1 / 18
1
私、エルフィリナ・アルガンテという人間は、特筆するべき点もない貴族である自覚している。
ただ、私の身に起こった問題は、非常に数奇なものだったといえる。その事件は、後世に残すべきものだ。そう思ったため、私はこの日記を書くことにしたのである。
といっても、この事件は歴史を揺るがす大事件という訳ではない。端的に言えば、これは一人の貴族の乱心から始まった珍事だ。この日記を見つけた時、過度な期待をしないでもらいたいというのが、私の正直な気持ちである。
この話をするにあたって、まず知っておいてもらいたいのは、私がどういう人物かということだ。性格面という訳ではなく、どういう立ち位置にいたかが、今回の話では重要なのである。
エルフィリナ・アルガンテは、スレンド王国のアルガンテ侯爵家の長女である。兄がいるため、私は嫁に出されることになった。その相手こそが、今回の事件を引き起こした張本人なのだ。
ルグファド・レギグズは、レギグズ侯爵家の長男である。彼という人物は、はっきり言ってどうしようもない男だ。というのも、彼は少々自分本位な所があったのである。世界の中心に、自分がいる。そういう風に考える人物だったのだ。
だが、別にその考え自体は否定されるようなものではない。個人の考え方なのだから、そう思うことが悪いことだとは私も思っていない。
しかし、彼の問題は、それを他人にも強要することだった。わがままで自分勝手に振る舞う。それが、彼という人間なのだ。
そういう婚約者であったため、私はその婚約に苦痛を感じていた。といっても、それを億面に出すことはない。これも、家のため。そう考えて、私は耐えていたのである。
ある時、私はルグファドに呼び出された。なんでも、話があるらしいのだ。
「エルフィリナ、君との婚約を破棄したいのだ」
「え?」
開口一番、彼はそのようなことを言ってきた。
婚約を破棄する。まさか、そんなことを言われるとは思っていなかった。
その時、私の頭の中には様々な考えが駆け巡った。一番に思いついたのは、それがまずいことだということだ。
「待ってください。婚約破棄なんて、そんな急に……」
「もう君との婚約には耐えられない。僕には、もっと相応しい人間がいるはずだ」
「そんな……」
別に、私自身は彼との婚約にまったく未練はなかった。だが、婚約というものは家の問題だ。そのため、婚約破棄というのは非常にまずい。
だが、私は知っていた。彼は、一度言い出したら聞かない。私が何を言っても、聞いてくれる人ではないのだ。
だから、ここは諦めるしかないのかもしれない。そもそも、何故私がこんな男のために努力しなければならないのだろう。そういう気持ちもあって、半ば私は何も言いたくなくなっていた。
「エルフィリナ様、失礼します!」
「え?」
そこで、私について来ていた使用人が部屋の戸を一気に開いた。明らかに、何か焦っている。その様子から、私はそんなことを思った。
「な、なんだ急に……?」
「ルグファド様、突然申し訳ありません。ですが、エルフィリナ様に早急にお知らせしなければならないことがあるのです」
「何かあったの?」
「お祖母様が、危ない状態であるようです。エルフィリナ様にも、すぐに戻って来て欲しいと」
「なんですって!」
使用人の言葉に、私はとても驚いた。
当時、私のお祖母様は病気だった。そのため、そういう連絡が来ることはおかしいことではない。
だが、いざそういう連絡を受けるととても動揺してしまった。その時の私は、他のことを考える余裕などなく、とにかくお祖母様の元に行かなければならないと思ったのだ。
「ルグファド様、申し訳ありませんが、私は失礼させていただきます」
「え? あ、え、ああ……」
同じく動揺しているルグファド様を置いて、私は使用人とともに部屋を出た。
とにかく、お祖母様の元へ。その一心で、私は急ぐのだった。
ただ、私の身に起こった問題は、非常に数奇なものだったといえる。その事件は、後世に残すべきものだ。そう思ったため、私はこの日記を書くことにしたのである。
といっても、この事件は歴史を揺るがす大事件という訳ではない。端的に言えば、これは一人の貴族の乱心から始まった珍事だ。この日記を見つけた時、過度な期待をしないでもらいたいというのが、私の正直な気持ちである。
この話をするにあたって、まず知っておいてもらいたいのは、私がどういう人物かということだ。性格面という訳ではなく、どういう立ち位置にいたかが、今回の話では重要なのである。
エルフィリナ・アルガンテは、スレンド王国のアルガンテ侯爵家の長女である。兄がいるため、私は嫁に出されることになった。その相手こそが、今回の事件を引き起こした張本人なのだ。
ルグファド・レギグズは、レギグズ侯爵家の長男である。彼という人物は、はっきり言ってどうしようもない男だ。というのも、彼は少々自分本位な所があったのである。世界の中心に、自分がいる。そういう風に考える人物だったのだ。
だが、別にその考え自体は否定されるようなものではない。個人の考え方なのだから、そう思うことが悪いことだとは私も思っていない。
しかし、彼の問題は、それを他人にも強要することだった。わがままで自分勝手に振る舞う。それが、彼という人間なのだ。
そういう婚約者であったため、私はその婚約に苦痛を感じていた。といっても、それを億面に出すことはない。これも、家のため。そう考えて、私は耐えていたのである。
ある時、私はルグファドに呼び出された。なんでも、話があるらしいのだ。
「エルフィリナ、君との婚約を破棄したいのだ」
「え?」
開口一番、彼はそのようなことを言ってきた。
婚約を破棄する。まさか、そんなことを言われるとは思っていなかった。
その時、私の頭の中には様々な考えが駆け巡った。一番に思いついたのは、それがまずいことだということだ。
「待ってください。婚約破棄なんて、そんな急に……」
「もう君との婚約には耐えられない。僕には、もっと相応しい人間がいるはずだ」
「そんな……」
別に、私自身は彼との婚約にまったく未練はなかった。だが、婚約というものは家の問題だ。そのため、婚約破棄というのは非常にまずい。
だが、私は知っていた。彼は、一度言い出したら聞かない。私が何を言っても、聞いてくれる人ではないのだ。
だから、ここは諦めるしかないのかもしれない。そもそも、何故私がこんな男のために努力しなければならないのだろう。そういう気持ちもあって、半ば私は何も言いたくなくなっていた。
「エルフィリナ様、失礼します!」
「え?」
そこで、私について来ていた使用人が部屋の戸を一気に開いた。明らかに、何か焦っている。その様子から、私はそんなことを思った。
「な、なんだ急に……?」
「ルグファド様、突然申し訳ありません。ですが、エルフィリナ様に早急にお知らせしなければならないことがあるのです」
「何かあったの?」
「お祖母様が、危ない状態であるようです。エルフィリナ様にも、すぐに戻って来て欲しいと」
「なんですって!」
使用人の言葉に、私はとても驚いた。
当時、私のお祖母様は病気だった。そのため、そういう連絡が来ることはおかしいことではない。
だが、いざそういう連絡を受けるととても動揺してしまった。その時の私は、他のことを考える余裕などなく、とにかくお祖母様の元に行かなければならないと思ったのだ。
「ルグファド様、申し訳ありませんが、私は失礼させていただきます」
「え? あ、え、ああ……」
同じく動揺しているルグファド様を置いて、私は使用人とともに部屋を出た。
とにかく、お祖母様の元へ。その一心で、私は急ぐのだった。
あなたにおすすめの小説
王子に婚約破棄されて国を追放「魔法が使えない女は必要ない!」彼女の隠された能力と本来の姿がわかり誰もが泣き叫ぶ。
佐藤 美奈
恋愛
クロエ・エルフェシウス公爵令嬢とガブリエル・フォートグランデ王太子殿下は婚約が内定する。まだ公の場で発表してないだけで、王家と公爵家の間で約束を取り交わしていた。
だが帝立魔法学園の創立記念パーティーで婚約破棄を宣言されてしまった。ガブリエルは魔法の才能がある幼馴染のアンジェリカ男爵令嬢を溺愛して結婚を決めたのです。
その理由は、ディオール帝国は魔法至上主義で魔法帝国と称される。クロエは魔法が一番大切な国で一人だけ魔法が全然使えない女性だった。
クロエは魔法が使えないことに、特に気にしていませんでしたが、日常的に家族から無能と言われて、赤の他人までに冷たい目で見られてしまう。
ところがクロエは魔法帝国に、なくてはならない女性でした。絶対に必要な隠された能力を持っていた。彼女の真の姿が明らかになると、誰もが彼女に泣いて謝罪を繰り返し助けてと悲鳴を上げ続けた。
次に貴方は、こう言うのでしょう?~婚約破棄を告げられた令嬢は、全て想定済みだった~
キョウキョウ
恋愛
「おまえとの婚約は破棄だ。俺は、彼女と一緒に生きていく」
アンセルム王子から婚約破棄を告げられたが、公爵令嬢のミレイユは微笑んだ。
睨むような視線を向けてくる婚約相手、彼の腕の中で震える子爵令嬢のディアヌ。怒りと軽蔑の視線を向けてくる王子の取り巻き達。
婚約者の座を奪われ、冤罪をかけられようとしているミレイユ。だけど彼女は、全く慌てていなかった。
なぜなら、かつて愛していたアンセルム王子の考えを正しく理解して、こうなることを予測していたから。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。
五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」
オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。
シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。
ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。
彼女には前世の記憶があった。
(どうなってるのよ?!)
ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。
(貧乏女王に転生するなんて、、、。)
婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。
(ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。)
幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。
最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。
(もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)
双子の片割れと母に酷いことを言われて傷つきましたが、理解してくれる人と婚約できたはずが、利用価値があったから優しくしてくれたようです
珠宮さくら
恋愛
ベルティーユ・バランドは、よく転ぶことで双子の片割れや母にドジな子供だと思われていた。
でも、それが病気のせいだとわかってから、両親が離婚して片割れとの縁も切れたことで、理解してくれる人と婚約して幸せになるはずだったのだが、そうはならなかった。
理解していると思っていたのにそうではなかったのだ。双子の片割れや母より、わかってくれていると思っていたのも、勘違いしていただけのようだ。
妹のせいで婚約破棄になりました。が、今や妹は金をせびり、元婚約者が復縁を迫ります。
百谷シカ
恋愛
妹イアサントは王子と婚約している身でありながら騎士と駆け落ちした。
おかげでドルイユ伯爵家は王侯貴族から無視され、孤立無援。
「ふしだらで浅はかな血筋の女など、息子に相応しくない!」
姉の私も煽りをうけ、ルベーグ伯爵家から婚約破棄を言い渡された。
愛するジェルマンは駆け落ちしようと言ってくれた。
でも、妹の不祥事があった後で、私まで駆け落ちなんてできない。
「ずっと愛しているよ、バルバラ。君と結ばれないなら僕は……!」
祖父母と両親を相次いで亡くし、遺された私は爵位を継いだ。
若い女伯爵の統治する没落寸前のドルイユを救ってくれたのは、
私が冤罪から助けた貿易商の青年カジミール・デュモン。
「あなたは命の恩人です。俺は一生、あなたの犬ですよ」
時は経ち、大商人となったデュモンと私は美しい友情を築いていた。
海の交易権を握ったドルイユ伯爵家は、再び社交界に返り咲いた。
そして、婚期を逃したはずの私に、求婚が舞い込んだ。
「強く美しく気高いレディ・ドルイユ。私の妻になってほしい」
ラファラン伯爵オーブリー・ルノー。
彼の求婚以来、デュモンの様子が少しおかしい。
そんな折、手紙が届いた。
今ではルベーグ伯爵となった元婚約者、ジェルマン・ジリベールから。
「会いたい、ですって……?」
=======================================
(他「エブリスタ」様に投稿)
婚約者様、勝手に婚約破棄させていただきますが、妹とお幸せにどうぞ?
青杉春香
恋愛
フラメル家の長男であるライダと婚約をしていたアマンダは、今までの数々ののライダからの仕打ちに嫌気がさし、ついに婚約破棄を持ちかける。
各話、500文字ほどの更新です。
更新頻度が遅くてすみませんorz
妹よりも劣っていると指摘され、ついでに婚約破棄までされた私は修行の旅に出ます
キョウキョウ
恋愛
回復魔法を得意としている、姉妹の貴族令嬢が居た。
姉のマリアンヌと、妹のルイーゼ。
マクシミリアン王子は、姉のマリアンヌと婚約関係を結んでおり、妹のルイーゼとも面識があった。
ある日、妹のルイーゼが回復魔法で怪我人を治療している場面に遭遇したマクシミリアン王子。それを見て、姉のマリアンヌよりも能力が高いと思った彼は、今の婚約関係を破棄しようと思い立った。
優秀な妹の方が、婚約者に相応しいと考えたから。自分のパートナーは優秀な人物であるべきだと、そう思っていた。
マクシミリアン王子は、大きな勘違いをしていた。見た目が派手な魔法を扱っていたから、ルイーゼの事を優秀な魔法使いだと思い込んでいたのだ。それに比べて、マリアンヌの魔法は地味だった。
しかし実際は、マリアンヌの回復魔法のほうが効果が高い。それは、見た目では分からない実力。回復魔法についての知識がなければ、分からないこと。ルイーゼよりもマリアンヌに任せたほうが確実で、完璧に治る。
だが、それを知らないマクシミリアン王子は、マリアンヌではなくルイーゼを選んだ。
婚約を破棄されたマリアンヌは、もっと魔法の腕を磨くため修行の旅に出ることにした。国を離れて、まだ見ぬ世界へ飛び込んでいく。
マリアンヌが居なくなってから、マクシミリアン王子は後悔することになる。その事実に気付くのは、マリアンヌが居なくなってしばらく経ってから。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
自称聖女の従姉に誑かされた婚約者に婚約破棄追放されました、国が亡ぶ、知った事ではありません。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『偽者を信じて本物を婚約破棄追放するような国は滅びればいいのです。』
ブートル伯爵家の令嬢セシリアは不意に婚約者のルドルフ第三王子に張り飛ばされた。華奢なセシリアが筋肉バカのルドルフの殴られたら死の可能性すらあった。全ては聖女を自称する虚栄心の強い従姉コリンヌの仕業だった。公爵令嬢の自分がまだ婚約が決まらないのに、伯爵令嬢でしかない従妹のセシリアが第三王子と婚約しているのに元々腹を立てていたのだ。そこに叔父のブートル伯爵家ウィリアムに男の子が生まれたのだ。このままでは姉妹しかいないウィルブラハム公爵家は叔父の息子が継ぐことになる。それを恐れたコリンヌは筋肉バカのルドルフを騙してセシリアだけでなくブートル伯爵家を追放させようとしたのだった。