詩の隠れ家

凛七星

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La sangre es roia　血は赤い

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わたしは忘れようと試みた
悲劇の過去は極北の氷河の中に
凍りつかせたいと願いながら
いくつもの夜が通り過ぎるたび
冷たい汗にまみれ胸をかきむしり
悪夢と狂おしく踊り明かす

記憶は宿命に似て脱ぎ捨てられない
わたしは諦めという名のベッドに
腰を下ろすと指を組んで
色褪せない時間を繰り返し反芻する
夜は深く底も果てもあるとは思えない
長く苦しい時間を舐め尽していると
唐突に死の匂いがドアをノックした

喉の奥に鉄錆の味がする
指先は冷え脳裏を発熱しない火花が散る
空気が裂け痛みは氷片のように突き刺す
筋肉は強酸を浴びたように激しく震え
憎悪と恐怖と猜疑で固められた拳に
朧になった意識は屍衣をまといかける

暗闇に潜む絶望という砂が詰まった
銃口が向けられるよりはいい
スペードの女王の素肌を撫でるような
日々を送るよりはいいと
黙示録の騎士の出迎えに弱気の虫が
コロコロと鳴き唄いだしそうになる

だが薄い唇で口笛を吹きながら
なめしたみたいな皮膚の毛穴から
虚無という蒸気を吐き出して
向こう側へと送った人々の夥しい数を
眉間に皺を寄せ数える姿に
わたしは冷たく青い炎で覚醒する

視界に落ちた一滴のインクのように
滲んで拡がる血色に染められた光は
わたしを長い怠惰な休暇から
再び災いと争いが渦巻く最前線の
兵士となることを要求した
それは避けられない宿命なのだと

人生を悔やむことになる一瞬から
わたしは背を向け走り出した
精神の底で闘う意志を結晶化させると
わたしは身のうちに修羅の気が漲り誓う
不屈の意志だけを携えて渡ろう
対岸が見えない濁流の大河であっても

得体の知れないものが待っていようと
狂気と悪意にまみれることがあろうと
わたしは教えてやろう奴らに
La sangre es roia
血は赤いということを
悪魔の肝臓を食った者どもに

さぁ来てみろ
どっちが先に地獄の扉を叩くのか
やってみようじゃないか

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感想 3

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みんなの感想（3件）

2020.02.02 プシュケー

「叛逆の堕天使」

こういう心境になる時が、好ましくはないのだろうけどたまにあるので。今日は何となく今の自分にあてはめたりもしてみました。

こういう風に言葉にしてもらうと何かを代弁してもらった気にはなるけど、所詮第三者には伝わらないわけで。人間て孤独だなと、しみじみ感じた次第です。

けど、ある場面の精神状態を切りとって言語化するというのは、自分を凝視する作業でもありますよね。それは大変な苦痛だと思うんですよね、

しかも心なんて誰にも伝わらないのだから。。今日よみなおして改めてそんな事も感じてしまいました。。

情けなさや虚しさで押し潰されそうな時、こんな詩があると良いですね。優しい詩です。いろんな読み方ができると思います。

私は今日、痛々しさと悲しみに、寄り添ってもらえた気がします。

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2019.12.23 プシュケー

「ありがとう」

絵画アリだと時事問題やら歴史問題やら浮かびますが、絵画ナシでも刺されそうな鋭さを感じます。癒し系の作風にもニーズはあるかと思いますが、詩ならこれぐらい毒がある方が、より芸術的だと率直に思います。

ゆうべたまたま芥川の或る阿呆の一生「敗北」を読みなおしていた所でございまして、時代の空気に敏感であることを、自分なりにおさらいしておりました。

ちょうどこちらと合わせて読む形になったせいか、どことなく似た空気を感じないでもありません。

但しこの「ありがとう」は芥川の敗北とは異なり、サバイバーの言葉であることがポイントです。未だ渦中に置き去りにされた状態といいますか、現にもがいているのを切り取って吐露させようとする部分に、死に向かわんとする芥川よりも、より生々しいリアリティ、生への希求を感じます。小説なら最後に救済がほしいところですが、詩だからここでとどめていいと思います。

などなど。

素人風情がとお叱りを受けそうですが、個人的に思った事を連ねてみました。失礼いたしました。しかし絵、センスありますなあ（笑）

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2019.11.20 ユーザー名の登録がありません

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