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40 その後のリーナ〜里奈視点①〜
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「おいッ! 死にたいのか新入りッ!」
すぐ横で魔獣の群れを騎士が剣で薙ぎ払いながら入団したばかりの女魔術師に大声を上げた。
「きゃあぁああ!」
女性は思わず持っていた杖を投げ出しそうになったが、これを無くしたら次は支給されないと眼鏡を掛けた事務官に言われた事を急に思い出したようで動きを止めた。
辺境伯領の魔の森の北の端から少しだけ離れた王領区の森は大元である魔の森に比べれば比較的弱い魔獣しか現れない。
しかしながら他の森より本拠地に隣接している事もあり中級クラスの魔獣が現れることもある。
その為定期的な森の生態系の調査は欠かせないのだ。
学園の卒業を祝うパーティーで王太子シルファの不興を買ったリーナは、現在騎士団の探索部隊に混じって戦闘中。
「なんでこんな事に・・・」
涙目になりながら狼に似た魔獣に向けて雷属性のスピアーを彼女が打ち込むと、狼型の魔獣の大きな体躯が痺れたらしく動きが不自然に止まる。
「よし。いいぞ、その調子だ!」
半ばヤケクソで狼の群れに魔法のスピアーを撃ち込んでいくリーナの周りの騎士達がどんどん狼の魔獣にトドメを刺していくのが目に映る。
真っ黒い魔獣の血がその辺りに飛び散るが彼らは躊躇もせずにサクサクと慣れた手付きで死体から魔石を取り出していく。
彼女は気が遠くなりそうになるのを堪えながら騎士団の備品の杖を強く握り顔色を悪くして溜息をつき呟いた。
「ああ。どうしてこうなっちゃったの?」
×××
平民の両親から産まれたリーナは教会で行う魔力判定の儀で高い魔力を持っていると判断され、王立学園へと進み王太子シルファに見初められて悪役令嬢を断罪して王太子妃になる予定のヒロインだった。
それが彼女が知っている『乙女ゲーム』の世界だった筈。
それに前世の自分が気がついたのは北の塔の事務官から杖を受け取った時だった・・・
つまり不運なことに今のリーナは転生前の記憶がシルファの逆鱗に触れて僻地に飛ばされた後に蘇ったわけである。
最初は一体自分が何処にいるのかもわからず、まわりを見回してオレンジや水色の髪色の人間が自分の周りにいることに驚いた。
窓に写った自分の姿に違和感を覚えて何処かで見たことがあるような・・・ と首を傾げていると、あっという間に転移魔法陣で最前線に送り込まれ巨大な魔獣に向かって魔法を撃てと言われて気絶した・・・
その場で事務官に報告が届き再検査の結果、精神が魔力に伴っていないと判断されて王領区の森の騎士団に配置換えとなった。
いっそ前世の自分を思い出さないほうが今のリーナにとっては幸せだっただろう。
平和な日本の女子高生だった彼女にとっては異世界なんて化け物のいる世界でしか無いからだ。
「元のリーナに戻りたい・・・」
「オイッ、又来たぞッ!」
倒した狼の魔獣の死体の向こう側に、灰色がかった緑色の肌をしたゴブリンの群れが・・・
「んぎゃいやぁあああッ!!」
『ゴブリン=女の敵っっ』(←心の副音声)
叫び声と共に巨大な石の塊をゴブリンの群れの上に一気に落とすリーナ。
「「「「「すげえー!」」」」
一瞬でゴブリンの小集団が壊滅した・・・
「早く、リーナ戻ってきてぇ・・・」
今のリーナの切実な願いである。
合掌。
すぐ横で魔獣の群れを騎士が剣で薙ぎ払いながら入団したばかりの女魔術師に大声を上げた。
「きゃあぁああ!」
女性は思わず持っていた杖を投げ出しそうになったが、これを無くしたら次は支給されないと眼鏡を掛けた事務官に言われた事を急に思い出したようで動きを止めた。
辺境伯領の魔の森の北の端から少しだけ離れた王領区の森は大元である魔の森に比べれば比較的弱い魔獣しか現れない。
しかしながら他の森より本拠地に隣接している事もあり中級クラスの魔獣が現れることもある。
その為定期的な森の生態系の調査は欠かせないのだ。
学園の卒業を祝うパーティーで王太子シルファの不興を買ったリーナは、現在騎士団の探索部隊に混じって戦闘中。
「なんでこんな事に・・・」
涙目になりながら狼に似た魔獣に向けて雷属性のスピアーを彼女が打ち込むと、狼型の魔獣の大きな体躯が痺れたらしく動きが不自然に止まる。
「よし。いいぞ、その調子だ!」
半ばヤケクソで狼の群れに魔法のスピアーを撃ち込んでいくリーナの周りの騎士達がどんどん狼の魔獣にトドメを刺していくのが目に映る。
真っ黒い魔獣の血がその辺りに飛び散るが彼らは躊躇もせずにサクサクと慣れた手付きで死体から魔石を取り出していく。
彼女は気が遠くなりそうになるのを堪えながら騎士団の備品の杖を強く握り顔色を悪くして溜息をつき呟いた。
「ああ。どうしてこうなっちゃったの?」
×××
平民の両親から産まれたリーナは教会で行う魔力判定の儀で高い魔力を持っていると判断され、王立学園へと進み王太子シルファに見初められて悪役令嬢を断罪して王太子妃になる予定のヒロインだった。
それが彼女が知っている『乙女ゲーム』の世界だった筈。
それに前世の自分が気がついたのは北の塔の事務官から杖を受け取った時だった・・・
つまり不運なことに今のリーナは転生前の記憶がシルファの逆鱗に触れて僻地に飛ばされた後に蘇ったわけである。
最初は一体自分が何処にいるのかもわからず、まわりを見回してオレンジや水色の髪色の人間が自分の周りにいることに驚いた。
窓に写った自分の姿に違和感を覚えて何処かで見たことがあるような・・・ と首を傾げていると、あっという間に転移魔法陣で最前線に送り込まれ巨大な魔獣に向かって魔法を撃てと言われて気絶した・・・
その場で事務官に報告が届き再検査の結果、精神が魔力に伴っていないと判断されて王領区の森の騎士団に配置換えとなった。
いっそ前世の自分を思い出さないほうが今のリーナにとっては幸せだっただろう。
平和な日本の女子高生だった彼女にとっては異世界なんて化け物のいる世界でしか無いからだ。
「元のリーナに戻りたい・・・」
「オイッ、又来たぞッ!」
倒した狼の魔獣の死体の向こう側に、灰色がかった緑色の肌をしたゴブリンの群れが・・・
「んぎゃいやぁあああッ!!」
『ゴブリン=女の敵っっ』(←心の副音声)
叫び声と共に巨大な石の塊をゴブリンの群れの上に一気に落とすリーナ。
「「「「「すげえー!」」」」
一瞬でゴブリンの小集団が壊滅した・・・
「早く、リーナ戻ってきてぇ・・・」
今のリーナの切実な願いである。
合掌。
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