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【デカい腹抱えて勇者から逃走中! (オメガバース)】
しおりを挟む異世界召喚されたオメガは、アルファ勇者に捨てられて、再び現代日本に戻ってきた賢者だ。
いや、自分に愛してると告白しておいて、あとから来たおっぱいデカい聖女に乗り換えたアイツを捨ててやったのだ。いつまでもヒートが来ない?このままでは王家の存続が?あいつは勇者で王子様でもあった。
魔王を倒した祝賀会で、賢者の俺に告白しておいて性女じょない、聖女にあっさり乗り換えたことを大暴露した上でこっちに戻ってきてやったけどな。あとのことなど知らん。
こっちに戻ればあっちでは一年ちょいの長い旅だったのに、たったひと月の行方不明で親は大騒ぎしてた。
高一の夏休みでよかったというか、夏休み楽しめなかったな~というのが俺の感想だ。ちなみにヒートが来なかったのであいつにカケラでも身体を許してなかったのはよかった。チューはしたけどな。思いだして散々うがいしてやったぜ。
そんな俺も大学行って、それなりの企業に就職して、社畜とはいわないまでも、働くわりにはオチンギンあげてくださいの毎日。気がつけば29……若い子から見りゃ立派なおじさんになるんだろうか?なんてエコバッグにはいったコンビニ弁当をガサガサさせながらのアパート帰り。
おやかた空から女の子が! ならぬ空から男が! なんて叫ぶ間もなく、いきなり降ってきた男を、俺は思わず風魔法をを発動させて受けとめた。
魔法?いやあっちならともかくこっちの世界では使えないはずなのに、なんで使えるんだ?
とにかくふわりと地面に横たえた、その男の顔を見て俺はギョッとした。金髪碧眼顔だけはいい! 背も高い手足は長い! 忘れもしない勇者だったのだ。
「賢者よ、あなたを探していた」
「今さら俺になんのようだ!」
俺は叫んでそのまま立ち去ろうとしたが、伸びた腕に後ろからがっちり抱きしめられた。
「離せよ! 警察呼ぶぞ!」
叫んで俺は考えた。異世界人の勇者を警察に引き渡していいのか?いや、こいつにそんなこと考えなくていい! どうして頭がおかしい奴と病院で行きだろうし。
「すまない」
「いまさら謝られても」
「祖父の非礼はわびる。祖父も最後まであなたにした仕打ちを後悔していた」
「はぁ!?」
なんとびっくりこっちの世界じゃ十数年の年月、あっちじゃ数十年の年月が流れていたらしい。で、こいつは勇者の孫の勇者だと。
ええい! ややこしい。前の奴は先代で、こいつは当代でいいか……と。
とりあえずと安アパートの部屋に勇者様をあげて話をきけば、再び魔王が復活しあちらの世界は危機だという。魔王復活早いな。
「あなたがこちらの世界に去ったあと、父は王位継承を放棄して、魔界との境を防衛する辺境伯となった」
“聖賢者”と呼ばれる俺様を裏切って、聖女を選んだんだから、たとえ魔王討伐を果たしてもそりゃ責任とらされるよな~と思う。聖賢者って自分でいって恥ずかしいが、俺の実力は召喚された歴代賢者の中で一番と言われていたのだ。
さらに、あちらでは男女の繋がりよりもアルファとオメガの繋がりが優先される。これはあちらの女神様の祝福を受けた関係だとされるからだ。それを断ち切って別の相手を選ぶのも、たとえ王位継承者といえど無視出来ない行為だ。
俺もわかっててそれを暴露してこっちに帰ってきたんだけどな。
「俺を恨んでいるのか?」
俺は当代に聞いた。
「なぜあなたを恨まねばならない?祖父は最後まであなたを裏切ったことを後悔していた。王位継承権を放棄したのも彼自らだ」
自分から放棄した……という言葉に俺は目を見開いた。
「魔王討伐はなされ、将来の王妃は聖女である。だから賢者であるあなたが暴露したこと消えた事実を隠蔽して、そのまま父を王にしようという意見も多かった」
「……だろうな」
あちらの世界は絶対王政の専制君主国家だ。もみ消そうと思えばいくらでももみ消せる。俺だってそれも計算していた。
それでも貴族達や神官、諸外国の特使の記憶にはあの大暴露爆弾は残る。王様と王妃となってせいぜいがしばらく肩身の狭い思いをすればいい。……ぐらいの気持ちではあった。
「祖父はあなたが消えて目が覚めたのだ。勇者としての己に恥じ入るようなことをしたのだと。だから一生を辺境の守りに捧げた」
「そういえば聖女様は?」
俺はふと気になってきいた。聖女の力は並だったが、あの自分こそ一番という女が、はたして先代の王位継承放棄を承知したのか?と。
「……先代の聖女は祖父が王位継承を放棄したとたんに、祖父と別れて神殿に残った。そして、父に代わり王となった弟君……私からみれば大叔父様の愛妾となった」
「はぁ!?」
ええっ! あの女、あっさり勇者捨てたうえに、そのあとの王様の妾になったのかよ?と思う。その上に……。
「さらにいうならば、彼女以外が生んだ王子は“なぜか”次々と早世し、彼女の息子が王となった。彼女は大妃(おおきさき)様と尊称で呼ばれていまだ存命だ。後宮のおくから政を操っている」
「…………」
そこまでいくとたいした出世だぜ聖女様と思う。それどこの西太后だよ。
「そういえば、先代聖女っていうことは、当代の聖女はもう呼ばれたということか?」
「ああ、彼女は大妃派に取り込まれている。そして彼女の孫である王子を勇者だと指名した」
「はあ?だが、お前は自分が当代の勇者だって……つっ!」
どくん……とそのとき俺は自分の心臓が一つ鳴るのを感じた。
まして、この世界で?いや、そばにアルファの勇者がいるからか?だからってこんな急速に……。
「まさか、あなたは私の運命……っ……すまない」
そんな声がぼやける思考の片端で聞こえた。
気がつけば俺は当代に唇を塞がれて、奴の首に手を回し激しくそれに応えていた。
もうなにも考えられなかった。
三日三晩抱き合って、そのあいだの食事は買い置きの冷凍パンに冷凍食品にカップラーメンに。食べて寝て、風呂で身体を綺麗にして、そこでもやって、なんだかケダモノみたいだった。まあ、実際ケダモノだ。
そうするうちに頭も三日目にはハッキリしてくる。それでもゆるゆると繋がるのが心地よくて、当代のぶ厚い胸板に手をあてて、腰を自分の太ももで締めて、その上に乗っかって「ん……ん……」なんて声をあげながら。
「……そう……いや、なんで聖女が……大妃派に?つうか、お前も勇者なのに、その大妃の孫も勇者様なのか?」
「いや、彼は偽物だ」
「は?偽勇者?」
そのしゅんかんぴかっと周囲が光った。これは?記憶にある召喚の光だ! と思ったとたん。
「おお、聖女に続き、賢者も召喚されましたぞ!」
「この輝きは先代の聖賢者さまにも負けぬもの。きっと力の強い方が……」
見覚えのある白亜の城の最上階にある召喚の間。そこに集いし神官達に王侯貴族達は目を丸くした。
そりゃ召喚陣の真ん中に、俺のニ○リのベッドごと、裸で絡まりあう二人がいるんだからな。しかも、合体したまま。
「どうしてここに“偽勇者”が!?」
「この男は一体!? 」
「捕らえろ!」「牢に放り込め!」という声が響くなか。
「すぐさま殺して首を刎ねなさい」
静かではあるが冷酷な女の声に場が鎮まり返る。そこには金襴のドレスと豪奢な宝石を飾りたてた、妙齢の女がいた。その顔には見覚えがある。
「あれが大妃だ」と当代の勇者が耳元で告げる。
え?それにしちゃずいぶん若い。二十代とはいわないが、三十代の半ばぐらいには見えるぞ?元聖女だったから歳を食わねぇのか?と思ったが。
それより、大妃の命令によって首を刎ねられる前に逃げ出すのが肝心だ。
俺は魔法によって近くの騎士の腰より剣をふわりとうばいとって、当代に渡した。同時に突き出される無数の槍を、当代はその剣の一振りによって、切り捨てる。これぐらいやってくれないと、勇者とは言えない。
「殺せ! 殺しなさい!」
という大妃の恐ろしい声を聞きながら、俺達は召喚の間から出た。
勇者に抱えられたまんまの駅弁スタイルで、揺れるたんびに「あ、あ、あ」なんて声が出るのは仕方ない。つうか、転移の詠唱が出来ん!
それでもなんとか転移したのは、森の中だったのは幸いだった。これで街中だったら、目もあてられん。
やっと繋がりがとかれ、近くの村から風魔法で失敬したシャツとズボンを履きながら俺は訊ねた。
「お前が当代の勇者ってのは今の実力でわかったが、偽勇者って?」
「大妃が当代の召喚された聖女を抱き込んで、現王の息子。つまり自分の孫をその資格もないのに指名させたのだ。逆に神々のお告げをもみ消された私は偽勇者とされて追われる身だ」
大妃の専横に不満を持つ者は多く、当代勇者たる彼が魔王を倒せば、彼を王に……という望む反体制派の貴族や民の声をおそれた大妃がしかけたことという。
「魔王復活だっていうのに、内輪もめかよ!」
思わず俺はさけんだ。
────────────
このあとなんだかんだで魔王討伐して、大妃の陰謀は暴かれ、関係者はざまぁされ、さらには主人公は大きなお腹を抱えて、王様となった勇者から逃げ回るハメになるのですが、このお話の長いの読みたい方います?
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