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28.知らなかったこと

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「……お祖母様、様子を見に来たというのはどういうことですか?」
「言葉の通りの意味です」

 色々と状況が理解できていない私は、お祖母様にそんなことを問いかけていた。
 それに対して、お祖母様は端的な答えを返してくる。恐らく彼女は、本当に様子を見に来たということなのだろう。その言葉に偽りはなさそうだ。
 しかしそうなると、状況が益々わからなくなってくる。一体、エルベルト侯爵家は今どうなっているのだろうか。

「イルフェリア、私はアルネシアの捜索に注視するあまり、あなたのことを見ていませんでした。それについて、まずは謝罪させてください。本当に申し訳ありませんでした」
「い、いえ……」

 お祖母様に急に謝られて、私は面食らってしまう。
 そんなことを言われるなんて、思ってもいなかったことである。

 お祖母様は、お父様やお母様と同じ意見であると思っていた。しかしどうやら、そういう訳ではなかったらしい。
 ただ思い返してみると、それは納得できない訳ではなかった。お祖母様の前では、お父様もお母様も大人しかったし、彼女はそもそも私がどういう扱いを受けているのか、知らなかったということなのだろう。

「そんなあなたの決断を、私は止めるつもりはありません。しかしながら、心配だったのです。あなたが違う国できちんと生活ができているかということが」
「私を心配して、来てくださったのですか?」
「ええ、どうやら問題はないようですね……」
「はい。特には問題ありません。その……頼れる人がいたので」

 私の言葉に、お祖母様はお姉様の方に目を向けた。
 その視線には、驚きや安堵といった様々な感情が滲んでいる。
 お祖母様は、長年お姉様のことを探していた。ここにお姉様がいたということは、彼女にとっては本当に驚くべきことだったのかもしれない。

「まさか、アルネシアがここにいるとは思っていませんでした。でも、本当によかった。生きていてくれて、本当によかった……」
「お祖母様……」
「色々と事情があったのでしょうが、そんなことは些細なことです。あなたが無事に生きていてくれたというだけで……私は充分なのです」
「……ありがとうございます」

 私もお姉様も、今までお祖母様のことは厳しい人だという印象くらいしかなかった。
 しかし彼女は、お父様やお母様とは違ったのである。本当に心から、私達のことを愛してくれている人だったのだ。
 それを理解して、なんだか心が温かくなった。私にはお姉様の他にも、頼れる家族がいたのだ。随分と遅くなってしまったが、私はそれを理解するのだった。
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