「優秀な妹の相手は疲れるので平凡な姉で妥協したい」なんて言われて、受け入れると思っているんですか?

木山楽斗

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5.不遜な態度

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「オーディス様、私はリメルナの姉です」
「ん?」

 私はオーディス様に対して、改めて自己紹介をしてみることにした。
 リメルナの姉である。それは端的ながら、彼に伝わりやすい自己紹介だと思う。
 事実として、先程までと比べるとオーディス様が反応している。ただそれは、先程の自己紹介が耳に入っていなかった証拠ともいえるだろう。

「リメルナ嬢の姉? 聞いたことがないな」
「まあ、あまり知られていないかもしれませんね……」
「確かに言われてみれば、面影が――いや、ないな。彼女はもっと麗しい人だ」

 素性を明かした私に対しても、オーディス様はどこか不遜な態度を取っていた。
 これでも、求婚した相手の家族であるのだが、そういったことを彼は考慮しない性格であるらしい。
 いやそもそもの話、そうやって人を見下して話すのはどうかと思ってしまう。いくら侯爵令息だからといって、限度というものがあるはずだ。

「一つ確認しておきたいのですが、私の妹があなたからの求婚を受け入れたというのは、本当なのでしょうか?」

 そこで私は、一つ重要な質問をしておくことにした。
 本当にリメルナは、この人からの求婚を受け入れたのだろうか。にわかには信じられないことである。

 もしかしたらそれが、根も葉もない噂なのではないか。私の中には、そういった考えが芽生えていた。
 というか、そうであって欲しい。もしも彼がリメルナの婚約者であるならば、私は全力で反対せざるを得なくなってしまうから。

「……ああ、そうだとも。彼女と僕は婚約関係にある」
「……そうですか」

 しかし私の希望というものは、いとも簡単に打ち砕かれてしまった。
 どうやらあの妹は、こんな男から求婚されて受け入れたようである。それは明らかに、判断を誤っているとしか言いようがない。
 容姿は端麗であるが、中身はまったくない。そんな彼からの婚約を受け入れたということは、リメルナは案外面食いだったということだろうか。

「しかしながら、それがなんだというのだ? まさか、姉であるからといって僕達の関係に口を出そうとしているのか? それはなんというか、無粋なことだと思わないのか?」
「リメルナはロディオン伯爵家を背負う立場にあります。婿を迎え入れる立場なのです。そんな彼女が選んだ人は、私にも無関係ではありません」
「ちっぽけな子爵家なんかに、僕が興味を持っていると思っているのか? 笑わせてくれる。僕はトレファー侯爵家を手に入れる。リメルナ嬢はそんな僕の嫁になるんだ」

 目の前にいる人物の言葉に、私は怒りさえ覚えていた。
 そんな彼を選んだリメルナにも、正直失望している。優秀な妹だと思っていたが、どうやら人を見る目はなかったらしい。
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