勝手に期待しておいて「裏切られた」なんて言わないでください。

２５．始まっていく新生活

「わあっ……お姉様、すごいですね」
「そうかしらね……まあ、そういう反応になるものなのかしら？」

　私は、テーブルの上に並んだ料理の品々に目を輝かせることになった。
　それらの料理は、お姉様が作ってくれたものである。どうやらお姉様は、料理ができるようなのだ。

「侯爵家では料理なんてしなかったものね……私も、こっちに来てからできるようになったし」
「はい、屋敷では料理人の方々が作ってくれていましたから……」
「まあでも、これからは自分で作れるようになった方がいいわね。普通に暮らしていくには、絶対に必要なことよ」
「そうですね。教えていただけますか？」
「ええ、もちろん構わないわよ」

　一緒に暮らすようになってから、私はお姉様から色々なことを学んでいる。
　レネシアとして過ごしていたこともあって、お姉様は私の知らない生活の知恵などをよく知っているのだ。
　それを学ばせてもらえているというのは、非常にありがたい話である。もしも私が一人でこちらの国に来ていたらどうなっていたのだろうか。今考えてみると、それは中々恐ろしい話である。

「まあ、それも重要ではあるけれど、イルフェリアは今日から仕事なのよね？　その辺りは、大丈夫なの？」
「あ、はい。それも頑張っていくつもりです。でもまさか、騎士団に採用されるなんて思っていませんでしたが……」
「まあ、ルバートさんやレオールさんの推薦があったというのも大きいけれど、あなたは優秀だものね」
「え？」

　お姉様の言葉に、私は思わず驚いてしまった。
　私が優秀、そう言われてもまったくピンとこない。なぜなら私はむしろ、劣っている側であるはずだからだ。

「あなたは気付いていないのかもしれないけれど、あなたの能力は非常に高いのよ。私がいなくなってからも、精進は欠かしていなかったみたいだし、もしかしたら既に実力は私以上かもしれないわね……」
「そ、そんなことはないと思いますけれど……」
「まあ、とにかく自信を持っていくことね。変に緊張せずにいつも通りのあなたで行けば、きっと大抵のことはこなせるわ」
「わ、わかりました。とにかくやってみます！」

　お姉様からの助言に、私はゆっくりと頷いた。
　お姉様を越えているということはお世辞だとしても、お姉様は本気で私の力を評価しているような気がする。その表情が、それを物語っているのだ。
　それが私の自信に繋がった。なんというか、本当に大抵のことはなんとかなるような気がする。
　こうして私の新たな地での生活が始まっていくのだった。