殿下が私を愛していないことは知っていますから。

木山楽斗

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8.激しい頭痛

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 私が一歩踏み込んでから、ナーゼル様は私の元を訪ねて来なくなった。
 それは恐らく、私の質問が原因という訳ではないだろう。きっと彼は今、何かしらの脅威と戦っているのだ。

「はあ……」

 そんなことを考えながら日々を過ごしていた私は、頭痛に苛まれていた。
 朝起きた時からずっと頭が痛く、ほとんど動けないでいたのだ。

「エリーファ様、大丈夫ですか?」
「大丈夫とは、言い難いわね……」
「お薬は効きませんか?」
「残念ながら、効果はなかったみたいね……」

 朝に頭痛を訴えてから、ラフェリーナはずっと私のことを看病してくれていた。
 彼女の看病はとても献身的である。しかしその甲斐もなく、私の頭痛はまったく治まってくれない。それがなんというか、少し申し訳がない。

「頭痛なんて、今までまったくなかったのに……」
「そうなんですか?」
「ええ、というか病気自体かかったことがないわね……」

 ラフェリーナと話しながら、私は自分が今までずっと健康だったという事実に気付いた。
 考えてみれば、それは少しおかしな話なのかもしれない。一度も病気になっていない人間なんて、そんなにはいないだろう。
 もちろん、単に私の体が丈夫という可能性も考えられる。ただ私は思っていた。もしかしたらそれは、私の体に宿る竜が要因なのかもしれないと。

「竜がそういう体調不良を抑制しているのかもしれないわね……」
「え? 竜にはそんな効果があるんですか?」
「……わからないわ。それは私の予想に過ぎないもの」
「……でも、今頭痛がしているなら違うんじゃないんですか?」
「ああ、確かにそうかも……」

 ラフェリーナの言葉に、私は納得した。
 竜が病気を払ってくれているなら、この頭痛が起こるはずはない。ということは、本当に私が単に丈夫だったということなのだろう。

「……あら?」
「あ、私が出ますね?」
「ええ、お願い」

 そこで私は、部屋の戸を叩く音を聞いた。どうやら、誰かが私の部屋を訪ねてきたようである。
 私の部屋に普段来客はない。使用人が食事を運んできたりすることはあるが、時間的にそれもあり得ない。
 ということは、最近来なくなったナーゼル様が来たのだろうか。私はそんなことを思いながら、来客に対応してくれているラフェリーナの答えを待つ。

「あ、はい。わかりました」
「ラフェリーナ、誰だったの?」
「先生でした。ちょっときつめの頭痛薬を持って来てくださったんです」
「きつめ? それはありがたいわね。さっきのは全然効かなかった訳だし」

 来客はお医者様だったらしい。
 ナーゼル様のことが心配だったので、彼でなかったのは少し残念である。
 しかしこれは私にとっては朗報だ。先程よりもきつめの薬なら、効果が少しだけ期待できる。

「早速飲ませてもらってもいいのかしら?」
「はい、問題ないようです。副作用として急激な眠気がくるみたいですが……」
「それに関しては望む所ね。まあ、その他の副作用もお医者様が問題ないと言っているならいいわ。そんなことよりもこの頭痛を鎮めたいし」
「それなら、飲んでしまいましょう。あ、急に体を起こさないでくださいね」
「ええ、心得ているわ」

 ラフェリーナに補助されながら、私は体を起こす。
 その後彼女が水を入れてくれて、私は新しい薬を飲む。

「ふう……まあ、これがどれくらい効いてくれるかはわからないけれど」
「効いてくれといいですね……」
「……少し眠らせてもらうことにするわ。今までは頭痛で眠る気にもならなかったけど、眠気がくるというなら眠れそうだし」
「あ、はい。おやすみなさい」
「ええ、おやすみなさい」

 ラフェリーナに就寝の挨拶をしてから、私はゆっくりと目を瞑った。
 まだ薬の効果も副作用も出てはいないのだろうが、なんだか少しだけ気分は楽だった。これはプラシーボ効果という奴なのだろうか。
 何はともあれ、これなら眠れそうである。起きた時にこの頭痛が治まってくれていているといいのだが。
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