12 / 16
12.打ち勝つために
しおりを挟む
「ルナリア、大丈夫なのか?」
「ええ、大丈夫です」
「腕が痛むのですか?」
「あ、えっと……」
ヴェルラン様と伯母様は、私のことをとても心配してくれているようだった。
それは当然のことだろう。私は急に呻いてしまったのだから。
ただその理由をすぐに話すことはできなかった。それは私にとっても、説明が難しいことだったから。
「その、痣が熱くて……」
「痣……ああ、例の痣のことか」
「少し見せてください」
「あっ……」
伯母様は、私の服をめくって痣を露わにした。
見た目上、痣には特に変化は起こっていない。しかし私には、それがとても熱を帯びているように思えた。
それは別に、初めてのことという訳でもない。入院していた時から、何度かそういうことがあったのだ。
「先生から、話は聞いています。アゼルトが余計なことをしたせいで、あなたはこの痣に悩まされているそうですね?」
「……はい。この呪われた痣が、不幸を呼ぶのではないかと、ずっと思っています」
「……そんなのは迷信さ」
伯母様の言葉に私が答えると、ヴェルラン様が静かに声を出した。
その声には、アゼルト様やイフェリア様のように意思が籠っている。やはり彼は二人の弟なのだ。そういった所は、実に似通っている。
「仮に本物だったとしても、そんな呪いに俺達は負けない。ルナリアが心配することなんて、何もないさ」
「ヴェルラン様……」
「ふふ、この子の言う通りです。アーラクト公爵家は、呪いなどに負ける家ではありません。私達にはそれに打ち勝つ、誇りがあるのですから」
ヴェルラン様と伯母様は、それぞれ私の痣に触れていた。
イフェリア様がやったように、呪いの痣に打ち勝てると伝えてくれているのだろう。それを聞いていると、少しだけ勇気が湧いてきた。
「私は、ここにいても良いのでしょうか?」
「当り前さ。他にどこに行くって言うんだよ」
「あなたはアーラクト公爵家の一員です。私達は家族です。それをどうかお忘れなきように……」
「……はい」
二人の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
このアーラクト公爵家には、呪いの痣なんて気にしている人はいない。私を除いて、例えそれが本当でも打ち勝つつもりだ。
それなら私も、自信を持つべきなのかもしれない。呪いに負ける。そう思い込んでいては、本当に負けてしまう。先生もいつしか、そんなことを言っていた。
「あ、ご、ごめん。俺、君の腕に……」
「え? ああ……別に構いませんよ」
私が少し笑っていると、ヴェルラン様が焦り始めた。
どうやら私の腕に触れたことを気にしているようだ。
彼は紳士であるということなのだろう。そういう所からも、アーラクト公爵家の教育というものが読み取れた。
「ええ、大丈夫です」
「腕が痛むのですか?」
「あ、えっと……」
ヴェルラン様と伯母様は、私のことをとても心配してくれているようだった。
それは当然のことだろう。私は急に呻いてしまったのだから。
ただその理由をすぐに話すことはできなかった。それは私にとっても、説明が難しいことだったから。
「その、痣が熱くて……」
「痣……ああ、例の痣のことか」
「少し見せてください」
「あっ……」
伯母様は、私の服をめくって痣を露わにした。
見た目上、痣には特に変化は起こっていない。しかし私には、それがとても熱を帯びているように思えた。
それは別に、初めてのことという訳でもない。入院していた時から、何度かそういうことがあったのだ。
「先生から、話は聞いています。アゼルトが余計なことをしたせいで、あなたはこの痣に悩まされているそうですね?」
「……はい。この呪われた痣が、不幸を呼ぶのではないかと、ずっと思っています」
「……そんなのは迷信さ」
伯母様の言葉に私が答えると、ヴェルラン様が静かに声を出した。
その声には、アゼルト様やイフェリア様のように意思が籠っている。やはり彼は二人の弟なのだ。そういった所は、実に似通っている。
「仮に本物だったとしても、そんな呪いに俺達は負けない。ルナリアが心配することなんて、何もないさ」
「ヴェルラン様……」
「ふふ、この子の言う通りです。アーラクト公爵家は、呪いなどに負ける家ではありません。私達にはそれに打ち勝つ、誇りがあるのですから」
ヴェルラン様と伯母様は、それぞれ私の痣に触れていた。
イフェリア様がやったように、呪いの痣に打ち勝てると伝えてくれているのだろう。それを聞いていると、少しだけ勇気が湧いてきた。
「私は、ここにいても良いのでしょうか?」
「当り前さ。他にどこに行くって言うんだよ」
「あなたはアーラクト公爵家の一員です。私達は家族です。それをどうかお忘れなきように……」
「……はい」
二人の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
このアーラクト公爵家には、呪いの痣なんて気にしている人はいない。私を除いて、例えそれが本当でも打ち勝つつもりだ。
それなら私も、自信を持つべきなのかもしれない。呪いに負ける。そう思い込んでいては、本当に負けてしまう。先生もいつしか、そんなことを言っていた。
「あ、ご、ごめん。俺、君の腕に……」
「え? ああ……別に構いませんよ」
私が少し笑っていると、ヴェルラン様が焦り始めた。
どうやら私の腕に触れたことを気にしているようだ。
彼は紳士であるということなのだろう。そういう所からも、アーラクト公爵家の教育というものが読み取れた。
96
あなたにおすすめの小説
自己肯定感の低い令嬢が策士な騎士の溺愛に絡め取られるまで
嘉月
恋愛
平凡より少し劣る頭の出来と、ぱっとしない容姿。
誰にも望まれず、夜会ではいつも壁の花になる。
でもそんな事、気にしたこともなかった。だって、人と話すのも目立つのも好きではないのだもの。
このまま実家でのんびりと一生を生きていくのだと信じていた。
そんな拗らせ内気令嬢が策士な騎士の罠に掛かるまでの恋物語
執筆済みで完結確約です。
【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました
22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。
華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。
そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!?
「……なぜ私なんですか?」
「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」
ーーそんなこと言われても困ります!
目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。
しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!?
「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」
逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?
【完結】氷の王太子に嫁いだら、毎晩甘やかされすぎて困っています
22時完結
恋愛
王国一の冷血漢と噂される王太子レオナード殿下。
誰に対しても冷たく、感情を見せることがないことから、「氷の王太子」と恐れられている。
そんな彼との政略結婚が決まったのは、公爵家の地味な令嬢リリア。
(殿下は私に興味なんてないはず……)
結婚前はそう思っていたのに――
「リリア、寒くないか?」
「……え?」
「もっとこっちに寄れ。俺の腕の中なら、温かいだろう?」
冷酷なはずの殿下が、新婚初夜から優しすぎる!?
それどころか、毎晩のように甘やかされ、気づけば離してもらえなくなっていた。
「お前の笑顔は俺だけのものだ。他の男に見せるな」
「こんなに可愛いお前を、冷たく扱うわけがないだろう?」
(ちょ、待ってください! 殿下、本当に氷のように冷たい人なんですよね!?)
結婚してみたら、噂とは真逆で、私にだけ甘すぎる旦那様だったようです――!?
聖女の座を追われた私は田舎で畑を耕すつもりが、辺境伯様に「君は畑担当ね」と強引に任命されました
さら
恋愛
王都で“聖女”として人々を癒やし続けてきたリーネ。だが「加護が弱まった」と政争の口実にされ、無慈悲に追放されてしまう。行き場を失った彼女が選んだのは、幼い頃からの夢――のんびり畑を耕す暮らしだった。
ところが辺境の村にたどり着いた途端、無骨で豪胆な領主・辺境伯に「君は畑担当だ」と強引に任命されてしまう。荒れ果てた土地、困窮する領民たち、そして王都から伸びる陰謀の影。追放されたはずの聖女は、鍬を握り、祈りを土に注ぐことで再び人々に希望を芽吹かせていく。
「畑担当の聖女さま」と呼ばれながら笑顔を取り戻していくリーネ。そして彼女を真っ直ぐに支える辺境伯との距離も、少しずつ近づいて……?
畑から始まるスローライフと、不器用な辺境伯との恋。追放された聖女が見つけた本当の居場所は、王都の玉座ではなく、土と緑と温かな人々に囲まれた辺境の畑だった――。
【完結】追放された私、宮廷楽師になったら最強騎士に溺愛されました
er
恋愛
両親を亡くし、叔父に引き取られたクレアは、義妹ペトラに全てを奪われ虐げられていた。
宮廷楽師選考会への出場も拒まれ、老商人との結婚を強要される。
絶望の中、クレアは母から受け継いだ「音花の恵み」——音楽を物質化する力——を使い、家を飛び出す。
近衛騎士団隊長アーロンに助けられ、彼の助けもあり選考会に参加。首席合格を果たし、叔父と義妹を見返す。クレアは王室専属楽師として、アーロンと共に新たな人生を歩み始める。
私を追い出したらこの店は潰れますが、本当に良いんですね?
真理亜
恋愛
私を追い出す? この店を取り仕切っているのは私ですが、私が居なくなったらこの店潰れますよ? 本気いや正気ですか? そうですか。それじゃあお望み通り出て行ってあげます。後で後悔しても知りませんよ?
【完結】ハメられて追放された悪役令嬢ですが、爬虫類好きな私はドラゴンだってサイコーです。
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
やってもいない罪を被せられ、公爵令嬢だったルナティアは断罪される。
王太子であった婚約者も親友であったサーシャに盗られ、家族からも見捨てられてしまった。
教会に生涯幽閉となる手前で、幼馴染である宰相の手腕により獣人の王であるドラゴンの元へ嫁がされることに。
惨めだとあざ笑うサーシャたちを無視し、悲嘆にくれるように見えたルナティアだが、実は大の爬虫類好きだった。
簡単に裏切る人になんてもう未練はない。
むしろ自分の好きなモノたちに囲まれている方が幸せデス。
料理スキルしか取り柄がない令嬢ですが、冷徹騎士団長の胃袋を掴んだら国一番の寵姫になってしまいました
さら
恋愛
婚約破棄された伯爵令嬢クラリッサ。
裁縫も舞踏も楽器も壊滅的、唯一の取り柄は――料理だけ。
「貴族の娘が台所仕事など恥だ」と笑われ、家からも見放され、辺境の冷徹騎士団長のもとへ“料理番”として嫁入りすることに。
恐れられる団長レオンハルトは無表情で冷徹。けれど、彼の皿はいつも空っぽで……?
温かいシチューで兵の心を癒し、香草の香りで団長の孤独を溶かす。気づけば彼の灰色の瞳は、わたしだけを見つめていた。
――料理しかできないはずの私が、いつの間にか「国一番の寵姫」と呼ばれている!?
胃袋から始まるシンデレラストーリー、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる