異端の巫子

小目出鯛太郎

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黒い太陽

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 俺の方がびっくりした猫みたいに物陰に隠れた。いや、隠れる必要なんてないんだけど驚きすぎて。

 この暗い世界でロベリオと会っても何一つ良いことは無いだろう。この事が知れたらアルテア殿下は激怒するだろうし、俺はこの力を使えなくされる気がする。自由に外にでられなくされて土に触れなくなりそうだ。
 
 俺は呼吸をゆっくりにして、何も考えないようにした。巫子を探す細い声はそのうち聞こえなくなった。


 変な事ばかりに気を取られがちだったけど、ロベリオの言葉に気になるものがあった。『王座なんて高望みしないから』ってロベリオはどうしてあんな事を言ったんだろう。
 王座を望むってことは、アルテア殿下と対立するってことだろう?

 えーっとなんだっけ、インフェリス公爵家からきた手紙の文書がやっと頭の中で結びついた。『…インフェリス公爵家にはロベリオと名乗る庶子はいない。側室でもない娼婦がそのような事を吹聴し当家も迷惑している…』昔は王様だったこともあるインフェリス公爵家。


 今の王家はトラスヴォラス。

 どうしてだろう。変だ。ロベリオを見た時、勝手に黒い太陽に思えた。

 アルテア様を見た時、初めて会った時に育ての良さが滲み出ているような高貴な…でも巻毛の良い家の子って印象だった。
 
 アルテア殿下が国の花のダリアを刺繍された上着を着ているのを見た時に、花束みたいに思えた、すごく似合っていた。なのにどうしてだろう、アルテア殿下が白い太陽、白でなければ黄金の太陽のように思えない。変だな…太陽は王家の象徴だったような気がするんたけど。

 

…正しき王のもとに


 俺の考えを邪魔した声はひび割れて枯れていた。俺がダリアを折ってしまったから?

 
 酷い頭痛がして、その痛みは忘れかけた熱中症の脱水の時の痛みに似ていた。朦朧として、頭に金属の輪をかけたように痛くて…痛くて…。

「巫子、巫子、屋敷の中に入りますよ、温室の中が暑くなりすぎたのですね」


 俺はその声を聞いて安心した。そっと抱えられてゆるゆると揺れながら運ばれる。額にひんやりとした物が乗せられ、口の中にほんのり甘い飲み物が流れる。


 もし。
 もし昨日、ダリアの囁いた言葉『王はそこではない』ってそれを真に受けて花の囁きの導きに従っていたら、俺はこの暗い影の街のどこにたどり着いただろう?


 もしかしてトラスヴォラス王家が支配する今の王宮には行かなかったんじゃない?正しい王家の後継がいる場所に連れて行かれたんじゃない?…ははは。まさかそんな御伽噺みたいな事はないか。

 だってなんだか凄く嫌だ。
 アルテア殿下に王の気質を感じないなんてそんなのあまりにも失礼だ。

 
 だらだらと口の端から水が溢れる。ダリアに、深紅のダリアに水をやらなくちゃいけない気がする。ヘベスが花の首を落としてしまう前に。ヘベス、ダリアの花を切っちゃだめだよ、と俺は言ったかな。ヘベスには聞こえたかな、返事の声は俺には聞こえなかった。
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