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樟脳
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朽木があまりにも虫を怖がるので、鋼は少しばかり後悔した。
彼自身は欠片も虫に脅かされぬ存在であるので、木のあやかしの虫に対する恐怖というものを小さく考えすぎていた。ようやく少し笑うようになったのに、怯えた亀の子のように手足を縮めてしまい、目をぎゅっと閉じている。
鋼が離れようとすると鋼の着物の裾を掴んでいる。掴んでいる指が可哀そうなほどに震えている。
「朽木、俺の勘違いだった、虫などいない、気のせいだった。ほらもう大丈夫大丈夫」
とんとんと指の腹で背をたたき、髪を撫でても朽木は一言もしゃべらず、目を合わせようとしても瞼を閉じてしまう。
鋼は朽木を抱っこしたまま立ち上がり、部屋を移動した。
その途中で胸いっぱいに朽木のほんのりと甘い香りを堪能した。
朽木の身体の奥に潜んだ、甘い蜜。鋼がまだ味わうことのできない蕩ける蜜の香り。
大きな箪笥ばかり置いた部屋に向かうとすんと鼻を鳴らし、一つの箪笥の棚を引き出した。
淡い色の花唐柄や薄水色の椿柄など鋼が着るにはあまり好きではない着物の入った引き出しの中に白い紙に包んだものがちょんと乗っている。
楠から作った虫よけの樟脳だった。
匂いが独特のため、鋼はあまり好きではないのだが仕方なかった。
「ほら、朽木、特別なお薬だぞ。この樟脳の匂いが嫌いで虫はもう寄ってこないぞ」
ん、と小さな声がして朽木の手が白い紙をくしゃっと握った。
朽木の淡い甘い香りが、樟脳の強い匂いにかき消されてしまった。
「さ、縁側で陽に当たろうか」
香りが消えてしまったのを残念に思いながら促すと、朽木はこくんと頷いた。
縁側でも朽木は鋼にぴったりとくっついて離れなかった。
太腿の上に抱き寄せられ、鋼の広い胸に顔を寄せて、陽に背中を照らされて身じろぎもせずじっとしている。
鋼の硬い部分が朽木の柔らかい部分に触れても、全く気が付かぬように動かない。
焦りすぎたと鋼は悔悟した。
朽木のここに、みつむしがいると囁いて、きっとむしを取ってと言ってくるはずの朽木の小さな蜜の壺に指を挿れて、優しく掻き混ぜるつもりでいた。耳殻と耳朶を食むより丹念に時間をかけて、この身体に快楽を覚えさせる。
昼の陽の高いうちから二人裸で横になって、朽木の身体に陽をあてて気持ち良くして、ぴちゃぴちゃと音を立てながら指を抜き差し動かして目合ひの真似事をするはずだった。指では届かぬ奥へ虫がかくれてしまったと、指より長いもので奥から掻き出すつもりでいた。
朽木の心地良い場所をたくさん見つけてその全てに悦楽の種を植え付けて、鋼の淫らな愛を注いで一晩どころか、それこそ三日でも四日でも、離れずに繋がって朽木の最奥に鋼の雄の形を覚え込ませたかった。
朽木の密の香りが硬い鋼を狂わせた。
俺はこんないやらしい事ばかりを考える男ではなかったはずだと思っても、鋼の歪な雄は硬く盛り上がり朽木の柔らかい場所に挿入りたがっていた。
邪魔な着物に隔てられて、しかし鋼の剛直は膨らみ勃起した。
朽木の重みと儚い熱に腰をすりつける。下から押し上げるように、小刻みに揺らすように。
「…んっ」
朽木が夢うつつのような、猥りがましい鋼の動きに感じたような声を漏らした。
処女膜を突き抜けるようにこの着物を割いて中に埋める事ができたら良いのにと鋼は朽木に雄をすりつける。
朽木の身体が鋼の腕の中でぴくんと震えた。戸惑ったように目を開いた朽木は気まずそうに身体をずらそうとした。
鋼が朽木の着物の裾を掴んでそろりと持ち上げる。
二人の身体は繋がってはいないが、重なっていた場所にどちらの漏らしたものかわからぬ染みが広がっていた。
彼自身は欠片も虫に脅かされぬ存在であるので、木のあやかしの虫に対する恐怖というものを小さく考えすぎていた。ようやく少し笑うようになったのに、怯えた亀の子のように手足を縮めてしまい、目をぎゅっと閉じている。
鋼が離れようとすると鋼の着物の裾を掴んでいる。掴んでいる指が可哀そうなほどに震えている。
「朽木、俺の勘違いだった、虫などいない、気のせいだった。ほらもう大丈夫大丈夫」
とんとんと指の腹で背をたたき、髪を撫でても朽木は一言もしゃべらず、目を合わせようとしても瞼を閉じてしまう。
鋼は朽木を抱っこしたまま立ち上がり、部屋を移動した。
その途中で胸いっぱいに朽木のほんのりと甘い香りを堪能した。
朽木の身体の奥に潜んだ、甘い蜜。鋼がまだ味わうことのできない蕩ける蜜の香り。
大きな箪笥ばかり置いた部屋に向かうとすんと鼻を鳴らし、一つの箪笥の棚を引き出した。
淡い色の花唐柄や薄水色の椿柄など鋼が着るにはあまり好きではない着物の入った引き出しの中に白い紙に包んだものがちょんと乗っている。
楠から作った虫よけの樟脳だった。
匂いが独特のため、鋼はあまり好きではないのだが仕方なかった。
「ほら、朽木、特別なお薬だぞ。この樟脳の匂いが嫌いで虫はもう寄ってこないぞ」
ん、と小さな声がして朽木の手が白い紙をくしゃっと握った。
朽木の淡い甘い香りが、樟脳の強い匂いにかき消されてしまった。
「さ、縁側で陽に当たろうか」
香りが消えてしまったのを残念に思いながら促すと、朽木はこくんと頷いた。
縁側でも朽木は鋼にぴったりとくっついて離れなかった。
太腿の上に抱き寄せられ、鋼の広い胸に顔を寄せて、陽に背中を照らされて身じろぎもせずじっとしている。
鋼の硬い部分が朽木の柔らかい部分に触れても、全く気が付かぬように動かない。
焦りすぎたと鋼は悔悟した。
朽木のここに、みつむしがいると囁いて、きっとむしを取ってと言ってくるはずの朽木の小さな蜜の壺に指を挿れて、優しく掻き混ぜるつもりでいた。耳殻と耳朶を食むより丹念に時間をかけて、この身体に快楽を覚えさせる。
昼の陽の高いうちから二人裸で横になって、朽木の身体に陽をあてて気持ち良くして、ぴちゃぴちゃと音を立てながら指を抜き差し動かして目合ひの真似事をするはずだった。指では届かぬ奥へ虫がかくれてしまったと、指より長いもので奥から掻き出すつもりでいた。
朽木の心地良い場所をたくさん見つけてその全てに悦楽の種を植え付けて、鋼の淫らな愛を注いで一晩どころか、それこそ三日でも四日でも、離れずに繋がって朽木の最奥に鋼の雄の形を覚え込ませたかった。
朽木の密の香りが硬い鋼を狂わせた。
俺はこんないやらしい事ばかりを考える男ではなかったはずだと思っても、鋼の歪な雄は硬く盛り上がり朽木の柔らかい場所に挿入りたがっていた。
邪魔な着物に隔てられて、しかし鋼の剛直は膨らみ勃起した。
朽木の重みと儚い熱に腰をすりつける。下から押し上げるように、小刻みに揺らすように。
「…んっ」
朽木が夢うつつのような、猥りがましい鋼の動きに感じたような声を漏らした。
処女膜を突き抜けるようにこの着物を割いて中に埋める事ができたら良いのにと鋼は朽木に雄をすりつける。
朽木の身体が鋼の腕の中でぴくんと震えた。戸惑ったように目を開いた朽木は気まずそうに身体をずらそうとした。
鋼が朽木の着物の裾を掴んでそろりと持ち上げる。
二人の身体は繋がってはいないが、重なっていた場所にどちらの漏らしたものかわからぬ染みが広がっていた。
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