不幸を呼ぶ呪われた痣を持つ私ですが、皆気にせず溺愛してきます。

木山楽斗

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8.例え呪いでも

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「イフェリア、来ていたのか……」
「ええ、お兄様」

 病室に入ってきた女性は、アゼルト様を兄と呼んだ。
 ということは、彼女もアーラクト公爵家の関係者ということになる。アゼルト様の妹ということなのだろうか。

「ルナリアね。初めまして、私はイフェリア。アーラクト公爵家の長女……あなたにとっては、アゼルトお兄様と同じいとこということになるわね」
「は、初めまして、ルナリアです」

 イフェリア様は、美しい女性だった。それは容姿もだが、何より所作に関して。
 貴族の方々は、礼儀作法に精通していると聞いたことがある。アゼルト様も中々のものだったのだろうが、素人の私でもわかる程にイフェリア様は美しい。

「色々と大変だったようね。先程の会話も聞いていたわ」
「あ、えっと……」

 イフェリア様に見惚れていた私は、チャムスイさんから言われたことを思い出す。
 この腕に刻まれた痣は、呪われた痣である。その事実に私は、再度痣を見ることになった。
 するとその痣には、手の平が乗っていた。それは私のものではなく、イフェリア様のものだ。

「イフェリア様――」
「大丈夫よ」

 呪いの痣に触れるなんて、危険である。そう思った私だったが、その言葉を止めることになった。
 それはイフェリア様が、真っ直ぐにこちらを見つめていたからだ。彼女は、自信と気品を持って私の目を見つめている。

「呪いの痣なんて、私は怖くないわ。例えその痣が本物であったとしても、私は呪いに打ち勝ってみせる……アゼルトお兄様、そうでしょう?」
「……ああ、もちろんだ。俺達は誇り高きアーラクト公爵家の血筋だからな。呪いなどに負けてなるものか」

 イフェリア様の言葉に、アゼルト様は力強く頷いた。二人の表情からは、確固たる意志が伺える。
 二人のそんな顔を見ていると、本当に呪いに打ち勝てそうだと思ってしまう。しかし意志だけでなんとかなるものなのだろうか。呪いとはそういうものではないような気がするのだが。

「ルナリア、俺達はお前をアーラクト公爵家に連れ帰る。例え嫌だと言われようとも」
「アゼルトお兄様、その言い方は少々物騒ですよ?」
「そうだろうか?」
「……ルナリア、私達はあなたのことを歓迎するわ。安心して、アーラクト公爵家の屋敷は良い所だから」

 アゼルト様とイフェリア様は、笑顔を浮かべていた。
 その笑顔を信じて良いものなのだろうか。二人が良い人とわかっている故に、気が引ける。呪いの痣、それがまやかしであると良いのだが。
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