105 / 315
第104話「祝勝会③」
しおりを挟む
皆様、明けましておめでとうございます。
本年も宜しくお願い致しますm(_ _)m
Ma☆Ri☆Aの三人が、人間離れした化け物達の強さについて話をしていると、急に背後から野太い声がした。
「待たせたな」
三人が振り返ると、大佐がまだ湯気が立ち上る『シャケの姿焼き(ミニサイズバージョン)』を持って立っていた。
「遅くなってすまん。(怒って)行ったかと思ったよ」
それを見たアネットは、ニヤリと笑って言った。
「とんでもねぇ、待ってたんだ……あ!あとビール三つ追加で、OK?」
「OK!」
そして、アネットがビールの追加を頼むと、小気味良い返事が返ってきた。
「わー美味しそうです!」
いつもお上品な料理ばかりのマリーは、目の前にあるワイルドな一品に、目を輝かせた。
「はいぃ、たまにはシャケもいいですねぇ」
肉料理を推していた隣のリゼットも、現物を見たらあっさり考えを変えた。
「さ、食べましょ!」
直後、アネットが促し、三人は料理に手をつけた。
そして、驚くべきことに、シャケは肉食女子達によって、あっという間に食べ尽くされてしまった。
それはまるで、誰かの未来を暗示するかのように。
その後、追加のビールが来たところで、
「さて、じゃあ改めて……かんぱーい!」
「「かんぱーい!」」
アネットの音頭で再び乾杯した。
「プハァ!さて、何の話だったっけ?……まあ、いいっか。ええっと、次は……恋バナでもするー?」
そして、彼女が次の話題を決めようとした、その時。
「あの……確かに今回、恋バナの予定だったのですが……変更になりました」
横からマリーが、おずおずと言った。
「「え?何で?」」
「えーと、建前は『店の雰囲気が落ち着かないので恋バナは次回にしよう』ということになっています」
「で、本音は?」
そこで、すかさずアネットが聞くと、
「恋バナ関係のリクエストが多すぎて、作者の構想が纏まりきらなかったんですよ……。だから、恋バナは後回しなのです」
マリーが目を逸らしながら、気まずそうに答えた。
「いや、ぶっちゃけ過ぎでしょ……」
「ないですぅ」
と、呆れ顔のアネットとリゼット。
しかし、マリーはそんな彼女達をスルーして、
「だから今回は、他にリクエストがあった、この作品の制作裏話をメタ的に語ります!」
開き直ってそう言った。
「……そこまでハッキリいうと、いっそ清々しいわね……」
「フッ、人間開き直らなければ、やっていられませんから……」
マリーは皮肉げな笑みを浮かべ、呟いた。
「そ、そう……」
「で、改めて本題に入ろうかと思ったのですが……」
「が?」
「実は裏話が多過ぎて、チョイスに困っています……」
「え?マジ?この作品、どれだけ闇が深いのよ……」
「聞いたら驚くことばかりですよ?例えば……今現在進行形のこの企画、作者はどの時期から考えていたか、分かりますか?」
「そりゃあ、結構前からじゃないの?一か月前とか?」
アネットが少し考えた後で、そう答えるが、
「残念、不正解です。というか、掠りもしていないです」
マリーは容赦なく言った。
「くっ!……もしかして、半年前からとか?」
今度はちょっと大胆にいくが、マリーは予想外のことを言った。
「いえ、逆なのです」
「逆?」
「はい、第104話投稿の……三十分前です」
「……は?はあああああああ!?アイツ頭おかしいんじゃないの!?」
それを聞いて、アネットは絶叫した。
「はい、クレイジーだと思います。しかも、直前に始めた年末年始連続投稿宣言もありますし……」
「そうよねー、って、まさか!そっちも……?」
と、恐る恐る彼女が聞いた。
「いえ、流石にそっちは一日前です」
「いや、それもダメじゃん」
「そうですね」
と、そこでマリーは話を切り替える。
「さて、全部話しているとキリがないので、ここはドカン!と大きなネタをいきますね!」
「おお!何か面白そう!それでそれで?」
「はい、それは……この作品の『当初の構想』です!」
と、マリーは自信を持って答えたのだが、アネットの反応はイマイチだ。
「へー、何か普通ね、それってそんなに面白いネタなの?」
「まあまあ、取り敢えずお聞きなさいな。それで、まず変更前のタイトルをご存知の読者様はお分かりだと思いますが、実はこの作品、元々は婚約破棄した王子が口八丁手八丁で、上手く廃嫡されつつ、大金を用意し、その後知識チートを使いながら辺境を開拓し大成功、更に商売を始めてそれが、後に巨大な商社になる、という話だったのです」
「ふむふむ、それで何が違うの?大筋は一緒じゃないの?もしかしてネタバレ?」
「全く違いますよ!話は最後まで聞きなさい。それで、確かに字面では同じような感じに見えるのですが……内容はまるで違います」
「へー、例えば?」
「はい、例えば最初期の構想では、なんと『セシロクマ』が存在しません」
「え?アイツ、メインヒロイン的なポジじゃないの!?」
「はい、違います。それどころか、『儚く聡明な公爵令嬢セシル』という『脇役』は、開始早々に退場するのです」
「「え?えええええ!?」」
アネ・リゼは驚愕した。
「婚約破棄されたその『セシル』は、主人公にアシストされて、実は密かに想いを寄せていた第二王子フィリップと、無事結ばれて幸せになりました、めでたしめでたし、で退場です」
「え!だって、あのフィリップよ!?」
「因みにその世界線のフィリップは、本当に文武両道、才色兼備の完璧人間という設定です」
「なんか想像つかないわ……」
「私もですぅ」
「因みフィリップもセシルと一緒に退場します」
「あ、それはどうでもいい」
「はい、私も同感です。で、主人公を寝取った淫乱ピンクこと、アネットは……」
「誰が淫乱ピンクよ!アタシ、ふしだら淫売キャラはとっくに卒業した筈なんだけど!?」
それを聞いたアネットは、涙目でマリーに掴みかかった。
「く、苦しい……だ、だから、違う世界線の話ですって!」
「ちょっとぉ!アネット様ぁ!落ち着いて下さいぃ~」
リゼットが慌ててそれを止めに掛かるが、尚もアネットは暴れている。
「これが黙っていられるかっての!」
と、そんな彼女に対してマリーは、更に残酷な事実を告げる。
「……それで、その『アネット』は冒頭で捕まって、そのまま退場です」
「……は?」
余りにあんまりな言葉に、アネットは絶句した。
「その後どうなったとか、一切無しでそのまま忘れられて終了です」
そして、マリーの更なる言葉で、アネットは愕然としてしまう。
「酷い、酷すぎる……それならまだ、大勢の前で派手に断罪された方がマシだわ……」
が、それを聞いたマリーは、
「何をいっているのですか?レオニーやリゼットなんて、名前すら出て来ないのですよ?」
更なる被害者の名前を挙げた。
「ふぇ!?そんなぁ、酷いですぅ~」
自分には関係なさそうですぅ~、とか少し余裕だったリゼットが、アネット同様に絶望した。
「うわ、私より悲惨な人がいた……よしよしリゼット、泣いちゃダメよ。で、話の続きは?」
逆にアネットが、少し回復した。
「はい、主人公は知識チートと要領の良さで、なんとか廃嫡時に大金を持って出て行くことに成功して、その後どこかの辺境で開拓を始めます。そして、どんどん仲間とヒロインを増やしていきます」
「ありきたりね」
「で、その過程でやっと、メインヒロイン達が出てきます」
「え?じゃあ本当にお城のパートって、プロローグ的な扱いなの?」
「はい、その通りです。そもそもお城のパートは、長くても二十話以内に終わらせる予定だったのです」
「は?じゃあ何で今、百話以上掛かってもお城のパートが終わってないのよ?」
アネットは呆れ顔で、素朴な疑問を口にした。
「ですから、それは違う世界線の話ですよ!……で、その後メインの開拓パートでは、主人公が知識チートで成功しまくり、お金ガッポガッポ、併せてどんどんヒロインが増えて、ハーレムを形成します」
「うわー、ベタな『チーレムもの』ね」
アネットは、げんなりしながらそう言った。
「はい、しかもなんと、そのヒロイン達の全員が年下の美少女で、次々と主人公の義妹になって行くのです」
「どこのシ◯プリよ?」
「つまり、当初の構想では、知識チートと有り余るお金、そして可愛くて優秀な義妹達と世界最強の商社を作る、という話だったのです」
「うわぁー、誰にも読んで貰えなさそうね……」
「でしょうね……ですが、蓋を開けたらあら不思議、こんなノリと勢いしかないどころか恋愛ものかすら怪しいコメディの出来上がりですよ!全く、訳がわかりません……とまあ、こんな感じです」
そこまで語ったマリーが、やれやれと肩をすくめて見せた。
「凄く、コメントし辛いわね……」
一方アネットは、なんとも言えない顔で、それだけ呟いた。
と、そこでマリーが補足を始めた。
「あ、因みにこれは余談ですが『世界最強の商社』という部分は、主人公の商会のモデルを、イギリス東インド会社にする予定だったからです」
「で?」
「で、その東インド会社は元々、独占的に貿易をする会社だったのですが、途中で株式会社なのに軍隊を持った統治機構に変貌していくのです。だからそれにあやかって世界最強の商社と、タイトルにつけたらしいですよ?」
「どうでもいいわよ……あ!ところで、マリー」
「はい、何でしょうか?」
「マリーはいつ退場するの?やっぱり私達と一緒に?それとも出てこないとか?」
と、アネットが何気なくそう聞くと、マリーはキョトンとしながら答えた。
「え?何を言っているのですか?メインヒロインの私が退場する筈ないじゃないですか」
「……は?今、なんて?」
「私はメインヒロインとして、お城パートでは愛するお義兄様を密かにサポートし、辺境へ引っ越してからは義妹達、通称シスターズの長女としてヒロイン達を纏め、お義兄様に一番近いところで活躍します」
「ちょっと!?」
「しかも私、その世界線だと十六歳の設定で、ナイスバディの美人さんなのです!」
と、マリーは得意げな顔で、一気にそこまで語った。
当然そんな理不尽な格差を見せつけられたアネット達は、身体をワナワナと振るわせながら、
「ざけんじゃないわよ!何自分だけいいお思いしてんのよ!?コラァ!」
激怒して叫び出した。
「ちょ、ちょっとアネット!落ち着い……もぎゅ!い、いはいれす!やめへくださひー!」
そして、腹いせにマリーのほっぺをぎゅうぎゅうと、つねり始めた。
「うるさいわよ!これはアタシだけじゃなくて、冷遇された現ヒロイン全員の恨みよ!」
「や、やめへー!いはは、あ、りぜっほ、たすへてー!」
と、そこにリゼットが近づき、そして、
ぎゅう。
「もぎょ!?」
反対側のほっぺを摘んだ。
「今だけはぁ!今だけはぁ!!たとえマリー様でも許さないのですぅ!」
そして、涙目のリゼットが叫んだ。
「りぜっほ!?」
まさかの裏切りに、マリーは困惑し、
「存在することすら叶わなかった者の心の痛み、そのほっぺで受け止めなさい!」
最後にアネットが、どこかのラスボスっぽく、そんなセリフを叫んだのだった。
「もぎゅ!?」
※今更ですが、この居酒屋パートは、映画「コ◯ンドー」本編か、ようつべでコマ◯ドーのセリフ集的な動画を見て頂くと、より楽しめます(^^)
本年も宜しくお願い致しますm(_ _)m
Ma☆Ri☆Aの三人が、人間離れした化け物達の強さについて話をしていると、急に背後から野太い声がした。
「待たせたな」
三人が振り返ると、大佐がまだ湯気が立ち上る『シャケの姿焼き(ミニサイズバージョン)』を持って立っていた。
「遅くなってすまん。(怒って)行ったかと思ったよ」
それを見たアネットは、ニヤリと笑って言った。
「とんでもねぇ、待ってたんだ……あ!あとビール三つ追加で、OK?」
「OK!」
そして、アネットがビールの追加を頼むと、小気味良い返事が返ってきた。
「わー美味しそうです!」
いつもお上品な料理ばかりのマリーは、目の前にあるワイルドな一品に、目を輝かせた。
「はいぃ、たまにはシャケもいいですねぇ」
肉料理を推していた隣のリゼットも、現物を見たらあっさり考えを変えた。
「さ、食べましょ!」
直後、アネットが促し、三人は料理に手をつけた。
そして、驚くべきことに、シャケは肉食女子達によって、あっという間に食べ尽くされてしまった。
それはまるで、誰かの未来を暗示するかのように。
その後、追加のビールが来たところで、
「さて、じゃあ改めて……かんぱーい!」
「「かんぱーい!」」
アネットの音頭で再び乾杯した。
「プハァ!さて、何の話だったっけ?……まあ、いいっか。ええっと、次は……恋バナでもするー?」
そして、彼女が次の話題を決めようとした、その時。
「あの……確かに今回、恋バナの予定だったのですが……変更になりました」
横からマリーが、おずおずと言った。
「「え?何で?」」
「えーと、建前は『店の雰囲気が落ち着かないので恋バナは次回にしよう』ということになっています」
「で、本音は?」
そこで、すかさずアネットが聞くと、
「恋バナ関係のリクエストが多すぎて、作者の構想が纏まりきらなかったんですよ……。だから、恋バナは後回しなのです」
マリーが目を逸らしながら、気まずそうに答えた。
「いや、ぶっちゃけ過ぎでしょ……」
「ないですぅ」
と、呆れ顔のアネットとリゼット。
しかし、マリーはそんな彼女達をスルーして、
「だから今回は、他にリクエストがあった、この作品の制作裏話をメタ的に語ります!」
開き直ってそう言った。
「……そこまでハッキリいうと、いっそ清々しいわね……」
「フッ、人間開き直らなければ、やっていられませんから……」
マリーは皮肉げな笑みを浮かべ、呟いた。
「そ、そう……」
「で、改めて本題に入ろうかと思ったのですが……」
「が?」
「実は裏話が多過ぎて、チョイスに困っています……」
「え?マジ?この作品、どれだけ闇が深いのよ……」
「聞いたら驚くことばかりですよ?例えば……今現在進行形のこの企画、作者はどの時期から考えていたか、分かりますか?」
「そりゃあ、結構前からじゃないの?一か月前とか?」
アネットが少し考えた後で、そう答えるが、
「残念、不正解です。というか、掠りもしていないです」
マリーは容赦なく言った。
「くっ!……もしかして、半年前からとか?」
今度はちょっと大胆にいくが、マリーは予想外のことを言った。
「いえ、逆なのです」
「逆?」
「はい、第104話投稿の……三十分前です」
「……は?はあああああああ!?アイツ頭おかしいんじゃないの!?」
それを聞いて、アネットは絶叫した。
「はい、クレイジーだと思います。しかも、直前に始めた年末年始連続投稿宣言もありますし……」
「そうよねー、って、まさか!そっちも……?」
と、恐る恐る彼女が聞いた。
「いえ、流石にそっちは一日前です」
「いや、それもダメじゃん」
「そうですね」
と、そこでマリーは話を切り替える。
「さて、全部話しているとキリがないので、ここはドカン!と大きなネタをいきますね!」
「おお!何か面白そう!それでそれで?」
「はい、それは……この作品の『当初の構想』です!」
と、マリーは自信を持って答えたのだが、アネットの反応はイマイチだ。
「へー、何か普通ね、それってそんなに面白いネタなの?」
「まあまあ、取り敢えずお聞きなさいな。それで、まず変更前のタイトルをご存知の読者様はお分かりだと思いますが、実はこの作品、元々は婚約破棄した王子が口八丁手八丁で、上手く廃嫡されつつ、大金を用意し、その後知識チートを使いながら辺境を開拓し大成功、更に商売を始めてそれが、後に巨大な商社になる、という話だったのです」
「ふむふむ、それで何が違うの?大筋は一緒じゃないの?もしかしてネタバレ?」
「全く違いますよ!話は最後まで聞きなさい。それで、確かに字面では同じような感じに見えるのですが……内容はまるで違います」
「へー、例えば?」
「はい、例えば最初期の構想では、なんと『セシロクマ』が存在しません」
「え?アイツ、メインヒロイン的なポジじゃないの!?」
「はい、違います。それどころか、『儚く聡明な公爵令嬢セシル』という『脇役』は、開始早々に退場するのです」
「「え?えええええ!?」」
アネ・リゼは驚愕した。
「婚約破棄されたその『セシル』は、主人公にアシストされて、実は密かに想いを寄せていた第二王子フィリップと、無事結ばれて幸せになりました、めでたしめでたし、で退場です」
「え!だって、あのフィリップよ!?」
「因みにその世界線のフィリップは、本当に文武両道、才色兼備の完璧人間という設定です」
「なんか想像つかないわ……」
「私もですぅ」
「因みフィリップもセシルと一緒に退場します」
「あ、それはどうでもいい」
「はい、私も同感です。で、主人公を寝取った淫乱ピンクこと、アネットは……」
「誰が淫乱ピンクよ!アタシ、ふしだら淫売キャラはとっくに卒業した筈なんだけど!?」
それを聞いたアネットは、涙目でマリーに掴みかかった。
「く、苦しい……だ、だから、違う世界線の話ですって!」
「ちょっとぉ!アネット様ぁ!落ち着いて下さいぃ~」
リゼットが慌ててそれを止めに掛かるが、尚もアネットは暴れている。
「これが黙っていられるかっての!」
と、そんな彼女に対してマリーは、更に残酷な事実を告げる。
「……それで、その『アネット』は冒頭で捕まって、そのまま退場です」
「……は?」
余りにあんまりな言葉に、アネットは絶句した。
「その後どうなったとか、一切無しでそのまま忘れられて終了です」
そして、マリーの更なる言葉で、アネットは愕然としてしまう。
「酷い、酷すぎる……それならまだ、大勢の前で派手に断罪された方がマシだわ……」
が、それを聞いたマリーは、
「何をいっているのですか?レオニーやリゼットなんて、名前すら出て来ないのですよ?」
更なる被害者の名前を挙げた。
「ふぇ!?そんなぁ、酷いですぅ~」
自分には関係なさそうですぅ~、とか少し余裕だったリゼットが、アネット同様に絶望した。
「うわ、私より悲惨な人がいた……よしよしリゼット、泣いちゃダメよ。で、話の続きは?」
逆にアネットが、少し回復した。
「はい、主人公は知識チートと要領の良さで、なんとか廃嫡時に大金を持って出て行くことに成功して、その後どこかの辺境で開拓を始めます。そして、どんどん仲間とヒロインを増やしていきます」
「ありきたりね」
「で、その過程でやっと、メインヒロイン達が出てきます」
「え?じゃあ本当にお城のパートって、プロローグ的な扱いなの?」
「はい、その通りです。そもそもお城のパートは、長くても二十話以内に終わらせる予定だったのです」
「は?じゃあ何で今、百話以上掛かってもお城のパートが終わってないのよ?」
アネットは呆れ顔で、素朴な疑問を口にした。
「ですから、それは違う世界線の話ですよ!……で、その後メインの開拓パートでは、主人公が知識チートで成功しまくり、お金ガッポガッポ、併せてどんどんヒロインが増えて、ハーレムを形成します」
「うわー、ベタな『チーレムもの』ね」
アネットは、げんなりしながらそう言った。
「はい、しかもなんと、そのヒロイン達の全員が年下の美少女で、次々と主人公の義妹になって行くのです」
「どこのシ◯プリよ?」
「つまり、当初の構想では、知識チートと有り余るお金、そして可愛くて優秀な義妹達と世界最強の商社を作る、という話だったのです」
「うわぁー、誰にも読んで貰えなさそうね……」
「でしょうね……ですが、蓋を開けたらあら不思議、こんなノリと勢いしかないどころか恋愛ものかすら怪しいコメディの出来上がりですよ!全く、訳がわかりません……とまあ、こんな感じです」
そこまで語ったマリーが、やれやれと肩をすくめて見せた。
「凄く、コメントし辛いわね……」
一方アネットは、なんとも言えない顔で、それだけ呟いた。
と、そこでマリーが補足を始めた。
「あ、因みにこれは余談ですが『世界最強の商社』という部分は、主人公の商会のモデルを、イギリス東インド会社にする予定だったからです」
「で?」
「で、その東インド会社は元々、独占的に貿易をする会社だったのですが、途中で株式会社なのに軍隊を持った統治機構に変貌していくのです。だからそれにあやかって世界最強の商社と、タイトルにつけたらしいですよ?」
「どうでもいいわよ……あ!ところで、マリー」
「はい、何でしょうか?」
「マリーはいつ退場するの?やっぱり私達と一緒に?それとも出てこないとか?」
と、アネットが何気なくそう聞くと、マリーはキョトンとしながら答えた。
「え?何を言っているのですか?メインヒロインの私が退場する筈ないじゃないですか」
「……は?今、なんて?」
「私はメインヒロインとして、お城パートでは愛するお義兄様を密かにサポートし、辺境へ引っ越してからは義妹達、通称シスターズの長女としてヒロイン達を纏め、お義兄様に一番近いところで活躍します」
「ちょっと!?」
「しかも私、その世界線だと十六歳の設定で、ナイスバディの美人さんなのです!」
と、マリーは得意げな顔で、一気にそこまで語った。
当然そんな理不尽な格差を見せつけられたアネット達は、身体をワナワナと振るわせながら、
「ざけんじゃないわよ!何自分だけいいお思いしてんのよ!?コラァ!」
激怒して叫び出した。
「ちょ、ちょっとアネット!落ち着い……もぎゅ!い、いはいれす!やめへくださひー!」
そして、腹いせにマリーのほっぺをぎゅうぎゅうと、つねり始めた。
「うるさいわよ!これはアタシだけじゃなくて、冷遇された現ヒロイン全員の恨みよ!」
「や、やめへー!いはは、あ、りぜっほ、たすへてー!」
と、そこにリゼットが近づき、そして、
ぎゅう。
「もぎょ!?」
反対側のほっぺを摘んだ。
「今だけはぁ!今だけはぁ!!たとえマリー様でも許さないのですぅ!」
そして、涙目のリゼットが叫んだ。
「りぜっほ!?」
まさかの裏切りに、マリーは困惑し、
「存在することすら叶わなかった者の心の痛み、そのほっぺで受け止めなさい!」
最後にアネットが、どこかのラスボスっぽく、そんなセリフを叫んだのだった。
「もぎゅ!?」
※今更ですが、この居酒屋パートは、映画「コ◯ンドー」本編か、ようつべでコマ◯ドーのセリフ集的な動画を見て頂くと、より楽しめます(^^)
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,629
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる