美味い物を食べながら親睦を深めてくるといい。愛子。」
の言葉に元気を貰った子豚娘に、引き摺られる様にサンルームへと連行されて行った。
祥太郎はサンルームへ到着する間、チラチラと後ろを振り向きながら遠くなる姫菜子を確認する。
すると姫菜子は、慎也に連れられまた祥太郎から離れた所へ連れて行かれるところだった。
祥太郎は子豚をサンルーム近くのテーブルに座らせ、用を足したら直ぐに戻ると嘘をつき、屋敷の裏を回って庭に戻ってきた。
姫菜子達を見つけ、足早に近くに行こうとするも、姫菜子を抱き締めている旭陽を見て足を止めた。
旭陽の腕の中の姫菜子の表情は祥太郎から見る事は出来なかったが、旭陽が姫菜子を見つめる顔を見れば、互いに愛し合っている事は一目瞭然だった。
何故?
祥太郎にはその言葉しか浮かばない。
何故だ!何故だ!何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ!!
祥太郎は植え込みを蹴り上げた後、自室に戻り、そのままパーティが終わるまで出てくる事はなかった。
(何故だ!何故俺ではダメでソイツは大丈夫なんだよ!男がダメなんじゃなかったのか?姫菜子!)
祥太郎は姫菜子の視界にも入れさせて貰えないままこの日を迎えた。
亮太郎の成人を祝うパーティに姫菜子も来ると聞いた時は、やっと自分も姫菜子と話せると思った。
亮太郎の傍にいれば、挨拶に来る姫菜子と話が出来ると思っていたからだ。
だが現実は、祥太郎のそんな淡い期待を見事に打ち砕いた。
予め手が回っていたのか?慎也は姫菜子をがっちりとガードしていたし、祥太郎は父親が呼んだ取り引き先の重役達の子供達と、簡易見合いのような状態に陥っており、姫菜子に接触する隙すらなかった。
祥太郎は回転寿司宜しく、入れ代わり立ち代わり目の前に立つ令嬢に愛想笑いを浮かべ、令嬢達が話す中身がすっからかんの自慢話や、自身の親がどれだけ素晴らしい立場にいて、その娘である事が幸せだとつらつらと語るのを、さも興味深そうな態度で頷きながら聞くという地獄の時間を過ごしていたのだ。
そんな祥太郎の目線は亮太郎の前で愉しげに話す姫菜子から外れることは無く、顔で笑って心は怒りで燃えていた。
そんな祥太郎の表情が突然固まった。
「どうかしたのかな?祥太郎君。」
目の前の頭頂部の頭皮が丸見えで小柄で内臓脂肪で膨れ上がった腹を揺すりながら、表情が変わった祥太郎を見上げる某企業の重役が尋ねているが、当の祥太郎はそれに気づかない。
何故なら姫菜子の様子がおかしいのに気付いたからだ。
小さな身体をガタガタと震わせている姫菜子の様子が、背が高く相手と自身との間に何人も人がいたとしても見ることが出来る祥太郎。
姫菜子が心配で傍に行こうとするも、禿げデブがそれを阻止する。
「一体どうされたというのかな?」
「あ。い、いえ。ちょっと身内に話をしたい事が出来まして」
なんとか言い訳をしてその場を離れようとするも、
「祥太郎さん。あちらに美味しそうなスイーツがありますの。一緒に頂きませんこと?」
と父親に似てチビで子豚の様に丸々とした娘が、いつの時代の言葉だよ?最近流行りの異世界モノ小説の見過ぎじゃね?と思える様な言葉遣いで祥太郎の右腕にに撓垂れ掛かる。
子豚の重みで身体が右に片寄りそうになるのを堪える祥太郎は、禿げデブ重役の
「そうだな。美味い物を食べながら親睦を深めてくるといい。愛子。」
の言葉に元気を貰った子豚娘に、引き摺られる様にサンルームへと連行されて行った。
祥太郎はサンルームへ到着する間、チラチラと後ろを振り向きながら遠くなる姫菜子を確認する。
すると姫菜子は、慎也に連れられまた祥太郎から離れた所へ連れて行かれるところだった。
祥太郎は子豚をサンルーム近くのテーブルに座らせ、用を足したら直ぐに戻ると嘘をつき、屋敷の裏を回って庭に戻ってきた。
姫菜子達を見つけ、足早に近くに行こうとするも、姫菜子を抱き締めている旭陽を見て足を止めた。
旭陽の腕の中の姫菜子の表情は祥太郎から見る事は出来なかったが、旭陽が姫菜子を見つめる顔を見れば、互いに愛し合っている事は一目瞭然だった。
何故?
祥太郎にはその言葉しか浮かばない。
何故だ!何故だ!何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ!!
祥太郎は植え込みを蹴り上げた後、自室に戻り、そのままパーティが終わるまで出てくる事はなかった。
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