「君を愛していくつもりだ」と言った夫には、他に愛する人がいる。

夏八木アオ

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後書き

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最後まで読んでくださりありがとうございました。
連載中にたくさん感想をいただき、返信する中で改めて二人を掘り下げる機会をいただいたことにとても感謝しています。

元々このお話は、初夜に「君を愛するつもりはない」と言う夫は多いけど、逆に、事情はどうあれ「愛していくつもりがある」と宣言するのは、どんな人で、どんなシチュエーションなんだろうか……?と思ったところから着想しました。

好みじゃない女性が家の都合でいきなり嫁いできても初日から優しくて、いつも楽しそうな人がいいな~と思って書いておりました。

甘えん坊で不注意なドジっ子で優柔不断で、お読みいただいたみなさまをイライラさせて申し訳ありません。お叱りの言葉も「そうですね!」と思いながら受け止めました。応援のお言葉も、とてもありがたく受け取りました。

二人のハッピーエンドをここまで見届けてくださりありがとうございました。

明日から3本の番外編を更新予定です。もう少しだけお付き合いいただけますと幸いです。

▽以下別サイトの活動報告と同文です。
本編に書けなかったことのメモです。

◆ノア
スーパーヒーロー(ヴェルディアの騎士)になりたかったけどそれを口に出せないまま本人も自覚なしのまま忘れていた人、という感じです。
人が好き、役に立ちたいという気持ちと、幼い頃に持った騎士団への憧れが奥のほうにあって、自分の大事な人を守れるようになりたい、けどできないことも多い。

彼は年上に囲まれていて身近に歳の近い同性の友人がいなかったので、まずヒーローごっこができない。ちょっと物心ついたころには父親と領地を回って、「お前は人の上に立つんだよ」みたいな話をされることになるので、騎士団のメンバーと領主という根本的に同じ場所に立つことはない立場にあることを自覚することになり、そのあとはアンナに好きなものを否定され、十五歳くらいの馬車の事故で母親から「次に騎士気取りで人を助けたらただじゃおかない」みたいなことを言われて(ノア本人はショックすぎて忘れてるはず。当時はそんなつもりなかったけど指摘されて恥ずかしいと思ったと思います)、無意識に抱いていた憧れ的なものを、幼少期からずーっと否定されて今に至っていると思います。

今回の話は、環境的に「貴方はそのままでいいよ」と言ってもらえなかった二人が、自分のことを認めていく過程を描きたいな~とぼんやり思っていたのですが、ノアに関してはそれがしっくり来ずにいました。
設定としては”そのままの自分を認めてもらえなかった”二人として書き始めたけど、ノアは、別に何もできなくて、彼が彼のままでも、ノアが好きだよと言ってくれる人がいるはずだし、彼もそれを自覚しているんじゃないか?
「39. 彼の嘘」でノアが初めて、多分ほかの人に話したことがない、心の奥にあった「できないのが嫌だ」という気持ちを吐露したときに、ノアが欲しかったのは「そのままでいいよ」という言葉じゃないのか!と気づいて、イリスのセリフに繋がりました。

完璧主義なのはイリスだと思っていたけど、自分がこうありたいと思う姿を追いかけたいというのは、ノアもすごく強い、むしろイリスより強くて、自分のことを許してないのはノアだな~と分かって、39話でやっとノアがどんな人なのかちょっと分かった気がします。
「誰かのために変わりたい・できるようになりたい」という原動力と、「それができない自分が嫌だ」という、自分と他人への許しと愛情の差がすごく、彼らしいなーなるほどーこういう人かー、という……40話ほど書いてやっとヒーローへの解像度が上がりました。彼は彼でプライドが高い。

たくさん愛されているので、だからこそ背伸びして、そのままじゃない自分を追いかけることができて、できなくて落ち込んで、助けてもらって、でもまた立ち直って……と、これからも元気に慌てん坊で明るくて鈍感で、すぐ落ち込むけどすぐ立ち直るせいで反省してない軽率なやつだとプリプリされながら、それでも愛されて生きていくと思います。

いつか番外編で、イリスに対して「最近私の扱いが雑じゃない?」って言わせたいです。

◆イリス
世界一高いプライドと批判的な性格、強い自己主張を持って生まれ、母親の努力でなんとか謙虚さや感謝の心を身につけたとにかくめちゃくちゃにプライドの高い苛烈な性格の面倒なヒロインです。
本人については本編で書き切ったので特にいうことがありません。

頭がよく回るけど頭を使いすぎるとイリスの立場では辛くなってしまうし、妃、妻、というある意味“従”の立場に収まりきれない苛烈さを持ち合わせています。ということに母がいち早く気づいて、それ以外の未来を選ばせてあげることはできないので、王太子妃になったときにイリスが批判されたり、攻撃されないように、教育していった……というような感じです。

父親は娘の教育についてそこまで考えてないので、イリスが淑女らしくないことをしたらその時は激おこだけど、イリス自身の苛烈な性格については愛していると思います。名声のために必要な娘だから愛してるというよりは、ウィンドミア公爵は娘のことは可愛いとは思っていて、“自分のもの”をとことん囲う、その囲いの中にいる間は徹底的に(彼の考える方法で)守ってくれる人というイメージです。

自分のものなのでどうするかを他人に言われる筋合いもないと思っているけれど、冷静になると自分がしたことは紳士として正しくないと気づけるくらいの頭があり、そこを反省して自分を変えるには他に縋るものがなさすぎるので、ものすごく自分を正当化することになるはずです。
息子たちには尊敬されています。だから本当の意味での孤立はしないはず。
イリスに謝罪はしないと思うけど、彼なりに彼女を愛していたことは、何らかの形でいつかイリスに伝わると思います。

ーーー

こんなところまで読んでくださりありがとうございました!

本作は設定としては、上記の“環境的に「貴方はそのままでいいよ」と言ってもらえなかった二人が居場所を見つけるまで”、あとは“初恋未満の何かを自覚も消化もせずに本来なら自分では選ばないであろう相手と急に政略結婚した恋愛音痴同士がじわじわ仲良くなるところ”を書こう、と思っておりました。

予想外に長くなりましたが、無事ハッピーエンドで終わることができてよかったです。
ありがとうございました!

▲ここまで

結局ノア→アンナの気持ちってどうだったの?という野暮な答え合わせです。
https://privatter.net/p/10709771

2/8 本文コピペできない上にリンク先に飛べないらしいため全文貼り付けしてます。

ーー

▽以下privatterと同文

電車に揺られながらふと頭の中に、もしアンナがノアより先に結婚していて、ノアがイリスと結婚していなかったら、というif展開が湧いてきたんですけれども、その妄想+本編のノアとアンナの関係に関する解説(?)です!

①まずアンナが婚約の話をする→「そうなんだ!おめでとう!」からの、「あまり知らない人だから不安」というアンナに対して、「前に会ったことあるけど、彼はこういう人で、こういうところが魅力的でいい人だよ!大丈夫!」みたいな話をし出す。
アンナが勇気を出しても言えるのは「ほかに何か言ってくれないの?」程度なので、返しで
「他にもいいところはあるよ!確かケビンのお兄さんが知り合いだったと思うから話を聞いてみる?でも本人と話したほうがいいと思う。話してみたら不安もなくなるはずだよ。叔父上と叔母上がアンナのために選んだ人だから、絶対悪い人じゃないよ」とか言う。

アンナはすごく失望するけど本編より早く吹っ切れると思います。女子のほうが圧倒的に見切りが早い。
わたしは何を期待してたんだろう……ってお家で泣くけど百年の恋も冷める。
ここで「ばか!止めなさいよ!」って言える女子だったら本編でもイリスと結婚する前に告白しているはず。

②結婚式当日、笑顔で「おめでとう!」って言う。

③結婚して数ヶ月後とかに、なんかちょっとぼーっとしてる時があるなどの理由でキースの気遣いによりルークと二人きり→「相談相手は俺でいいか?」展開になる。

先日アンナが旦那さんと誰かと会話しているところに立ち会って、旦那さんが王都でしか手に入らないお菓子をアンナに買ってあげた、みたいな話を聞いて、
「もう頼まれることはないんだな、って思ったんだよ。それが少し……なんというか、寂しい? ような」
「妹みたいに可愛がってたからな」
「うーん」
「それだけじゃない?」
「妹みたいだと思ってたんだけど、こうやって縁が切れてしまうなら妹じゃないよね」
「まぁそうだな。俺もお前と本当の兄弟じゃないし」
「そうだよね。同性だったら結婚しても縁が切れないのに」
「別に切らなくてもいいだろ、従妹なんだから今まで通りに接すればいいよ」
「それは旦那さんが嫌じゃない?」
「なんで?」
「なんでって……」

と言うやりとりから妹じゃないな~と言うことに気づくけどまだ自分の気持ちがよく分からないので、最終的には
「私ってアンナのこと好きだったのかな?」ってルークに聞く。
「さぁ、俺にはお前の気持ちは分からないけど、どう思う?考えてみたらどうだ。考えを整理するのは付き合うよ」
「うーん……分からない。でもそうだとしたら、考えたのがこのタイミングでよかったな。アンナには笑って『おめでとう』って言えたから」

という感じになりそうです。好きだった、ってことだよね、って多分言わないで終わります。

《本編の話》
ノア→アンナの気持ちが「恋」だったのか、という点については、
ちゃんと恋になる前にアンナが自分で機会を潰した恋未満、みたいなイメージで書いてました。
ノアが十五~十七歳くらいのときに、アンナがヴェルディアのことを悪く言わないで、「あなたが好き」って口に出してたら、ちゃんと恋になっていたかもしれない。

アンナはノアにとって大事なものを大事にしてくれない人だけど(それよりもアンナにはノア自身のほうが大事だったので)、妹みたいなところもあるし、自分を頼ってくれる可愛い年下の女の子でもあるし、大事な幼馴染で、友達で……

小学校、中学校くらいの知り合いって、ちょっと嫌なところがあっても物理的にそばにいるからそのまま友達でいるみたいなところあるじゃないですか。あと多分人間関係の相手をそこまで選べないというか……少なくとも私の出身地はそんな感じなんですけど、嫌なところあっても縁を切らないし、お互いゆるしつつそばにいるというか、そもそもそこまで人についてごちゃごちゃ考えてないといいますか……

13話でノアがアンナについてごちゃごちゃ言ってるけど、あのときのノアは自分がやってしまったことでイリスに無視されて動揺してて、母親にもいつも言わないようなことを言ってしまい、ずっと自分が信じてたことが色々揺らいで追い詰められてて、ロバートに語ったことが本質ではなかった、と思って書いています。
動揺したり、追い詰められている人が自分の口から語る言葉は必ずしも本質ではない、と思ってまして、そこに事実はあるかもしれないけど、それだけで判断できないはず。人は自分の気持ちに気づかないこともあれば嘘もつくし、過去を振り返って必要以上に悲観的になったり、思考がすごくネガティブになってしまったりすると思います。

ノアからアンナへの気持ちの本質的なところとしては、ノアにとってアンナは“大事な人”で、”笑顔でいてほしい人”。”大事”以上に育てることができなかった初恋未満のような……キスしたい、自分のものにしたい、まで育つことがなく、そのまま知らない間にいないのが当たり前になってしまった関係性、という感じでした。でも”愛”はあると思う。
あとは彼には大事な人が山ほどいるので、そのたくさんの人も含めて「他に愛する人がいる」というタイトルにしました。
叔父とアンナの馬車のところで呼びかけるあたりで、ノアにとってアンナは完全にその他大勢いる大事な守らなければならない人の一人になってしまってて、だからこそ目の前で涙が溢れた瞬間につい手を差し伸べてしまったのだろうと思います。

あとノアのアンナを助けたいという振る舞いについては、ノアはルークがめっちゃ好きなので、従兄みたいに頼りになる従兄として振る舞いたかった、とかもある。

ちなみにルークはこの寄り添ってるんだか突き放してるんだかよく分からない他人事なスタイルが原因で婚約者にフられています。「私ってあなたの何?一緒にいると辛い」って泣かれて、「辛いと思うなら婚約を考え直すか?どうしたい?」って聞いちゃったのでそれでおしまいです。泣いてる女にそれを聞くな~~~!「俺はお前と一緒にいたい、絶対に離さない」と言え~~~!
フられたあと一人で落ち込んで悲しくなり、色々反省した結果のノアへのアドバイスでした。でもフられてるし答え合わせできてないからちょっとまだ「女子が欲しい言葉はそれじゃないんですよね~~~」ってことを言います。

追加
ノアの臆病さについて言及するのを忘れてた!
結局のところ、彼は受け入れてもらえない可能性があっても踏み込めるほど強く好きじゃなかった、っていうただそれだけです。→これを優しさとも呼ぶ気がする。
あと領地と自分を同一視しすぎ。素直なので親の教育どおりに責任を感じてしまう(母親がものすごく自責の人なので彼もその影響で自分のせいじゃないことも自分のせいにしがち)。

そのノアが、手を振り払われて縁が切れそうになったときに、イリスと離れるのは嫌だな、って思ったし、受け入れてほしい、許してほしい、って思って行動したってことはちゃんと結婚してからイリスのことが義務以上に好きになってたってことなのにそれを自覚できないから色々と曖昧な態度取ることになったという感じ。鈍い。

以上です!
妄想にお付き合いくださりありがとうございました。

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