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42. 10年分のペナルティ
しおりを挟む自分の宣言を聞きながら、うつ伏せになっている健一の肩が震えている事にふと気がついた望。
「ねえ、健一どうしたの?」
「・・・」
「ちょっと~」
「アハハハ・・・」
「何笑ってんのよッ!」
顔を伏せたまま笑い続ける健一を呆然と眺めるしか無かった望である。
×××
「ああ。おかしい・・・でもスッキリした」
「なにがよ~?!」
すっかりむくれ顔になっている望に又笑いがこみ上げてくるルーカス。
「だってさ、ククッ・・・ごめん、10年笑って無かったからさ顔が引き攣りそう」
「え?! 10年笑ってないの?」
10年笑わずに生きるって、尋常じゃないんじゃ? と思う望・・・
「ああ。とうとうついた渾名が、氷の騎士団長とか冷血騎士だぞ? そんな渾名を付けられる男が笑ってるところ想像できるか?」
「・・・まぁ、確かに」
「実に望らしい反応で嬉しいよ。俺は」
ついムッとへの字口になてしまう。
「全然変わってなくて安心した」
「あっそう!」
ソファーに座り直した黒髪の美丈夫が、
「望、おいで」
と言って、両手を広げて誘ってくる。
迷った挙げ句、顔を横に向けたまま彼の誘いに乗って長い足の間に腰掛けた望。
「おい、何で横向きだよ? こっち向いて」
「だってさ~・・・」
――顔面偏差値が向上し過ぎなのよッ!
腹の中でつい、声にならない叫びを上げ顔が赤くなるのは仕方がないだろう。
「ずっと俺の事を忘れずにいてくれてありがとう望」
「うぅ・・・」
「俺の贈ったネックレスがお守りなんだろう?」
「・・・うん」
「フランス行きも俺絡み?」
「うん。バスの転落事故の10周忌があるってネットニュースで知ったの。参加したいと思って」
「恋人は? いたの?」
「うん」
「・・・だれ?」
「稲田健一って人がここに」
そう言って自分の胸に手を置く望と、それを見て、彼女の身体を抱きしめるルーカス。
「今から俺が立候補してもイイ? お前の恋人にもう1回。実は顔も名前も変わっちゃったけど」
「うん。いいよ。殴ってごめん」
「いいよ。10年分待たせた分のペナルティにしては軽いもんだった」
『チュッ』とリップ音がして、望の頬に彼の唇の温かさが伝わって来る――足の間に望を置いたまま、ギュッともう1度後ろから強く抱きしめて・・・
「あ~・・・押し倒したい」
思わず本音が漏れた・・・。
「もー・・・」
望も嫌がってはいない。
2人はそっと唇と唇を合わせた。
「勤務中なんだよな~・・・」
「・・・そうね」
2人揃って真面目か・・・
×××
一方、時間は遡りコチラは隣のリビングでドアの前でウロウロするのは涼子である。
もちろん望の部屋のドアの前。
「ねえ、カインさん、望さん大丈夫かなぁ・・・なんかルーカスさんと望さん事情がありそうだったから部屋出ちゃったけどさ~」
「大丈夫だろ。小侯爵は基本紳士だから」
きれいな顔で微笑んだ後で、真顔になるカイン。
「それより、リョーコはどうするんだ?」
「え?」
キョトンとした顔で振り返り首を傾げる涼子。
「何のこと?」
「城の大広間で騒ぎになったアレだよ。意中の人がオレだって宣言しただろ?」
「あ。アレの事ですか!」
カインの座るソファーの正面にやってきて、向かい側にポスンと座る涼子。
「アレのせいでお前は俺のパートナーと認識された、じゃねえ反対だわ。俺がお前のパートナーと・・・違う! 言い方変えてもこれじゃ一緒じゃねーか!」
ガシガシと頭を掻く美少年・・・多分。
「うん。そうだね」
ニコニコ笑いながら涼子は頬杖を付いた。
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